見出し画像

日本酒を通じて表現されるもの。#1

日本酒に向き合い始めて約1年。沢山の日本酒を、沢山の場所で飲んできた。その中で、今回は富山県白岩にある「IWA」について考える。

2023年11月に、ご縁があり酒蔵を見学させて頂いた。IWAについて知らない人のために説明しておくと、蔵元はリシャールさん(元ドンペリニヨン醸造責任者)という方である。あのドンペリニヨンを造っていた彼が、日本酒を造っているというだけでも興味が湧く人は多いのではないだろうか。

IWAの特徴は、アッサンブラージュして造られていることだ。

アッサンブラージュ(Assemblage)

さまざまな物体を寄せ集め(アッサンブレ)て作られた一連の芸術作品を指して呼ぶ言葉。 フランスのジャン・デュビュッフェによって,それまでキュビスムやダダの作家たちが用いていたコラージュ(貼り絵)の手法と区別するために初めて用いられた。

山田錦、雄町、五百万石の3種をリシャールさんが比率を考えて造られる。味はもちろん、信じられないくらい旨い。そして大半の日本酒とは明らかに違う。何が違うかというと、和食以外にもフレンチやイタリアンなどにも合うように造られているということ。実際に4種類の温度帯でテイスティングさせて頂いたが、どれも素晴らしく、このレベルの日本酒を作ろうとしても真似できないだろうなと感じた。

前に述べたように味は当然素晴らしいのだが、私自身が感動したのはそれ以外の点である。

実際にリシャールさんが言ったわけでもなく、単なる想像なのだが彼が日本酒を通じて表現したいことは、"アート"なのだと思う。彼が酒蔵を造るにあたって、こだわりを持ったことの1つが場所だという。富山県白岩、駅から車で1時間ほどかかる山の上だ。日本酒を造る上で水が大切なのは言うまでもない。ただ彼が選んだ理由は水が良質だからではなく、景色がいいからである。もっと掘り下げると、海と山が見える場所。人間は古くから自然を見ながらアートを作っていて、それにインスパイアされリシャールさんも田んぼ、野生の動物など景色を見てアッサンブラージュというアートを作っているという。

それだけではない。彼は蔵そのものにもこだわった。蔵を設計したのは建築家の隈研吾さん。壁には和紙が使われていたり、隅々までこだわり抜かれている。それは働く人のモチベーションだったり、お客様への印象が雰囲気によって左右されるからだ。美しい作品を作るには、美しい場所で。

リシャールさんは、日本酒を通じてアート作品を提供しているのだと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?