「TED](テッド : Technology Entertainment Design)というのをご存知でしょうか?
「広める価値のあるアイデア」というテーマのもと、学術・エンターテイメント・デザインなど、さまざまな分野の第一線で活躍する人物を講師として招き、20分以内のプレゼンテーションを行なってもらい、それをネットを通じて無料で公開しています。
過去の講演者には、ビル・クリントン(元米大統領)、アル・ゴア(元米副大統領)、ビル・ゲイツ(Microsoft創業者)をはじめ、各界の最前線で活躍する実業家、政治家、研究者、アーティストが、世代や国を越えて名を連ねています。
その数ある「TED]のプレゼンテーションの中でも、閲覧数が多いのが、ジル・ボルト・テイラー博士の「パワフルな洞察の発作」(2008年)というプレゼンテーションです。(2021年2月現在:歴代17位の閲覧数)
*字幕:日本語設定可 約18分 ぜひご覧ください!
彼女は、有能な神経解剖学者で脳の研究をしていましたが、あるとき脳卒中を起こし、左脳の機能が停止してしまいました。そのため、左脳が司っている言語や右腕の機能がマヒしてしまったのです。
すると、その瞬間、自身と周囲との境界が分からなくなり、自身が大きく広がるように感じ、全てのエネルギーと一体となる素晴らしい感覚を得たといいます。
博士は、左脳と右脳の働きはまったく異なるといいます。
以下、博士のプレゼンテーションから、左脳と右脳の特徴をピックアップします。
左脳の世界
右脳の世界
脳の研究者が、自身の脳卒中時の脳の状態を内側から冷静に観察し、左脳の機能が停止して右脳の機能のみが作動している世界を見事に描写しています。左脳と右脳の機能を熟知している科学者でなければ、成し得ないことでしょう。
悟りと右脳の世界の共通点
私がこのスピーチを初めて聞いたのは 2013年ですが、今聞き返しても古いという印象は全くありません。
それは、彼女が描写した右脳の世界(ラ ラ ランド )が、宗教的な究極の世界観と一致しているからでしょう。
仏教で言う悟り(涅槃:ねはん・解脱)の世界。
*訳では「天国」となっていますが、テイラー博士は「nirvana」(涅槃)という言葉を使っています。
ヒンドゥー教で言うサマディ(三昧)の世界。
キリスト教で言う天国。
時代の変化に左右されない、普遍性のあるスピーチといえるでしょう。
テイラー博士のスピーチの結び
テイラー博士は20分にも満たないスピーチの中で、我々一般人も、今生に生きる中で『悟る』こと、または、それに近い世界に近づくことがが可能であることを示してくれました。
それは、人生の瞬間 瞬間に、左脳の思考世界から、右脳の感覚世界に意識的にスイッチすることで可能となることを。
そして、より多くの人が右脳の内的な平和な世界を選択することで、実世界もより良いものになる 可能性を示唆してくれました。
現代社会では、言語を用いて物事を考える 左脳中心の生活が主となっていますが、時には思考を止めて左脳を休ませ、五感を使うことに意識を向けて、右脳の世界に浸ることが『悟りへの一歩』となります。
また、多くの悩みを抱えた現代人にとっては、『過去』に起きたイヤなことを何度も思い返したり、まだ起きていない『未来(将来)』に対して恐れや不安を抱く左脳の世界から、『いま、ここ』にある右脳の世界(ラ・ラ・ランド)へと意識的にシフトすることで、悩みから解放されることにもなります。