食べる話

大変お久しぶりです、はるです。パンが好きです!とは、もううるさいくらいにいろんなところで主張していますが、わたしはそもそも食べることそのものが大好きです。恥ずかしながら小さい頃から食い意地が張っていまして、周りがびっくりするくらいもりもり食べる子どもでした。見事にそのまんま成長し、今も美味しいものには目がない立派な食いしんぼうです。

しかしこれでも女子大学生、一応体型が気になる年頃ですから、本当のことを言うと少食の人がとてもとても羨ましいです。ご飯をご一緒させてもらうとき、その食事量の差にびっくりすることもあります。えっ本当にそれで足りるの?!みたいな。みんなあんまり食べないし体つきが細い……。うぅ。

自分で自分の食欲にびっくりすることもしばしばです。そんなとき、わたしの胃はもしかしてブラックホールに繋がっているんじゃないかとか、何かしらで誰か他の人と胃袋が連結されていて、その誰かの食欲までわたしが引き受けちゃってるんじゃないかとか、突拍子もないことをあれこれ考えてみたりして、首を傾げます。でもやっぱりただ周りの人よりも食欲旺盛だってことなんだと思います。
……思いますというか、そうなんです。はい。

わたしは太宰治がすごく好きなんですが、かの有名な「人間失格」の主人公、葉一は「空腹感とは、どんなものだか、ちっともわかっていやしなかったのです。自分だって、それは勿論、大いにものを食べますが、しかし、空腹感から、ものを食べた記憶は、ほとんどありません。(中略) 子供の頃の自分にとって、最も苦痛な時刻は、実に、自分の家の食事の時間でした。」と語っています。これを読んだときは自分とあまりに正反対なので羨ましいやら不思議やらでとにかく衝撃的で、つい3回くらい読み直してしまいました。

そんな食欲大魔神・カービィの二つ名を賜るわたしですが、食事が思うようにできなくなった時期があります。友人関係の悪化がきっかけで自分でもびっくりするくらい急に体重が落ちて、ついついそれを維持しようと思ってしまったんです。その結果無理な食事制限をして摂食障害になってしまいました。友人とのご飯の予定がある日を除いて、ヨーグルトひとつで生活していた時期もあります。ひたすら食べることが怖かったんです、水を飲むことさえもです。何かを食べたあと、食べたものの分体重が増えることは至極当たり前です、でもその当たり前さえあの頃はとんでもなく恐ろしかったんです。だけれど当然こんな食生活が長く続けられるはずもなく、拒食に陥った人の大半がそうなるように、久しぶりの外食をきっかけに今度は過食症になってしまいました。自分は絶対そうはならない、なるはずがないと思っていたのに、驚くほど見事な転換でした。しかも厄介なことに、これが一度なってしまうとなかなか抜け出せないんです。一日中何かを口にしたくて、だけど何を食べても永遠に満足出来ない、けれども体重が増えるのは怖い……。脳みその9.9割が「食べもの」で支配されるんです。しかも常時です、起きている間中、異常な空腹感に苛まれるんです。そうして結局食べてしまって、食べたら食べたで罪悪感に襲われ、消えたくなる毎日でした。あぁ、ついつい感情が高ぶって長くなりすぎてしまうので、このときのお話はまた別の機会にゆっくりゆっくり書いてみたいと考えているのですが、最近になってようやく、少しずつですが、いろんな人のおかげで良くなってきたんじゃないかと思っています。まだだめな日もあるのですが、それでもだいぶそういった症状に苛まれる時間が減りました。  

ご飯がおいしく食べられる、というのは嬉しいことです。最初にお話したように、わたしはもともと食べることが大大大好きな人間ですから、摂食障害を経験している今はなおのことそう思うんです。それから、わたしと一緒においしいを共有してくれる人がいてくれることも、とても嬉しくて、感謝しかありません。ご飯をおいしく食べられるわたしがようやく帰ってきたのは、そういう人たちのおかげだからです。

今日のお昼はたらこのスパゲティを食べました。そのあとはコーヒーを飲みに少し遠くのカフェまで足を伸ばして、夜ごはんにはサラダやバゲットやお肉をもりもり食べて、お酒もたくさん飲みました。その全部がものすごくおいしかったです。さぁ果たして何キロ増えたんでしょうか……恐ろしい。だけど本当に楽しかったので幸せ成分がきっと帳消しにしてくれています、きっとそうです、だから大丈夫なんです。だって本当にすてきな時間だったので。

そう思えるようになったことこそが、わたしの進歩の、何よりもの証拠なんです。

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