扇風機
扇風機を買った。自分だけの扇風機である。
今までは寒いところにいたので、もちろんこういうものがあることは知ってはいたけど、はっきり言ってなじみのないものだった。
でも、新たな引っ越し先が私の生活を一変させた!
こんなに暑いだなんて!!
それで私は泣く泣く扇風機を買ったのだ。様々な葛藤と、流れに逆らって進んでいくような精神的抵抗に合いながらも。
それまで私にとって暑さというものは、お金を払ってでも歓迎すべきものだった。
もちろんそれに対してなら財布のひもは、ふやけたうどんのように最大限ゆるくなっている。
反面どんなに暑くっても、私はお金を払ってまで涼しいとか寒いとかを得るなんて本当にばかげていると、芯から思っていた。
あの映画のサメのように無慈悲なまでに私の体温を奪い取る寒さ。
三分もそこにいれば、命をも削られる恐怖を知っているこの私が、お金を払ってその寒さを生み出す扇風機を手に入れようとするだなんて!!
人生がこんなにも矛盾に満ちたものだったとは。
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