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そうだ、紅葉を見よう

 先週末、母親と紅葉を見るために京都に行った。
 紅葉といえば、せいぜい近所の公園のイチョウや、通勤ルートにある桜の木が赤黄に色付いているのを眺める程度だ。実家にいた頃は、自転車で六義園の夜間ライトアップを見に行った記憶がある。あの時も母親と一緒だった。
 折角ならあまり行ったことがない場所にしよう。ということで、修学旅行以来の嵐山へ。嵐山には鶴屋寿の嵐山さ久ら餅を買いに行きたかったので、ちょうどいいタイミングだった。
 母親は金曜日から京都入りして、醍醐寺と六曜社に行ったそう。私は仕事だったので夜から合流した。

 土曜日。京都駅のロッカーに荷物を置き、嵯峨野線で嵐山へ向かう。
 私たち親子は方向音痴だ。駅前の道案内を読みながらも、スマホの地図アプリを片手に歩き出す。

 観光地という場所柄、レンタル着物屋さんは賑わっていた。パステルカラーのレース着物に、くすみピンクの兵児帯。帯飾りや小物はパールビーズやレース。ふわふわの帯結びが隠れてしまうけれど、羽織やマフラーがなくても寒くないのか気になる(利用したことがないので実際はわからない。襦袢の下にヒートテックでも仕込んでるのだろうか)。
「着物、着なかったんだね」と母親が言った。
「どうするか迷ったんだけどねぇ……」
 動きやすさを考慮して日和ってしまった。それでも着物姿を見てしまうと、あぁ自分もとうずうずしてしまう。

竹、竹、思わず声が出た。

 竹林の小径はテレビでしか見たことがない。もっと観光客で混雑しているのかと身構えていたら、そこまででもなくてホッとした(竹林よりも渡月橋に向かう道沿いの方が混んでいた。あれは嵐電の近くだったし歩道の狭さもあった)。
 両脇に生える背の高い竹林はトンネルのようだ。時折、鳥の鳴き声が聞こえる。初夏はもっと青々とした姿が見れそうだ。

一本奥は人力車用の道らしい。
老松は香華餅が好き。

 道中で老松に寄り、天龍寺へ。写真を撮りながら庭園をゆっくり見て回る。

天気にも恵まれていたので鮮やかさも際立つ。
紅葉と竹林、木々の合間から差し込むやわらかい光。
まだ蕾の付いていない枝垂桜もあった。

 さっと昼食を済ませてから、バスに乗って移動。後乗りのバスは慣れない。
 次の目的地はオルセットビアンコ。ここはクロワッサンとパイの専門店で、パン好きな母親を連れて行きたかった。事前に取り置きをお願いしていたクロワッサン、ショコラオランジュ、季節限定のアップルカラメルカスタードパイを買う。

「次のバスが10分後だね。徒歩だと20分ぐらいかかるけど、どうする?」
「待つ時間も勿体ないし、歩こうか」
 母親の選択は結果的に良かった。お互いに歩くのは苦ではないタイプだったし、アンティーク着物店の戻橋、かもDONUTにも寄った。話しながら歩いているせいか、疲れはあまり感じなかった。

3階で羽織と道行、半幅帯を買った。1500円。
お腹がいっぱいでフレンチクルーラーを半分こ。
堀川商店街。

 二条城の本丸御殿は保存修理工事中だったので、国宝・二の丸御殿へ。
「何百年前に来てたかも」と話す母親のユーモアさが好きだ。

天守閣跡の石段の高さにひぃひぃ言いながら上った。日が傾き始めると暗くなるのはあっという間。
神社仏閣には積極的に行くタイプではないけれど、建造物や風景を目当てに行くのは悪くないと思えた。

 電車に乗って京都駅に戻る。
「新幹線に乗る前にコーヒー以外で温かいもの飲みたいね」と、マールブランシュでひと休憩。実家のこと、仕事のこと、他愛もないこと。会話を頭の中で組み立てなくてもするりと声が出せる。母親との話は尽きなかった。

この日は朝昼でコーヒーを2杯飲んでいた。紅茶は急須にたっぷり入っている。
オルセットビアンコのクロワッサンは母親に。
嵐山さ久ら餅。冬に桜餅というのも不思議な気分だ。桜葉の香りが箱の外から漂う。舌にぷちぷちと残る餅米。

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