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写真の専門学生だった当時、よそのゼミの夏季課題に「毎日一枚だけ撮る」というものがあった。たしか36枚撮りのカラーフィルムだった。 八月に脳神経の疾患で休職することが決まってから、あの課題をやってみようと思い立った。 記録を残すための名目ではあったけれど、変わり映えのない日々にせめてもの刺激がほしかった。 フィルムカメラは持っている。しかし肝心のフィルムがない。近所のカメラ屋では入荷待ちだったから、代わりに写ルンですを買って帰った。 写ルンですの思い出といえば、中学の
MRIも三回目ですっかり慣れた。狭いトンネル状の空間で目を閉じて、耳栓越しに色々な音を聞きながら、工事現場にあるようなドリルや、シンバルを持った猿のおもちゃが登場する妄想を膨らませる。 トイレのドアを切羽詰まって叩く人を登場させてから意識が曖昧になる。技師さんに足元を叩かれて目が覚めた。「もう少しで終わるから頑張って」寝ているうちに頭が動いてたらしい。 エアコンの効いた検査室で、「布団いる?」「暖かいと寝ちゃうから」「そういう子だったな」というやり取りを交わしてたのに。