ままならない日のゆずピール
他部署のF氏からゆずをもらった。氏はたまに廊下ですれ違うと、ポケットサイズのチョコレートや近所でもらった野菜をお裾分けしてくれる。
ゆずは冬至のゆず湯に使うような大きなものではなく、ピンポン玉ぐらいの小ぶりで可愛らしいサイズだった。実はゆずの近縁種の「花ゆず」だったと後に知った。
万能調味料の塩ゆずもいいけれど、折角なら作ったことがないゆずピールに決めた。
まずはゆずの皮を剥き、白い部分を取り除いてから細切りにする。皮はアクを抜くためにたっぷりの水で茹でこぼす。これを何度か繰り返す。
次に水と砂糖を入れて火にかけ、焦がさないように混ぜて水分がなくなるまで煮詰める。そしてクッキングシートの上に広げて並べ、オーブンで乾燥させる。
余った果肉は蜂蜜とお湯で割って飲んだ。
人生はままならない。
目下の人間関係の悩みは、こちらが諦めなければ解決しそうにもない。
他人を変えることは難しい。まして相手に自覚がないのなら。今までの環境、物事に対する考え方……性格は諸々の要素が積み重なって形成されたもので、働き方も人それぞれだとはわかっているのに、自身の神経質さと老婆心に呆れてしまう。
先輩からは「顔が疲れている」と心配され、上司からは「規律の曖昧な会社だから、海のように広い心で見守ってほしい」と諭された。それでも目くじらを立てすぎて嫌な鯨になりそうだ。
そんなことを考えながら、程よく乾燥したゆずの皮に仕上げ用の砂糖をまぶす。これで完成だ。
皿に盛る前に不揃いの欠片を食べた。煮詰めた砂糖が少なかったのか本来そういうものなのか、初めて作ったゆずピールは微かに苦かった。
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