独りと二人の大盛りイチゴパフェ
「不安定な心の中に何を注入すると安定するか知っていますか?」
大盛りイチゴパフェを食べながら、彩香は僕の目を見つめた。
真剣だ。
そしてとても美味しそうに食べている。
僕は真剣に自分のメロンパフェを見つめて考えた。
「砂糖・・・かな」
彩香は僕の顔をじっと見て、
「正解!りょうくんは分かっているね!」
そう言って、イチゴにフォークを刺して口に運んだ。
幸せそうだ。
確かにスイーツは人を幸せにする。
砂糖がストレスを解消するのに大きな力を発揮することはwebを検索すればいくらでも出てくる。
だが人はそれと引き換えに体重の増加と言うものと向き合わないといけない。
いやいや、スイーツを食べているときは罪悪感を感じてはいけない。
ただひたすらに視覚と味覚と胃袋を満たすのだ。
そう僕は自分に言い聞かせて、目の前のメロンパフェを口に運んだ。
「甘いモノを食べるとどうしてこんなに幸せになるんだろうね」
彩香は確かに幸せそうだ。
そして僕から言うのもあれだが彩香はちょっと・・・ちょっとだけ太っている。
太っているという言い方をしたら彼女に失礼だろう。
ふくよか・・・ぽっちゃり系。
そういくらでも柔らかい言い方はある。
彼女はぽっちゃりしているが、背は小さく、性格も優しい。
料理も上手だ。
そして何より僕はぽっちゃりしている子が大好きなのだ。
だから別に彼女の外見について、とやかく言うつもりもない。
彼女と一緒にパフェを食べている現実を考えるとこれは幸せと言っていいのだ。
その昔、僕は絶対彼女なんて出来ないし、一生独りで生きていくんだろうなぁと思っていたから、今のこの現状に行き着くまでの奇跡が驚きの連続であった。
独りが楽だと思って生きていた。
誰かと交わることで傷ついてきたことが多かったので、独りで思索にふけり、独りで過ごすことに喜びを感じていた。
だからこうやって誰かと過ごすことが当たり前に感じることに、幸せに感じることに僕は未だに戸惑っているのかもしれない。
「また難しいことを考えていますね」
彩香は僕のほっぺをむにょんとつまんだ。
彩香曰く、僕は考え込むとどこか遠くを眺めるらしい。
「甘いモノを食べる時は、純粋に楽しめないとだめです」
「ただそういう難しいことを考えるりょうくんも好きですがね」
恥ずかしげも無く赤面するようなセリフを吐きながら、彩香はイチゴをほおばった。
あぁそうか。
好きな人の幸せな顔を見るのは確かに幸せだ。
僕はそう想いながら、メロンを頬張った。
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