マヒャド

 マヒャドが使えるようになった。

 小学校の先生をしている。

 生徒には言えない。

 基礎が大事だと常日頃から言っている私が、ヒャドもヒャダルコもヒャダインも飛び越えて、いきなりマヒャドを使えるだなんて、教育上よくない。

 微分積分を教えてくれなんて言い出されかねない。

 かといって、私が他の氷系の呪文をおさめればいいなんて話でもない。

 だって私はいきなりマヒャドが使えるのだ。

 これは私が私の教えを裏切っていることにならないか。
 教師生命の危機だ。

「でもちゃんと基礎ができていたから、初めから使えたんじゃないの?」

 ママが言った。
 
 え?

「それに、いきなりマヒャドを覚えるモンスターだっていたはずよ」

 言ってドンペリを頼む。
 でも私はモンスターではない。

「まあとにかく、才能があるってことでしょ」

 なんの? 魔法使い?

 私は教師だ。冒険にもいかない。仮に行くとなったとしても、マヒャドが使えるから冒険がサクサク進むなんてのは幻想だ。

 もっと深いサバイバル知識が必要になってくる。

「マヒャド!!」

 私は店を、ママやドンペリもろとも凍らせた。

 だが店をでたとき、気を失って倒れてしまった。

 МPが切れたのだ。

 周りには酔って寝ているだけにおもわれるだろう。

 頭の中にレベルが上がったファンファーレが聞こえた。
 終わった。
 でもまた鳴った。
 終わった。
 だがまたすぐ、レベルが上がる。
 また。
 まただ。

 俺は何を倒したんだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?