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#416 決断の人、源頼朝

振り回される人生の中で、ついに決断した人だった。

今日は4月1日。新年度の始まりでもあり新しい月の始まりでもある。今年に入ってから継続できていることとして、毎月の朔日詣りと十五日詣りがある。それぞれ、ここまでの期間の感謝を伝え、これからの決意を改めて伝えてくるようにしている。起業家や個人事業主など、経営に携わっている人には、このような習慣を持つ人が多い。

毎月お詣りしている先に、滋賀県大津市の建部大社というところがある。ここは、僕が妻との結婚式を挙げさせていただいた場所だ。結婚式は神社であげたいというのは妻の願いであったのだが、挙式日は11月23日。この日は現在では勤労感謝の日となっているが、もともとは新嘗祭という神社にとっては伝統的な行事を行う日であり、我々の地元に近い神社では行事のため式の予約ができなかったという事情がある。そんな中でも、挙式を受け入れてくれた建部大社には恩もご縁も感じており、新年の初詣も含めてお参りする習慣が我が家にはできた。

話が逸れたが、この建部大社の境内には「頼朝公の出世水」という地下水を汲めるところがある。この出世水は「源頼朝が平治の乱に敗れて伊豆国に流される道中、建部大社に立ち寄って源氏の再興を祈願、後に大願成就したことから付けられた」とされている、縁起の良い水だ。遠くから定期的に汲みに来る人もいるらしい。僕は汲んで帰ることまではしていないが、その場で手にすくい一口いただくようにしている。

この出世水を飲む習慣がついてからしばらくして、ふと「源頼朝とはどういう人物なのか?」ということを疑問に持つようになった。皆さんは、源頼朝についてどういう印象をお持ちだろうか?鎌倉幕府を開いた人?いい国作ろう鎌倉幕府?今ではこの年号の語呂合わせも変わっているらしいですね。

源頼朝という人物の人生について鎌倉幕府のことぐらいしか知らなかった僕は、彼について少し学んでみようと思った。歴史上の人物について学ぶために頼りたいのは、まず本である。源頼朝についての本を探してみようと思い、Amazonや図書館を検索してみたけれど、思っていた以上に書籍が少ないことに驚いた。とても有名な人物なのに。嘘だと思うなら、一度調べてみてほしい。やはり、人気のある戦国時代や幕末時代などの偉人と比べ、年代的にも古いこともあり資料が少ないのだろうか。

そんな中、図書館でとてもわかりやすそうな本を見つけた。ミネルヴァ書房が刊行している日本歴史人物伝の中に、源頼朝について子ども向けに紹介している本があったのだ。これなら、サクッと読めてよさそう。

この本を読んでみて感じたのは、冒頭にも書いた通り、源頼朝という人物は思った以上に周囲の人物や環境に振り回された人生だったのだということだ。まず13歳のとき、父親である源義朝が平氏と争って敗れた際に平氏に捕らえられ、なんとか死を免れたものの伊豆に流されることになる。伊豆では平穏に暮らすことができていた頼朝だが、見張り役を平氏から命じられていた北条時政は平氏の増長を快く思っておらず、また同じように平氏に不満を持つ源氏方の武士も集まってきて平氏の打倒を願うようになる。

北条時政の娘・政子と結婚した頼朝。その頃、都ではいよいよ平氏の増長がピークを迎え、当時の法皇である後白河法皇までも蔑ろにするようになった平清盛に業を煮やした朝廷が、頼朝に平氏を討つよう勅命を出す。頼朝はこのときこそ決断をし、兵を挙げる。初戦を勝利したものの次の戦いで敗れたり、その後に軍を増強する中で生き別れの弟・義経と再会したりを経て、ついには壇ノ浦の合戦で平氏を討ち滅ぼす。しかし、この一連の流れで活躍した義経については、彼の出世を妬む臣下からの「都で義経が貴族の機嫌を取ってわがままばかり」という虚偽の報告を信じてしまい、殺してしまう。もっとも、義経に方にも頼朝の弟というエリート意識があり、それによって自分だけは頼朝から特別扱いを受けることができるはずという驕りがあったようだが。

その後、朝廷から征夷大将軍の位を授かり、鎌倉に幕府を開いて武士の地位を高めることに成功した頼朝。幕府を開いてから数年後、落馬が原因で命を落としたとのことだが、幕府は北条氏に引き継がれることになった。というのが、ざっくりとした源頼朝の生涯についてである。

大枠で見て、源頼朝の人生は世の流れや周囲の人物の思惑に大きく流されている部分が多い。ただ、源氏再興の旗頭として担ぎ上げられている部分はありつつも、その立場になったときは腹をくくって決断し、役割を全うしながら自らの本懐を遂げた姿に感銘を受けた。僕はそんな彼に敬意を持ちあやかるべく、今日も出世水を飲みに行く。

(了)

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