探究テーマごとにつくった7コースで、茨城県内の“魅力”に会いに行く旅|鎌倉学園1年生探究学習レポート
2022年12月15日・16日の2日間、鎌倉学園高等学校の1年生のうち、17名が茨城県にやってきました。これが2度目の訪問です。
学校で設定された総合探究のテーマの中から、関心のあるものを1年かけて探究学習に取り組んでいるみなさん。17名が選んだ探究学習のゴールは「茨城県の魅力を見つけ、それをPRをすること」です。
7月に1泊2日で訪れて感じたことをもとに今回は、各自が探究テーマと訪問先を決定。個別にアポイントをとって、取材する旅となっています。
森と未来の学校では、7つのグループの行程づくりと、旅行当日のお手伝いをさせていただきました。この記事では、その旅の準備と当日の様子を一部を切り取ってお伝えいたします。
茨城県の魅力ってどこだろう?テーマを深めるため、7つの見学コースづくりをサポート
7月の旅のあと、学校に戻った生徒さんたち。まずは、今後の探究を深めていくテーマを各自決めました。
食べたものがおいしくて、農業が盛んな地域だから「食」。
訪問先の人々が各自の仕事に誇りをもっている姿が印象的だったから「茨城の発信をしている人」に会いに行く。
1度目の旅では足りないと感じたから、さらに「茨城の魅力いろいろなもの」を調べてみる。
関心事が近い生徒さんたちは一緒に見学することになり、全部で7つのグループができました。
テーマが決まってからは、何を知るために、どこを訪問するのか、旅行の行程を決めなければなりません。森と未来の学校では、思い思いのテーマを設定した生徒さんたちとオンラインで何度も話をしながら、行程づくりのお手伝いをさせていただきました。
例えば、農業がさかんな茨城県の「食」について発信したいというグループの生徒さん。
「食」といっても幅広く、考えることはたくさんあります。
知りたいのは生産について、加工について、それとも流通について、どの部分を取り上げるのか。また、どんな食材を扱っている場所・人を訪ねるのがいいのか。
大きなテーマをもとに、何度も話をしながら、一緒に少しずつ考えを深めていきます。そして、生徒さんたちが自ら行きたい場所にアポイントをとったり、学びたいことに合わせた受け入れ先を私たちでも当たってみたりしながら、宿泊先である水戸周辺で7つのコースを完成させ、旅行当日を迎えました。
今回は、「茨城の食」「茨城の里山・自然」をテーマに県内を巡ることになった2人の生徒さんの旅を取り上げてご紹介していきます。
彼らのグループは2日間で
・那珂湊漁港前にある那珂湊おさかな市場
・干し芋づくりをしている農家オカベファーム
・7月の旅でも全員で訪れたいばらきフラワーパーク
の3か所を巡り、各地で取材を行いました。
初めて見た茨城県の特産品!オカベファームで干し芋づくり体験も
調べ学習を進める中で、茨城県内の農産物についても調べた彼らは、サツマイモを蒸して乾燥させた食品・干し芋の生産量が全国1位であることを発見。ぜひ干し芋づくりをしているところを見学したいと考えました。
始めは彼ら自身で訪問先を探していましたが、何せこの時期は農家さんの干し芋づくりの最盛期。なかなか訪問できる条件の合う見学先を見つけられず、それならお店で干し芋を見て、食べることができれれば……と考えていたようです。
しかし、せっかく神奈川から来てくれるのに、見学ができないなんてもったいない!
ぜひ彼らを、関心をもった干し芋づくりの現場を見られる場所に繋ぎたい!
そう思ったアーストラベルのスタッフが受け入れてくださる農家さんを探し、県内でも最も干し芋の生産量が多いひたちなか市のオカベファームさんが受け入れてくださることになったのです。お忙しい中、見学の趣旨を理解して干し芋づくりに関心をもった高校生たちの想いに応えてくださったこと、ありがたい限りです。
当日、オカベファームに着くとすぐに2人は、干し芋の加工を体験させていただきました。
畑で育て、収穫し、貯蔵して甘味を引きだした状態になったお芋は、加工の際に蒸して皮をむきます。2名の生徒は、皮をむいたお芋をスライスする作業からの体験です。
ピアノ線をたくさん張った専用のスライサーに、サツマイモを上から押し当てて、1個ずつスライスしていきます。その後、乾燥させるために1枚ずつ網の上に並べていきます。
やわらかく蒸しているため形が崩れやすいので細心の注意が必要です。慣れない作業ですが、スタッフの方が丁寧に教えてくださり、ほめ言葉などもかけつつ温かく見守ってくださいました。
干し芋加工の体験のあとは、栽培を行っている畑を見せていただきました。そこで、岡部美保さんから干し芋づくりのこだわりや、商品にかける想いを伺いました。
生徒さんたちは機械を使って作るのだと考えていたのですが、加工作業をすべて人の手で一つずつ手間ひまかけて行う大変さを体験を通して知りました。それらの苦労も、すべてはお客様によりおいしい商品を届けたい想いでしていること。
また、オカベファームではインドネシア出身の方たちが大勢働いていて、農業をグローバルに行っていることにも驚きがあったようでした。
体験後に「これまで身近なお店でも販売していたのかもしれないけれど、干し芋には気付けなかった。今回の体験をしたからこそ目に止まるようになるし、友達にも伝えられる。将来は教員になりたいと思っているので、未来の生徒にも伝えたい。視野を広げられる機会になった」と感じたことをはきはきと話してくれた姿は、頼もしく見えました。
いばらきフラワーパークへ再訪問。東京で働いた経験をもつフローリストだから分かる茨城の魅力を学ぶ
2日目、2人の生徒さんはいばらきフラワーパークを訪れました。7月に探究学習テーマを茨城にしている17名全員で訪れているので、今回は2度目の訪問となります。前回訪れた際に、茨城の魅力は里山を含む自然があることではないかと感じたのが訪問先に選んだ理由だったとのこと。フラワーパークでは里山での体験もでき、東京での勤務経験を経て茨城に移り住んだスタッフさんもいるため、彼女の視点で茨城の良さを知ることもできます。直接話が聞きたいという彼らの想いから実現した5か月ぶりの再訪問でした。
季節の植物を楽しむ場所なので、2度、3度と訪れても違った楽しみ方ができるのがフラワーパークの良さ。こちらの記事にもあるように前回は火起こし体験がメインだったので、まったく別の活動となります。
スタッフさんへの取材までには十分な時間があったので、この日2人は広いパーク内をゆっくりと歩いて回りました。
丘を登り、高さ20mの展望台・トンビの塔の上からのどかな里山の風景を眺めたり、
サザンカの花を見たり。
秋バラのシーズンは過ぎてしまったとのことですが、それでも数えきれない種類のバラが花をつけており、各コーナーでさまざまな色の花を見て楽しむことができました。
パーク内散策の途中で出会った、スポーツスライドコーナーご担当の飯塚さんには、今の期間は17時以降イルミネーションが楽しめることを教えていただきました。この日は残念ながら夜までいられないことをお伝えすると、テレビで放送された際の動画を見せて紹介してくださいました。チャンスがあったら明かりに灯される花々をぜひ見てみたくなりました。
この日、お話を伺う約束をしていたのはパークのフローリスト・間中さん。東京都内の青山フラワーマーケットの店舗で、花を届ける仕事を長くしていらっしゃいましたが、2021年のフラワーパークリニューアルにあたり、茨城へ転勤・移住した方です。
2名の生徒さんは、お花のこと、パーク内のこと、東京と茨城の違いなど、事前に調べる際に出た疑問点や、パーク内を散策して考えた問いをたくさん投げかけます。その1つ1つに間中さんは丁寧に向き合い、あたたかく答えてくださいました。
コンパクトな空間にたくさんのものが詰め込まれている都市部と比べ、自然がたくさんある広い空間でゆったりとした気持ちになれるのが茨城の良さだと間中さんは話します。また、花屋に勤務していた頃扱っていたのは、市場を通して入荷する規格に合わせた画一的な花だったのに対し、フラワーパークでは施設内を飾るのにも、お客様にワークショップで使っていただくのにも自由に伸びた自然の花を摘んで使うことができる面白さがあるといいます。
パーク内では、ブーケづくりの体験を担当することもあるそうですが、それだけなら別の場所でも体験は可能です。施設内のお庭に咲いている植物の中から使いたい花を探し摘む楽しみは、他ではなかなかできるものではないため、お客様にも選ぶ楽しさを体験してもらえるようワークショップの内容を工夫しているそうです。
取材後に、間中さんにお話を伺った感想を聞いてみると「花が本当に好きな人だからこその想いを知ることができました。茨城だから知れる花の良さを人に広めようとする仕事の姿勢を知れてよかったです」と教えてくれました。
見学にも取材にも、丁寧かつ真剣に向き合う様子がすばらしかった生徒さんたちですが、学校で授業中などは控えめな様子でいることが多いそう。担当してくださる方に自ら次々に疑問点をお聞きし、感想も伝えるなど、引率の先生も普段なかなか見ない姿に驚きがあったようです。
自分たちの関心事に合わせて作った行程で学びを深めるものだから、旅先で行う探究学習には普段とは違った一面を引き出す力もあるのかもしれないなとお2人の様子を見ていて感じました。
その他、教育・スポーツなどについても茨城県内で探究学習を深めた生徒さんたち
ほかの6つのグループも、茨城県内各地を巡って、さまざまな体験をし、人の想いに触れてきました。
教育をテーマに設定していた生徒さんは、水戸市の弘道館を訪れました。日本最大規模の藩校であり、江戸時代の総合大学のような位置付けだった場所で、水戸藩が育てようとしていたのはどんな人材だったのか、特別ガイドを務めてくださった佐川雄太さんに教えていただきながらの見学となりました。
目指していたのは外国に勝つことではなく、対等な立場で国を背負える人を育てることだったとのこと。同行したスタッフ橋本は、自分たちの道を切り開ける力を子どもたちにつけようとする部分が、茨城でのツアーを通じて児童・生徒さんたちのきっかけづくりをしたい想いと重なるものを感じグッときたそう。
食をテーマに、水戸市のお土産としても人気のだるま納豆の製造・販売を行うだるま食品株式会社を訪れたグループは、水戸納豆への想いや、仕事への誇り・熱量に心を動かされた様子でした。茨城の有名な食べ物について知りたい!ということで訪問することになったのですが、おいしい納豆を作るのはもちろんのこと、わら納豆の文化を残していくことや、今後の水戸の発展についても考えていらっしゃることをお話いただきました。やはり、直接現地を訪れ、お会いして受ける刺激は他には替え難いものがあります。
学校に戻った生徒さんたちは今後、茨城県の魅力を伝えるPR動画を作成予定とのこと。今回の旅での気付きや学び、人との出会いが、どんな風にまとめていただけるのか楽しみにしています。
記事:荒川ゆうこ
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