【内容一部公開】接触解析、動的陽解法がよくわかる!――近刊『実践 非線形有限要素法シミュレーション』
2024年7月中旬発行予定の新刊書籍、『実践 非線形有限要素法シミュレーション』のご紹介です。
同書の一部を、発行に先駆けて公開します。
***
まえがき
2010年に前書「実践有限要素法シミュレーション」を執筆したあとも、産業界での有限要素法の利用はますます広がっている。その範囲は、前書で取り扱った「線形有限要素法」をはるかに飛び越え、幾何学的非線形、接触・摩擦、弾塑性や超弾性などの材料非線形を含む「非線形有限要素法」、および動的陽解法に代表される動解析が、汎用ツールに実装され、幅広く使われるようになった。それに伴い、実務に有限要素法を使う研究者・技術者(以降、実務者とよぶ)に必要とされる知識も、より高度になっている。
しかしながら、この分野の代表的書籍である「非線形有限要素法の基礎と応用(久田俊明、野口裕久著、丸善出版、1995年)」などの専門書は、非線形有限要素法の研究者・開発者向けに執筆されており、実務者にはハードルが高い。一方で、数々の実務書(ノウハウ本)が出版されているが、大学生・大学院生の基礎的な勉強には不向きである。
本書は、非線形有限要素法を使う実務者に向けて、適切なシミュレーションを実行するために知っておくべき基本原理を、できるだけ平易に解説する。あわせて、実際にシミュレーションを行うとき役立つ実践的知識を、現場の技術者の経験に基づいて紹介する。前半の「基礎編」では非線形有限要素法の原理の基礎を、後半の「実践編」では解析にあたっての実践的知識を学ぶことを想定している。
基礎編では、非線形有限要素法を理解するうえでどうしても必要な数学的・力学的知識をまとめている。1章は連続体力学の基礎となるテンソル解析の知識、2章は非線形有限要素法で必要となる連続体力学の基礎をまとめた。基礎編は実務者にはハードルが高いかもしれないので、基礎編をスキップして実践編だけを読んでも学習できる構成としている。大学生・大学院生は基礎編を可能な限り学習することが望ましい。その際は、知識を身につけるための演習問題を数多くそろえたので活用してほしい。
実践編では、幾何学的非線形解析(3章)、座屈解析(4章)、超弾性・粘弾性解析(5章)、弾塑性解析(6章)、接触・摩擦解析(7章)、動的解析(8章)の原理と応用についてまとめている。各章末には、それぞれの分野で典型的な例題を設けてある。より深い理解のために、自身の使っているコードで挑戦してほしい。また、8章では、衝突解析を中心に、応用がとくに広がっている動的陽解法を取り上げた。インターネット上には動的陽解法について不確かな説明が散見されるが、ぜひ本書で正しい知識を身につけてほしい。3章から5章は、正しい理解のためには基礎編の知識が必要であるが、可能な限り各章を読むだけで理解できるように配慮した。6章から8章は、基礎編の内容はとくに必要なく、線形有限要素法の知識があれば理解可能である。なお、前書で取り扱った線形有限要素法の範囲は既習として解説を省略している。
本書は、東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻の大学院講義「非線形有限要素法の原理と応用」、および日本機械学会の講習会「機械設計のための非線形有限要素法入門(幾何学的非線形、超弾性、粘弾性、弾塑性、接触摩擦、動的解析の基礎をMarc、LS-DYNAの例題で学ぶ)」の内容をベースにまとめられている。
有限要素法シミュレーションのV&V(Verication&Validation:検証と妥当性確認)を深めるためには、原理的な理解が大きな手助けとなる。本書がその一助になれば幸いである。
***
※前書『実践有限要素法シミュレーション(第2版)』(2022年9月改訂)の記事はこちら
***
現代の有限要素法の基礎理論~実践的知識を1冊でマスター!
近年注目される接触解析、動的陽解法がよくわかる!
実務者視点で、非線形有限要素法をやさしくていねいに解説。FEMソフトウェアで正しい結果を得るための基礎理論と、実際のシミュレーションに活かせるノウハウが身につきます。
《理論と実務がつながる2部構成》
●基礎編では、非線形有限要素法をよく理解するための基礎理論を、必要最低限の数学と連続体力学の内容に絞って、わかりやすく説明します。
●実践編では、非線形性の種類ごとに要点をまとめた解説と豊富なCAE例題により、機械設計などを扱うエンジニア・研究者が知っておきたいFEMシミュレーションの実践的知識を学べます。