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データ解析実務のいま(『データ解析の実務プロセス入門』あんちべ氏寄稿)

先日の記事に引き続き、『データ解析の実務プロセス入門』の著者あんちべ氏により寄稿をいただきました。同書発行から4年、この間のデータ解析者の人材市場の変化や、いま求められる「問題解決」のスキルを身につけるための書籍も紹介されています。

★同書からの抜粋記事:「データ解析初心者のためのQ&A(あんちべ著『データ解析の実務プロセス入門』より)」もあわせてご覧ください。

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データ解析実務のいま:『データ解析の実務プロセス入門』発行から4年を経て

著:あんちべ

拙著が刊行されて早4年が経ちました。この4年の間には、多方面の、かつ大きな変化がもたらされました。ここでは、そうした市場の変化とそれに対応するための類書を紹介し、また現時点での『データ解析の実務プロセス入門』の立ち位置について説明したいと思います。

・市場の変化
拙著が刊行された頃から、データ活用における期待は大変大きなものでした。いまでもそれは変わりませんが、しかし当時と比べて、単純なデータ活用の結果を適用するだけで解決する「わかりやすい問題」はどんどん少なくなってきました。

わかりやすい問題とは、誰の目から見ても明らかな課題とそれに対する解決策があるような問題のことです。たとえば、

「同業他社は販売サイトにレコメンド機能を入れているのにうちだけ入れていない」
「顧客によってニーズがまったく異なるのに、パーソナライズできていない」

などです。これらはやるべきことを粛々と行いさえすれば、価値が生み出せます。しかし、最近ではそれらの手付かずだった新雪はあらかた踏み荒らされ、消え去りつつあります。その流れはより一層進むでしょう。

理由はいくつかありますが、その一つにデータ活用のハードルが下がり続けていることが挙げられます。現在ではGoogleやAmazonなどから、誰でも簡単に扱えるにもかかわらず非常に高度な機械学習系のサービス(AutoML TablesやAmazon SageMakerなど)が提供されています。さらに、Courseraなどのオンライン講座や機械学習系の書籍の充実、とくにディープラーニングに関する情報の増加は目をみはるものがあります。

このようにデータサイエンスに関する「知の高速道路」が整備されてきたことは、データ活用のハードルを下げるという嬉しい面がある一方、市場原理から「統計学や機械学習が扱えるだけの人材」の市場価値は一層低減していくと予想されます。

・今後の展望
わかりやすい問題が消え去りつつあるいま、より重要になるのが「問題解決」のスキルでしょう。問題解決とは、曖昧な状況から現状を正しく把握し、ゴールを定義し、現状とゴールとのギャップを埋めるよう計画立案・実施することです。

問題解決を行うためには、

1.問題の分析:状況を構造化し、正しい問題を発見し、解決の道を探ること
2.計画立案:課題解決のためにどのようなアプローチを取ればよいか計画を立てること
3.計画実施:プロジェクトマネジメント
4.チームビルディング:1~3を実現するためのチームをつくる(採用を含む)

がすべて重要になってきます。

・おすすめ書籍紹介
これらすべてをカバーすると膨大になりますので、ここでは問題解決に絞ってオススメの書籍を紹介したいと思います。

1. 『世界一やさしい問題解決の授業―自分で考え、行動する力が身につく』渡辺健介 著、matsu(マツモト ナオコ)イラスト、2007年、ダイヤモンド社。問題解決の入門本です。具体的な例(ライブでの集客数を増やしたいなど)を挙げた解説が非常にわかりやすく、小・中学生でも気軽に読めます。まずこの本をお読みください。

2. 『仕事の説明書〜あなたは今どんなゲームをしているのか〜』田宮直人・西山悠太朗 著、2019年、土日出版。中級者向けの本です。仕事をゲームになぞらえて、複雑な状況をどう問題解決していくのかについて経験豊富な著者の体験談を交えて解説されています。


3. 『ビジネスフレームワーク図鑑 すぐ使える問題解決・アイデア発想ツール70』 株式会社アンド 著、2018年、翔泳社。ビジネスフレームワークを活用することが問題解決の近道です。これはよく利用されるビジネスフレームワークのカタログのような本で、状況に応じて必要な手法を紹介してくれます。また、実際に活用できるよう書籍の内容そのままのパワーポイントも公開されているので使い勝手がよいでしょう。


・現時点での『データ解析の実務プロセス入門』の立ち位置
最後に、『データ解析の実務プロセス入門』の現時点での立ち位置について触れておきます。本書も広義では「問題解決」の本であり、上述の問題解決の4ステップについてもページを割いています。さらに、

「さまざまな問題に対応できるよう、綺麗なデータを綺麗にもつ」
「問題解決においてデータ解析がどのように寄与するのか」

についての記述が類書にない部分になっています。データ解析の実務者にとっても「問題解決」の視点がますます重要になるいまだからこそ、本記事でご紹介したビジネス書も参照しつつ、『データ解析の実務プロセス入門』を役立てていただければと思います。

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『データ解析の実務プロセス入門』 あんちべ著

ヘッダ

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――これが,統計屋稼業の心得だ!

【書籍目次】
第1章 データ解析概要
第2章 データ解析のプロセス
第3章 良きデータ
第4章 探索的データ解析
第5章 運用
第6章 テキストマイニング
第7章 分析手法手習い
第8章 解析事例

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