じゅよう

 需要を作ると言って、みかんは店を借りた。

 そこで需要と書いた紙を売った。

 売れない。

 店の掃除をした。

 客が来る。

 需要しかない。

 みかんは客の持ち物を買った。

 エルメス(?)が一万円で買えたらしい。

 それを需要と一緒に売った。

 噂にはなった。

 たまに物を売りに客が来る。

 10人くらい。

 ふとすると来なくなる。でもまた次の常連さんが補充される。

 10日目にして初めて需要が売れた。

 1000円。

 次の日、需要が帰ってきた。

 裏に、週2で家の掃除人募集と書かれてある。

 月5千円。

 5000円とともに、平台に需要が並ぶ。

 売れた。

 現ナマの力は計り知れない。

 需要が売れ始めた。

 平台ではためくお札に釣られ、やってくる。

 みかんがうちにやってきた。

 需要を2000円にしたいらしい。

 もっとエルメス(?)が欲しいと言っている。

 ブランドに目覚めたようだ。

 やめろと私は言った。

 紙の色を変えて5000円で売れ。

 さらにもう1枚やはり色が違うやつを用意し10000円で売れ。

 わからない、とみかんは言った。

 いいからやれと私は言った。

 そしてエルメスは店で買え。

 店の前を通る。平台に需要と、お札が並ぶ。

 つられて入ってしまう。

 客たちがシステムを作ってくれたようだ。

 基本は1000円。緊急性が高いと同じ需要でも10000円。

 うんうん。

 店の前に立派な賽銭箱が置かれてある。

 足ぶつけそう。

 需要のほかに、店には、みかんが客たちから巻き上げた服や小物が並ぶ。

 でもむき出しの一万円に目が釘付け。

 紙の字を読む。

 『一緒に温泉に行ってください』

 字は……女の字だ。たぶんな。

 ふむ。

「私が行こう」

「ああそれ私が書いた」

「私でいいのか」

 店を閉め始めるみかん。

「いくぞ」

 こうして私はみかんから一万円をもらい、彼女と温泉に行った。

 なにがしたいんだ。

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