アニメスタッフクレジット 職種確認表(自分用)

アニメのスタッフクレジットについて、主に私自身が職種を確認する用に作成しました。

業界には関係ない素人の書いたものなので間違い多いかもしれないです。
足りなかったり間違っていたら指摘してくれると嬉しいです

※メモ扱いしている記事なので、かなりの頻度で内容が上書きされてます。

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アニメスタジオにおけるワークフローの一例

アニメスタジオにおけるワークフローの一例

アニメ制作の流れはスタジオごとに異なる部分はありますが、その数ある体制の一例が上記の図となります。こちらを参照して、以降の職種を確認してみるとわかりやすいかもしれません。


【原作 / 原案関連】

原作 / 原案

アニメ作品の元となる原作・原案作品を作り上げた作者や関係者。原作となる漫画・小説がある場合は『原作者 / 連載雑誌or出版社』が表記される。集英社作品では、連載中の作品のアニメ化であれば『作者名 / 週刊少年ジャンプ連載』、連載が終了していれば『』と表記される。

アニメオリジナル作品の場合は主要スタッフの共同執筆によるペンネーム(共同筆名)が使用されることが多い。『Project ○○』という場合が多い印象。サンライズでは各オリジナル作品で『矢立肇(やたて はじめ)』名義が使用される。

原作作品では原作者は制作をスタッフに全て任せる方もいれば、脚本やコンテの監修・制作のほか原画にも関わることがあるなど、関わり方は様々。原作者は一切関与しない作品でも原作編集者は会社側の代表兼仲介役として脚本会議に参加することは多い。

オリジナル作品ではプロデューサー、監督、脚本家の全員が責任者であることが多いが、この3者のいずれかが主導となり原作を手掛ける場合もある。

原案』表記は主にオリジナル作品で使用されるが、稀に原作作品で使用されることもある(アニメオリジナル要素が強い場合など)。


キャラクター原案 / 原作イラスト

アニメ作品に登場するキャラクターのデザインを作り上げる人。ただし、あくまで作成するのは基になるデザインであり、このデザインを基に更にアニメーション向けに別のアニメーターがデザインを再作成する。基本的にアニメーター以外のクリエイターが務めることが多い。

原作が小説の場合は原作イラストを描いているイラストレーターの名前が記載されることが殆ど。漫画作品の場合は原作に作者名が記載されているためノンクレジットのことが多い。原作イラストレーターは名義記載のみで制作に一切関わらないこともあるが、アニメ向けに新たにデザイン案を描くことも多い。また、アニメのデザイン監修を担当することもあり、キャラクターデザインのみに関わる場合もあれば、プロップや美術まで幅広く監修することもある。

オリジナル作品の場合には、企画初期の段階から関わり設定を元にコンセプトアートやキャラクターをデザインする。このコンセプトアートは監督などが描くことも多く、それを元にキャラクター原案を作成するパターンもある。ときには、コンセプトアート専門に雇われるイラストレーターもいる。


掲載 / コミカライズ

アニメーション化作品の原作を掲載している雑誌・サイト、またはアニメオリジナル作品のコミカライズ作品を掲載している雑誌・サイトのこと。


連載協力 / 原作協力 / 原案協力

主には原作を連載している出版社の社員がクレジットされる。編集担当や編集長、元編集担当が記載される場合が多い。そのほか、原作者や他の漫画作品のクリエイターなどがクレジットされる場合もあり、様々な形で協力したクリエイターが表記されていることもある


【企画 / 統括関連】

企画

アニメーション製作を企画したメンバーのこと。『製作』『製作総指揮』『エグゼクティブプロデューサー』と表記される場合も多い。実際に企画するのはプロデューサーであることが殆どだが、この企画に記載されるのは基本的に製作委員会に参加している企業の代表取締役、又は、各企業にあるアニメ関連の部署のトップの名前が記載されることが多い。そのため、実際に企画した人の名前が記載されてないことも多い。ここに記載された人間が企画を立ち上げることももちろんある。

参加する各企業の予算・版権諸々における窓口の最終責任者的なイメージ。製作委員会に出資する企業の代表・責任者クラスが「企画」、実際に製作委員会に出席して現場で稼働している責任者が「プロデューサー」として表記されることが多い。


企画プロデュース

アニメーションの企画・プロデュースを担う役職、企業製作委員会の立ち上げをサポートする立場のことが多い。『プロデュース』と表記されることも。

作品全体のスケジューリングの組み立てから各計画が順次万全に動いているかなどの適宜確認、全体の統括などが主な仕事。何かを生み出す(アイデアを出す)というよりは各クリエイターや彼らのアイデアをプロデュース(サポート)する。つまり、実現するために現実的な企画を立て動く人のことを指している

作品の立ち上げから関わっていることが多く、作品全体の中心的存在としてプロデュースを行っていくことも。

作品に直接関わらないが何かしらの形でプロデュースに協力している場合は『プロデュース協力』と表記される場合もある。


製作総指揮

製作全体の統括責任者。この表記がある人が実質全体のトップなことも多いが後述するように場合による。予算や宣伝、シナリオなど作品の様々な作業に意見を出したりするアドバイザーとしての役割もあれば、総合プロデューサー的な立場となり全体を統括する場合もある。また、作品によっては制作にほぼ関わらず、名義を貸しているだけの状態のこともある。『製作統括』『エグゼクティブプロデューサー』と表記されることもある。


スーパーバイザー

専門家の立場で設定などに付いてアドバイスする監修・考証担当。主に企画・原作・原案のスタッフが外部アドバイザー的な立ち位置でかかわることもあれば、各分野の専門家がかかわることも。

監修対象も様々であり脚本や絵コンテ、アフレコ等に深く関わる場合もあれば、基本的には制作陣にお任せする場合も。

なお、後述するCG部門のスーパーバイザーとは別物。


【演出関連】

監督

現場全体を統括し、作品の方向性を決める映像の最高責任者。映像の品質を左右する立場であり、監督による各セクションへの指示出し次第で作品の出来が左右される。

監督によってはシリーズ構成や脚本、音響監督を務めることもあれば、アニメーター出身の監督の場合にはキャラクターデザイン、作画監督などを兼任することもある。また、前述のように監督主導で企画が始動することもあり、一からデザイン・設定・ストーリーを作り上げる監督もいる。ただし、基本的には構成・脚本家やプロデューサー、各セクションの責任者と協議しながらの制作になるため、作品全体に監督の色が100%出る作品はまず無い。

テレビアニメ・劇場アニメのどちらに関しても、監督がすべての絵コンテや演出を担当するわけではない。作品によってはTVアニメ全話数や映画1作品の絵コンテを監督のみで務めることもあるが、基本的にはその膨大な作業量から他の演出家に各話・各パートの演出処理などを委託する。では、ほかの演出家に作業を任せている間は暇なのかというと、自身が担当する話数やパートの絵コンテ・演出作業のほか、シナリオ会議、各話演出家との打ち合わせ、制作中に演出陣より出た意見の最終判断、新しい設定が必要となった際の判断、各セクションとの打ち合わせや工程の確認、その他、いろいろな場面で判断を下したり重要カットで監修に入る、または全てのカットに監督チェックを入れる場合もあったり、各種宣伝関連の取材受け入れ・記事内容監修なども含め、あらゆる方面・セクションにて作品に対しての現場レベルでの最終決定を下さないといけない(もちろんプロデューサーや制作P、制作デスクや進行、各セクション監督などとも相談しながら決める場合も多い)。そのため、基本的には非常に忙しい。フリーランスの監督の場合、別のスタジオで監督作品を掛け持ちしている場合もある。

監督の一番の役割は『作品のビジョンを明確にする』こと。作品のターゲット層や向かうべき方向性、そのために必要な期間やスタッフの技量、人選など、プロデューサーや関係者と話し合いながらそのビジョンを具体的にし、指標を作りスタッフ全体を率いていく。

アニメ製作において、監督が企画段階から参加している場合は少なく、ある程度のスタッフィングやシリーズ構成による構成案が決まってから監督が現場入りするパターンもある。監督が現場に入った段階で脚本もすべて完成しており、「この脚本をどう映像化するか」という仕事を任されるパターンもあるらしい。

また、アニメーターや演出家などのスタッフィングに監督の存在が大きく影響することもある。アニメ業界では個々人の関係性や貸し借りがのちの作品にも影響することが大きく、その監督と仲がいいから参加したり借りがあるから参加する場合やその監督作品になら参加するというアニメーターや演出家もいる。


総監督

実際にこの職種が置かれている作品はクール内でも少ないが、表記されている場合には、監督より上の立場で映像の方向性を決める最終責任者となる場合が多い。

作品をかけ持つ監督が企画立ち上げに関わった後、そのまま名義を貸すだけの場合もあるが、総監督がシナリオから絵コンテ作成・発注・監修までの制作に関わり、現場仕事となる演出処理以降の仕事は監督に任せる場合もある。この場合、シナリオや絵コンテまでを総監督が担当しても、完成した映像は演出以降を担当する監督の持ち味が出ることも多いとか。総監督によっては演出処理をする場合もあり、アフレコや編集にも関わることがある。また、新人監督のサポートとして総監督の職種に就くベテランもいる。一方で、前述したスーパーバイザーと同様の立ち位置となるケースもある。

とにかく、細かい決まりがないため「作品によって違う」としか言いようがない職種の一つ


副監督

監督補佐』『助監督』『監督助手』と表記されることも。監督の補佐的存在。監督のアシスタント的業務のほか、監督不在の際には代わりに業務を代行することもある。監督担当回の演出を行うこともあれば、監督の代理で会議や打ち合わせに参加することも。また、自身でコンテ・演出を担当することもあり、シリーズ通してのチーフ演出的立場になる場合もあるなど、こちらも役割は作品ごとに違う。

新人演出家や演出経験が少ないスタッフが監督をする際に、彼らを補佐するために実力のあるベテラン演出家が副監督として補佐や相談役を担当することも多く、実質、助監督が現場の要になることもある。


絵コンテ

脚本を映像として落とし込むための設計図。『画コンテ』とも。脚本や各種設定デザインに沿ってカットごとにキャラクターをどのように配置して、どのくらいの時間でどのように動かすのかを決める。大まかな構図を決めるだけではなく、撮影工程への指示などもここで決められる。

脚本の流れには沿うが、必要に応じて台詞等を変更することもあり、制作が進むにつれて描いたカットを欠番にしたり入れ替えるなどの調整をすることも(ただし、近年はコンテマンの判断で欠番カットを出したり台詞変更を行う機会が減少傾向とも言われている。原作に忠実であることを求められるため、これらの判断は監督にゆだねられる場合も多い。しかし、監督も原作側に判断を仰ぐ必要があり、これらの理由からコンテマンのコントロールによる映像媒体に合った物語のテンポを生み出すのが難しくなっていると言われる。そのため、テンポやセリフ回しの違和感に繋がる場合も)。

稀に監督が全話数の絵コンテを担当することもあるが、基本は話数ごとに、コンテマン(基本は演出家)へ依頼することがほとんど。1本の映画作品でもパートごとにコンテ担当者を分けることが多い。TV作品では1話目や重要話数、重要パートのコンテは監督が担当することが多くみられる(1話目は作品の指標となるため監督が務める場合が多い)。また、作品の締めとして最終話も監督が担当することが多い傾向にある。コンテマンに依頼する際には監督と打ち合わせを行い、完成後には監督やプロデューサーの監修を受ける。また、場合によっては演出工程で担当話数の演出家が修正や追加カットを加えることもある。監督によっては大幅にコンテを修正する方もおり、ほぼ原形をとどめない場合もあるとか。

コンテに関してはTVアニメでも1話数内にてパートごとに数人のコンテマンを配置する場合もある。この場合、必ずしも人数が多い=スケジュールが足りなくて撒いたとは限らない(各コンテマンの特色を生かすためにあえてパート分けをやっている作品もある)。

制作期間は最短で1週間ともいわれているが、一般的にはTVアニメ1話分であれば1~2ヶ月程度と言われている(1週間はよほど描くのが早い人か、よほど余裕のない現場のみ)。映画では1年単位で時間をかけるケースも。コンテ作業では通常、作品資料やキャラクターの心情、設定関連をすべて吟味したうえで作成するので、齟齬が出ないように時間をかけて作る必要がある。また、ある程度、参加アニメーターや枚数制限などが分かる場合には、その点(予算、枚数、納期、アニメーターの実力など)も考慮した絵コンテ制作が求められる(難易度を上げるか、難しくないカットを多めにして演出で魅せるか)。

制作進行を経て演出になったスタッフは絵を描いたことがない場合が多いが、構図の指示などがしっかりしていれば絵を描けないスタッフのコンテでも上質なコンテが生まれる(担当者にもよるが、描き込んでアニメーター個々の自由度が減るよりも、ある程度ラフなコンテの方が演技の幅に制限が少なくて喜ぶアニメーターも。ちなみに、本来は担当アニメーターが担当カットのコンテをそのまま真似るのではなく、意図を読み取り芝居付けや構図整理をする必要がある)。一方で、レイアウトに使えると見間違うほどに細かくコンテを描き込む演出家もいる。これは、演出家自身の特徴である場合もあり、コンテ担当者の表現したい意図を明確に伝えられるメリットもある。しかし、近年は絵コンテをラフなレイアウトレベルにまで描かないとLO/原画が描けないアニメーターが増えているそうで、絵コンテの絵を拡大してレイアウトにするという強行に走る現場もあるらしい(コンテの構図はあくまで設計図であり、そのままレイアウトにすると構図的な齟齬が生まれるリスクもある。また、コンテ担当者の労力も増える)。

絵コンテはスタッフ構成や予算、スケジュールを考慮しなければいくらでも難易度の高い画面構成を生み出せるが、本来であれば「不要な動きを省略したうえで良い画面を生み出す」「キメのカットとそうじゃないカットを考慮した配分」「各スタッフの実力やスケジュール、枚数制限を考えた構成」が求められる。例として『ドアの開閉シーン』では、動かそうと思えば1カット内で全ての動作を描くこともでき、さらにはキャラクターの全身を描き動かす選択もできる。しかし、これはかなりの労力と枚数を割く難易度の高いカットになる。これが必ず物語のために必要なカットであれば採用してもいいかもしれないが、そうでない場合は【省略】をして各工程の労力を減らすことも大事となる。この場合、1カットにつき1芝居のみとし、「ドアを開ける」「ドアを閉める」を1カットずつ分けて描き、身体の一部のみを描写する形(上半身のみ、足元のみ、腕のみ等)で表現できれば、カット数は増えるが全体的な芝居の難易度は大きく下がる(ただし、カット数が増えると担当アニメーターの単価も増えるため、制作側がカット数を抑えるようにNGを出す場合もある)。

このように、絵コンテマンは無駄に難易度の高いカットばかりを作るのではなく、カロリーが必要な個所以外は省略して、それを省略したと思わせないように違和感なく視聴者に見せなければいけない。しかし、各スタッフの力量やスケジュール、予算を考慮せずに難易度ばかり高いカットを作るコンテマンも多く、これが品質低下につながる大きな要因の一つにもなっている。難しいカットを考えるのは意外とできる人も多いが、それ以上に【上手く省略できる】コンテマンこそ優秀であるという意見は多い。

最近は演出打ちや作打ちを省略するために、コンテに撮影等の指示以外にも本来作打ちなどで指示をするはずの内容も記載する『指示コンテ』を制作側がコンテや演出担当に依頼する場合もある。この工程は時間短縮につながる代わりに演出やコンテマンの負担が増えるとともに、打ち合わせなしでカットを割り振るため映像の質の低下につながるという指摘もある。

近年はコンテのみを専業にし、演出処理以降の工程には参加しない場合も多い。その理由は「演出」の項に後述。


絵コンテ協力

絵コンテ制作に協力したスタッフ。作業内容は作品によりバラバラだが、絵コンテ制作のアドバイス、ラフに描かれた絵コンテの清書(『絵コンテクリーンナップ』でクレジットされることも)、一部パートのコンテ制作、該当カットを監修など、その時の状況により役割は様々。


演出

担当話数(映画なら担当パート)の現場制作責任者。担当話数、又はパートの『監督』と言ってもいい立場。

コンテマンにより作成された絵コンテと監督との打ち合わせで得た指示をもとに、実制作を行う各セクションに映像や演技の方向性などを指示し、それらを監督する。音響制作やアフレコ、編集まで、コンテ以降の担当話数の作業すべてに責任者として関わり指示をだす。監督が『全体の監督』なら演出家は『担当話数・担当パートの監督』。絵コンテと同様に1話目と最終話は監督が担当することも多い(1話目は作品の指標となるため監督が務める場合が多い)。各工程に指示を出す影響か、コンテマン以上に演出家の色が話数に現れる場合もある

近年は演出のみを担当するスタッフも多いが、その場合、コンテはフリーランスに外注していることが多いため、コンテ担当者に質問できる機会は多くない。その際には絵コンテに込められている演技の付け方などを監督から指示されるが、自身でコンテから意図を読み取ることのできる能力も求められる。また、絵コンテ担当者の描いたコンテに演出家が後から付け足したり修正する場合もある(例として、バイクに乗ったことのないコンテマンがバイク描写を手掛けていた場合に、バイク経験者の演出家が後から正しい描写に修正するパターンは存在する)。

前述の通り、担当話数におけるキャラクターの心情や物語のメッセージを、監督のイメージや各種設定からしっかり把握したうえで、その『演出意図』を現場全体に伝える重要な役割。とはいえ、演出というのは原画、色彩、撮影、編集、音響など、各セクションのスタッフも絵による演技付けや音やテンポなどの魅せ方、聞かせ方で『演出』というものを行っている。では、演出家は何をするのかというと、それぞれのセクションが持つ演出意図を統一し、求められる意図に合っているかを伝える仕事となる。関わる人数の多いアニメ現場では絵コンテを通して別々の解釈を持つスタッフも多く出てくる。それらを統一するのが演出の役割でもある(ただし、演出家も各セクションの仕事、知識について専門職より詳しいわけではないため、その分野の専門家であるクリエイターたちがコンテから抱いた演出意図や効果的な演出法について提案を受けた際は、それぞれの意図をすり合わせながらより効果的に見せる手法を模索する場合も多い)。

現場をスケジュール通りに回す実務能力も必要であり、演出の腕次第で映像クオリティが左右される。この点はアニメーター出身者以上に制作出身者のほうが管理能力が高い場合も。演出で評価されたスタッフは後に監督に抜擢されることが一般的。逆にこの工程を経験せず監督になることはまずない(あったら現場が大変なことになる。ただし例外もあり、その場合には副監督や演出補佐がサポートや実質的なチーフ演出としておかれるケースが多い)。アニメーター出身者の場合は作画監督チェックの前段階にあたる演出チェックの際に絵を大きく修正する演出家もいる(修正・チェックの順番で言うとLO・ラフ原画完成→演出チェック→監督チェック【ない作品もある】→作画監督→総作画監督→原画【第二原画】作業へという順。原画完成後も同じ手順でチェックを行う)。なお、演出や監督が行う修正は作画をキャラ表に似せることではなく、あくまで演技のニュアンスを二原工程に伝えるために書き足しているもの。そのニュアンスを基に次の監修工程である作監や総作監がキャラ似せをしながら構図などを整えていく。ただし、現場によっては、アニメーター出身の演出家が作監修正の領域まで描き足すこともある(後の工程の負担軽減を目的としているケースもある)。

ちなみにこの修正、正確に言えば「後の工程への指示出し」は凄くうまい大大大ベテランアニメーターに対しても行われるため、修正されること=下手ということではなく、あくまで作品の世界観を統一するための調整である(欲しい表情や演技では無いから直している。なお、本当に悪いから直すことも多いが)。

コンテ担当が続投しているか否かに関わらず、演出担当の能力次第で現場の作業効率も大きく変わる。演出家が現場をしっかりとみれていると、各種打ち合わせも効率的に進み、力を入れるカットと省略すべきカットの使い分けやアニメーターや各セクション個人個人の負担を考えれる演出が行えるなど、現場の環境がとても良くなる。また、そういう現場で生まれた作品は映像としての品質も高い場合が多い。

絵コンテと兼任していることも多いが、スケジュールの都合や、そもそもコンテのみ、演出のみしかやらないスタッフもいるため、上述のようにコンテと演出は別々の場合がよくある(というより最近は大多数でこのパターン)。これには絵コンテ担当者のスケジュールの都合(作品内で多くコンテを切る必要があるため1話あたりの演出処理に時間を割けないか、別作品の作業と被るため)以外にも単価と時間の問題が絡む場合も多い。
演出は1話分の拘束期間が最短でも1か月、通常は2~3か月、長いと半年~1年以上となる場合もある(もしコンテ作業も含むならもっと長くなる)。しかし、その単価は安いケースが多く、しかも毎月その単価で出るわけではない。多くの場合は全作業期間を合算したうえでの演出単価という場合も(2か月作業しても20万程度の場合もある)。そのため、複数本を掛け持ちする演出家もいるが、上記の通り膨大な作業を要するため掛け持ちを何本もやるのは自殺行為である。それならコンテを沢山切った方が稼げるとコンテマンしかやりたがらない現場も多いとか。なので演出処理は固定給の社内演出家が担当することも多い。

ちなみに、前述した絵コンテ複数人体制は必ずしもスケジュールが破綻しているかどうかの指標にはならないと解説したが、演出の場合、A・Bパートで演出を分けるケースこそあるが、基本的に3人以上演出がいた場合はスケジュールが破綻している可能性が考えられると言われている(一人では現場を捌くのに時間が足りないため分担している可能性がある)。


チーフ演出

作品の主要演出家。演出スタッフの統括を行う場合もあれば、主要話数の演出に参加するスタッフをこの表記で示すこともある。『助監督』的立ち位置の場合も多い


演出補佐

演出作業の補佐をするスタッフ。アシスタント的な役割の場合もあれば、担当演出家が初の演出業務だった場合、そのスタッフをサポートをするためにベテランのスタッフが担当することもある。近年はスケジュールがない場合に演出処理の補佐として付くスタッフのことを指す場合が多い。

クレジットとして『原画演出補佐』が表記されることもある。詳細は不明だが、恐らくは演出処理の中で原画演出チェック(LO/原画)のみを請け負っている場合に表記されるのだと思われる。


各種ディレクター

各技能に特化した演出を担当する演出家。アクション特化の場合は『アクションディレクター』、ライブ特化の演出家の場合は『ライブディレクター』など、作品により様々。

主に特定の箇所の演出処理およびコンテ制作、コンテ・演出監修などを行うスタッフのこと。


OPディレクター / EDディレクター

OPやEDのディレクションを担当するアニメーション監督。OP・EDの絵コンテ・演出、その他OP・ED内の工程(原画、美術、撮影)も手掛ける場合がある。
 
アニメ業界にはOPやEDを専門的に手掛けるスタッフやスタジオが存在する。有名なクリエイターでは石浜真史、梅津泰臣、山下清悟。スタジオは10GAUGE(依田伸隆)など。この表記がされている場合は本編には参加せず、OPやEDのみに参加しているケースが多い

OPやEDは本編スタッフや監督が演出を担当するケースも多く、本編参加スタッフが原画等を担当している場合も多い。しかし、OP制作は本編本放送の数か月前に開始する場合が多くスケジュールも短い(放送3か月前にコンテINの場合も)、その時期は本編制作も中盤~終盤とピークである場合が多いため、OPやED専門のチームを別に作り演出やアニメーターを集めるケースも多い

その代わり、OPなどのほうが本編より単価が高めの場合も多いため、短尺の仕事を主軸としているクリエイターもいる。OPは特に【作品の顔】になる大事な要素(近年は公式がYouTubeチャンネルに投稿することもあり、本編を知らない人でも目に留まりやすく1分30秒と短いため楽曲と同じく宣伝効果が高い。楽曲がヒットすればメディア露出も増える。本編を見返さない人でも楽曲と共にOP映像をこの先何百回と見返す人もおり、「曲を聴けば本編より先にOP映像が思い浮かぶ」人も多い)。そのため、OP映像には本編以上に力を入れる作品も多い


【シナリオ関連】

シリーズ構成

物語の構成を決め、各脚本家の書いた脚本を監督する人『構成』ストーリーディレクター』『シリーズディレクター『メインライター』『ストーリーエディター』『チーフライター』と表記されることも。作品のプロットづくりや物語全体の大まかな展開など「構成」を実際に執筆するのはこの職種の場合が多い。ただし、これらの作業は監督やプロデューサーと共同で行うことがほとんどであり、シリーズ構成一人で全て決めることはほぼない。場合によっては監督やプロデューサーの意見をまとめるだけの場合もある。

原作ありの作品では大まかな構成(各話数ごとの展開)を決め、各脚本家に発注。構成自身で第1話や最終話などの重要話数の脚本を手掛ける場合も多い(1話を担当する場合は、それ以降の話数の脚本家に作品の方向性を示す役割もある)。その他、各話数の脚本の監修も行う。

オリジナルの作品の場合は細かな設定制作までを担当することもあるほか、シリーズ構成が原案 / プロットから全て制作する場合もあり、その場合、参加する監督はこの原案をどのように映像化するか検討するところから始める。つまり、シリーズ構成が制作の基盤となる作品になるケースもある(このプロットを監督やプロデューサーが事前に用意しているケースも多く、構成作家が監督やPの構想をどのように具現化するか考える立場になることもある)。

構成だけではなく全話脚本を担当する方もいるが、一方で構成のみに関わり、それ以降の作業には一切関与しないことも。基本的にはシナリオができたらそれで仕事はおしまいであり、実際に出来上がった映像を見た時に自身の用意した構成と大きく異なることもあるとか。一方で、アフレコや編集までかかわる体制も稀にだがある。

構成に何らかの形で協力したスタッフは『構成協力』とクレジットされることもある。また、原作者などが脚本を監修する場合や新人の構成作家のシナリオをベテランスタッフが監修する場合には『ストーリー監修』『シナリオ監修』とクレジットされる。

シリーズ構成の仕事は簡単にまとめると以下の2つ。

・監督・プロデューサー・製作委員会の関係各所の意見をまとめて物語の流れを文章で構成する
・脚本の監督として各話数の脚本家を統括(指示・修正作業など)

大まかにいえば上記のような内容だが、その作業方法は作品によって大きく異なり一概には言えない。例として、以下の通りの作業を行うことが多い。

・発注会議で監督・プロデューサーと協議して作品全体の大まかな流れを書いた『シリーズ構成案』(何話の何パートで何をするのか、各話の流れの全てを大まかに書いた原案)を作成する

・原作がないオリジナルアニメの場合は監督・プロデューサーと共に設定面から作成(デザイナーとデザインやコンセプトアートを協議することも)

・各話脚本家の選定(シリーズ構成が集めることもあれば監督やスタジオ側が選定することも)

・『シリーズ構成案』を元に、構成会議で話の流れや物語の見せ場を監督・プロデューサーや製作委員会の関係各所と細かく調整して練り上げる

・構成の決定稿を元に、集めた脚本家へ話数を割り振りしてそれぞれに発注(各ライターの作風などを考慮することも)

・各話数の脚本会議(本読み)にすべて出席し、出来上がった各話数の脚本について監督・プロデューサーと共にチェック(設定や前後の展開に齟齬が生じていないか等をチェック)

・各話脚本家が書いた脚本を脚本会議の意見をもとに修正、又は修正を各話脚本家に依頼

・全話数の脚本が完成(決定稿)すれば作業終了


※重要な話数(1話、最終話、勝負話数)はシリーズ構成自身が脚本を担当することが多い。また、スケジュール次第では全話数をシリーズ構成一人で担当することもある。逆にシリーズ構成の作業のみで脚本を1本も書かないことも。脚本作業以外にコンテ監修や楽曲監修、アフレコ収録に参加したという例もあるが、基本は全話脚本完成時点で作業が終了することが多い。

上記は一例であり、先に述べたように作業内容は作品によってケースバイケース。まず、最初の『シリーズ構成案』の時点で、どれくらい細かく内容を書くのかは同じ脚本家でも作品の作風や制作スタイルに合わせて異なる(同じ脚本家でも1話Aパートを1行のみで表すこともあればAパートのみで1ページ丸々使って案を書く場合もある)。ほかにも物語の方向性を伝えるために第1話の脚本をシリーズ構成が務めることもあれば、構成会議で物語の構成のみを手掛けたら、以降の作業(脚本家の選定や脚本の執筆・監修・脚本修正など)には一切関わらない場合も。各話脚本家への指示も大雑把に流れだけ指定して脚本家それぞれの個性に任せることもあれば、細かく指示を出したり、ほぼ全てを修正してシリーズ構成が手掛けたも同然の脚本になることもあるらしい。作品によってもシリーズ構成が実質の原作者となりシナリオ全てを主導することもあれば、監督やプロデューサーの発注をそのまま反映するだけの「アイデアのまとめ役」に徹するのみであることも。たとえ、制作スタジオや監督、脚本陣が全て過去作と同じ布陣であっても、製作委員会の方針や作品の作風、制作スタイル次第でその手法は全く異なる

上記のように、物語のシナリオは決してシリーズ構成を担当する脚本家のみで手掛けることはない。監督やプロデューサー、製作委員会各企業のプロデューサー、そのほかの主要スタッフたち、時には原作者・原作編集者などとも協議して物語を練り上げていく。つまり、作品にもよるが事実上の共同執筆状態に近い。場合によってはプロデューサーが構成案をほぼすべて手掛けて構成作家は微調整のみ担当するケースも(なのでシナリオの良し悪しにシリーズ構成自身の腕前がどの程度重要な要素になるかは作品の制作体制次第。コンテ以降の工程で演出家がシナリオに手を加えることもある)。


脚本

監督、プロデューサー、シリーズ構成などが共同で作成する『構成表』や設定資料などを基に担当話数の脚本を執筆する脚本家。『シナリオ』と表記されることも。

メンバーは監督やスタジオが集めることもあるが、シリーズ構成の伝手で集めることが比較的多いとか。1話目はシリーズ構成が担当して作品の方向性を他のスタッフに示すことが多い。また、作品の締めとして最終話もシリーズ構成が担当することが多い。

完成した脚本は監督・シリーズ構成・プロデューサーが脚本会議で監修するが、一発OKは基本的に無いようで何回もリテイクすることがほとんど。企画立ち上げから脚本完成までが製作期間の中でも特に長いと言われており、脚本完成までで企画開始から2~3年以上経つこともあるとか(主に脚本制作に入る前段階までが長いらしい)。映画作品だと脚本完成に1年以上、場合によっては5年以上かかったケースもあるらしい。一説によると「原作付きアニメなら5~6稿までいくと結構直した感じになる」とか。オリジナルアニメだと十数稿まで行くことも。

何らかの形で脚本に協力したスタッフは『脚本協力』『文芸協力』と表記される。

ちなみに、脚本とは別にアフレコ用に作成される台本だが、そこに書かれている「ト書き」はコンテに書かれている文章が主であり、脚本とは別物。


文芸

アニメ内に登場する資料やポスター、看板などの文面の作成を担当。脚本家が文芸としてクレジットされることもある。後述する『文芸担当』がこの職種でクレジットされている場合もある。脚本家の登竜門的職種。


【各種デザイナー】

キャラクターデザイン

アニメーターがアニメーションとして描きやすいようにキャラクター原案を改めて再デザインする工程。基本的には元のデザインを動かしやすいように簡略化することが多い。1人のスタッフが担当することもあれば、複数人でキャラクターを分担することもある。原作のデザイン原案と区別するために『アニメーションキャラクターデザイン』と表記する場合もある。また、メインキャラクターを専門にデザインを担当する場合は『メインキャラクターデザイン』と表記される。

制作初期から関わることが多く、現場で作画作業が開始された後も、話数が進むごとに追加でデザインが発注されることも多い(同じキャラクターでも、例えば服が破れる描写があれば多くのスタッフが破れた個所を間違えないようにデザイン差分を作成する必要がある。後述のサブ担当が務めるケースも)。そのため、制作終盤まで活動することが殆ど。

キャラクターデザイナーは合わせて後述の総作画監督を兼任する場合もある。しかし、作画作業には一切関与せず、デザインのみ引き受けるケースも多い。

3DGGアニメーションの場合も作画アニメと同じくCGアニメーション向けに新たにデザイナーを置くことが多い。


サブキャラクターデザイン

サブキャラクターのデザインを担当。サブキャラクターは原作付き作品でもデザイン原案が存在しないことも多いため、デザイナーに発注せずに1からデザインを考えるこも多い。話数が進むにつれてサブキャラクターが増えることが多いため、作業負担も大きい。これらのキャラクターはメインのキャラクターデザイナーがすべて担当すると負担が大きいため、サブキャラクターデザインとして別に人員を置いている。サブキャラクターに含まれる範囲は作品によって異なり、担当してもクレジット表記されないケースもある(特定のカットのみに登場するキャラクターの場合は担当原画マンにお任せする場合もあるため)。

作品によっては『モンスターデザイン』『メカデザイン(ロボデザイン)』『SDキャラクターデザイン』などもあり、これらはデザイン原案者以外の専門デザイナーにデザイン原案を手掛けてもらうこともある。


プロップデザイン / 各種デザイン

作中の小物デザインを主に担当する。作品によって『プロップ設定』『小物設定』と表記されるほか、内容にっよって『衣装デザイン』『武器デザイン』『○○デザイン』など名称は様々であり、それぞれに数人のデザイン担当者が置かれることも多い。

これらのデザインはアニメーター自身が行うこともあれば、新たに原案デザイナーを雇うこともある。キャラクターの身に着けている小物から生活用品、作品によって武器や魔法道具、魔法陣などのデザインを行う。小物などは最終話まで追加されていくため、負担は大きいとか(なお、話数作監や演出へ追加発注するパターンも存在する)。

武器などのデザインを担当するスタッフは、それらの作画を監修する作画監督としても参加することも多く、その場合は『武器作画監督』『○○作画監督』と明記される。

世界観の統一やアニメーターの負担を減らすために置かれる職種だが、そのカットにしか出てこない小物などは、そのカットを担当するアニメーターに写真などの資料だけ渡して全て任せることもある。

『衣装設定(衣装デザイン)』『衣装設定協力』の場合は、アニメーターや原作関連のデザイナーのほかに本職のファッションデザイナーが参加する場合も多い。


デザインワークス

プロップデザインやメカデザイン、2Dワークスなどの別称。作品によってその担当範囲は異なり、ロボットアニメなどではプロップデザインと別枠で置かれている場合もある。仕事内容はプロップデザインと同じこともあれば、特定の『○○デザイン』でクレジットされたデザイン以外を担当している場合もある。


イメージボード

所謂『アイディアスケッチ』のこと。『コンセプトアート』とも。企画時のコンセプトを基に監督やキャラクターデザイナーなどが描く作品の指標となるイラスト。所謂キャラ原案的なものから、主要な場面イラスト、コンセプトアート、ラフ絵コンテ的なものなど内容は様々。

イメージボードは作品のコンセプトをスタッフだけではなく、企画会議で出資側に伝えるためにも大事なものとなる。そのため、コンペで勝ち残り予算や人員を獲得するためにも重要な要素となり、基本的には視聴者に公開されることは稀である。


コンセプトアート

作品の指標となるイメージイラスト・背景画を作成する役割。『コンセプトデザイン』『アートコンセプト』『イメージボード』とも。企画立ち上げ時にキャラクター原案や各デザイナー、美術監督などが作品のテーマやメッセージを作品の出資企業や各スタッフに伝えるためにプロットなどを基に作成する。このイラストだけで世界観や作品イメージが伝わるイラストになっており、コンセプトアートを使用したプレゼン次第で企業が出資してくれるかどうかを左右する場合も。コンセプトアートでは作中の主要場面を複数枚作成する場合が多い。

作品の方向性を決める最初のデザインであり、一般にお披露目される機会は少ない。また、コンセプトアートはあくまで原案的な役割であり、実際に完成した作品と大きく内容が異なる場合も多い。


アートディレクション

各種デザインの統括・監修・制作を担当するがその範囲は様々であり、パッケージのデザインやキービジュアルなどの映像外のデザインをメインに担当する場合もあれば、作品内で使われるサブタイトルや次回予告などをデザインする場合もある『グラフィックデザイン』『グラフィックデザイナー』『ビジュアルデザイン』『ビジュアルコンセプト』とも。


デザイン協力

何かしらの形でデザイン関連に参加しているスタッフが表記される。特定のキャラクターから1カットしか登場しない小物まで、様々なものが含まれる。別作品から引用した場合も『出典』か『デザイン協力』で表記される。


タイトルロゴデザイン

作品タイトルのロゴをデザインする。『題字』とも表記される。専門のデザイナーを雇うことが多い。原作のある作品でもアニメ向けに再デザインされることが多い(元々、原作作品のロゴも原作者が自身で手掛けるケースは少なく、同じような専門デザイナーに依頼するケースが多い)。この変更の理由として、原作のロゴとアニメのロゴは権利関係が変わるため、その作品がアニメで売れた場合と原作で売れた場合のライセンス管理が複雑になるため

作品によっては各話数のサブタイトルをデザインする『サブタイルデザイン』、宣伝ポスターも含めた『ロゴ・ポスターデザイン』が置かれることもある。


フォントデザイン

デジタル化した書体である「フォント」を作品に合わせてデザインする職種。文字デザインに協力したクリエイターやスタジオは『フォント協力』とクレジットされる。キャラクターが実際に作中で書く文字をデザインすることも多い。

フォント以外にも筆記体等のデザインに関与した場合は『筆文字デザイン』『文字デザイン』で表記される。

作品の時代や設定に合わせたフォントを提供している。なかでも有名な企業は『フォントワークス』。同スタジオのHPには各作品の使用フォントも記載されている。


アイキャッチイラスト

放送時、CMが挟まる際にアイキャッチとして出されるイラスト。提供画面で出されるイラストは『提供イラスト』、放送終了後に流れるイラストは『エンドカード』と表記されることが多い。アバン(OP前)に『アバンイラスト』が掲載される作品もある。
 
アニメスタッフが描く場合もあれば、外注のイラストレーターがゲストとして描く場合もある。


【各種設定 / 監修】

考証 / ○○設定

各種設定の作成・考証をするスタッフ。大枠には『設定考証』で表記される場合が多い。

主にそのジャンルの専門知識を持った作家・専門家・専門スタジオが協力する。設定・シナリオ面以外にデザインの監修をする場合もある。また、場合によっては脚本以外にも絵コンテや原画を監修する場合もある。

協力するスタッフは映像制作や作劇づくりの専門家ではないことも多いが、場合によっては専門知識を持ったアニメスタッフが、そのまま考証スタッフとして参加することもある。『時代考証』『SF考証』『銃器設定』『軍事考証』など作品により役割は様々。

考証に関してはこと細やかに行われることが多いが、「アニメや映像作品においては細かい考証よりも作品としての爽快感に重きを置いたほうがいい」という考えもあり、あえて矛盾する設定でも面白さ優先で了承する考証担当も多い。


設定協力

各種設定の提供や監修協力をしているスタッフ。主に原作に関連するスタッフが協力している場合が多い。また、特定分野に精通する専門のクリエイターが一部協力として参加する場合もある。


【アニメーター】

作画監督

キャラクターデザインを基にレイアウトや原画に修正を加えて、全体の構図やキャラクターの芝居、絵柄などがおかしくないか確認・監修する仕事。

演出と事前に打ち合わせを行ない、アニメーターの描いたレイアウトや原画を監修・修正する。基本的にはレイアウトも原画も演出がチェックした次の段階で確認する。演出が演技メインの監修なら、作監は絵柄・構図メインの監修を行っており、演出が修正指示した演技のニュアンスも読み取りながら最終的な絵にまとめ上げる。

作監修で勘違いされがちなのが「キャラクターデザイン設定に似せればいいのか」という考え。これも作監の仕事ではあるのだが、レイアウトや原画をただ綺麗にしただけのものでは意味がなく、頭身やポーズ、振付、パースなどの構図を設定や絵コンテの意図に合わせて整えるのが重要な仕事である。演出が演技面の監修をした後でも、その素材の状態が悪い場合には作監の判断でLO・ラフ原や原画のリテイクを出すことも可能であり、こと作画の管理においてはその回の演出よりも重い責任を持つとも言われる(ただし、スケジュールの無い現場では制作部門からリテイクストップがかかり作監が代わりに修正することも多い。また、リテイク出さなくて良い場合も当然あり、さらに言えば”後出し”で思いついた内容をリテイクとして指示を出すのは論外)。

ちなみにこの修正、正確に言えば「後の工程(二原担当など)への指示出し」は凄く上手いアニメーターに対しても行われるため、修正されること=下手ということではなく、あくまで作品の世界観を統一するための調整である(本当に悪いから直すことも多いが)。

作品によって『メカニック作画監督』『エフェクト作画監督』『アクション作画監督』『特技監督』など、様々な作画監督がいる。例として、アクション作画監督の場合、絵コンテの段階からアクション設計に関わったり、他者のアクションレイアウトやコンテそのものを作り替える場合もあるとか(単純に特定話数で良いアクションをしてくれた人を後からこの職種で表記する場合もある)。ちなみに『メカ作監』はロボット系列の専門作監だけが仕事というわけでもなく、銃から通信機器まで、メカメカしいものもひとまとめに担当する場合が多いとか。

必ずしも経験を積んだアニメーターを採用しているわけではなく、スケジュールが足りない場合には未経験のアニメーターも含め大量に作画監督を投入することもある。多いときは話数単体で15~30人の時も。それだけの人数を投入しているとやはりというか品質が安定してないことも多い(切迫した現場の場合、そもそも誰とも知らないフリーランスに撒く場合も多いので)。また、レイアウト担当者にそのまま自身の担当カットへの作画監督作業をさせて「作画監督」とクレジットする現場もあるらしい。

ちなみに、例外として『活撃 刀剣乱舞』のように1キャラクターに1人の選任作画監督が付く場合もあり、人数が多いから現場が窮地とは必ずしも限らない。近年では線の量も多く、現場に余裕があってもあえて大人数に作監作業を任せて個人個人の負担を軽減させる選択を取る現場もあるらしい(その代わり一人当たりの単価は減るが)。

また、原画マンの中には作監をやりたくないという方もいて、一から構図を作るレイアウトなどをメインに請ける方も多い。なかには「作監の作業ばかりしていると原画が描けなくなる」と話している方もいる。なお、作画監督・原画・二原・動検・動画などはあくまでアニメーションの各工程の一つのため、その工程への優劣というのは本来なく、それぞれの工程への向き不向きは当然ある。原画は苦手だけど作監作業が得意な方もいれば、第二原画や動画に特化した技術を持つアニメーターもいる。ただし、単価には差がある(実は作監のほうが原画マンより作業量に対する単価が少ない場合も)。

作画監督はLOや原画にて構図に問題があったり動きが足らない場合など明らかに不備がある素材にはLO/原画担当者に『リテイク』を出しして修正指示をする仕事でもある。これは原画担当者への教育にもなるため、なるべく担当者自身に問題点を理解させて修正させるのが望ましい。しかし、近年ではこれらの修正を全て作監にやらせる現場も多い(それなのに単価も作監作業分のみで据え置きの場合が多い)。そのため後進が育たず作監の負担だけが増える事態が近年多いらしい。ちなみに、作画監督が誰かしらの素材(LO担当や作監、総作監の場合も)に対して自らリテイクする場合には『リテイク作画監督』の表記がされた事例もある。動画や仕上げ、制作進行がリテイク作業を担当・管理する場合には『リテイク担当』『リテイク管理』がクレジットに置かれる場合もある。ちなみに、微修正程度であればリテイクは出すのはむしろ負担になるためださないとか。また、その他にも作打ちでは出なかった発注指示(やはりこういう感じにしてほしい、など)を後出しでLO担当者にリテイクという形で戻して直させるのはご法度である(この場合は演出か制作側の問題でもある)。


総作画監督

作画監督の修正したレイアウト・原画をさらに修正する役割。作品によっては『チーフ作画監督』『チーフアニメーター』と表記されることも。

キャラクターデザインが兼任することが多いが、それとは別に数人の総作監を配置する作品も多い。1作品に約10名の総作監が存在した作品もあるが、近年では1作品に3~5人の総作監が置かれ話数ごとにローテーションしている作品が増えている。単独総作監は徐々に希少なものに変わりつつあるとも言われる。

基本的には作画監督が構図を整理したカットをさらに整える(絵柄を統一する)作業となるが、近年の作監の品質低下に伴い総作監が作監の役割を担うことが多くなっている。

作画監督と総作画監督の違いとしては、作画監督が『素材(LO・原図・原画)が演出意図に正しく沿っており、なおかつ後工程に渡す際に不備がないかを確認・修正する役割』なのに対し、総作画監督は『作画監督のチェック済み素材を確認し、表情やニュアンスを整える役割』となる。チェックの細かさは作画監督のほうが多くなるが(動きや芝居、頭身、パースなど)、総作画監督はキャラクターデザインに沿ったデザインに統一する役割があるほかチェックするカットの量も作画監督より多くなる(以上のことから、キャラクターデザイナーが担当するのが理想的ではある)。

キャラクターデザイナーがデザインのみ参加して現場から離れたり、『リコリス・リコイル』のようにアニメーター以外のクリエイターがデザインを務めた場合には、総作監が実質の現場のデザインの指標になる場合もある

過去には『総総作画監督』と呼ばれる、総作画監督の修正をさらに修正する仕事が置かれた作品が存在する。


作画監督補佐

作画監督の補佐を務める。作画監督が全ての担当カットを修正するのに時間を要する場合、いくつかのカットを事前にある程度修正したうえで作画監督に渡すことで、作監の負担を軽減させる役割を持つ。

ただし、上記の内容はスタジオや作品によって異なる。後述する原画作画監督やTP修正をこの名称で呼ぶ作品もあれば、カットやパート単位ではなく、作画監督が監修しきれなかった数枚のみ作画監督作業をするケース、リテイクを担当者に返せない場合に代わりにリテイク作業を任せたアニメーターが補佐でクレジットされるケースも

昔は『原画作画監督』の役割が作監補佐の仕事であったが、現在は上記のように役割は様々。


レイアウト作画監督

レイアウト(原図・ラフ原画)メインの作画監督。『レイアウト作監』と表記されることも。原画の工程である『レイアウト⇒原画』の作業のうちレイアウトの監修のみを担当する。

作品によっては『レイアウト作画監督補佐』が表記されることも。


原画作画監督

レイアウト・原画作業のうち、原画のみを監修する。『原画作監』と表記されることも。

作品によっては『原画作画監督補佐』が表記されることも。


レイアウト監修 / レイアウトチェッカー

『LO監修』『LOチェッカー』。レイアウト専門で監修するアニメーター。レイアウト作画監督と同じ意味の場合もあれば別に明記されることも多く、レイアウト作監が話数ごとに異なる場合があったとしても、この職種は全話数を通して参加している場合が多い。『レイアウト』と表記される場合もあり、その場合はレイアウトを実際に手掛けている場合が多い。

作監のような絵柄の統一と違い、主に構図面の監修や指導を主としている。


原画

動きの鍵となる各カットのポーズを描くアニメーター。アニメーションの花形的職種。LO(レイアウト)のみ担当する場合は『第一原画』で表記する場合も(LOのみ担当の場合でも『原画』で一括りにされる場合がほとんど)。

絵コンテに描かれたカットは基本的に簡略化されているため、演出と担当話数参加のアニメーターが集まり「作打ち」と呼ばれる打ち合わせを行う。そこで指示された担当カットの情報や絵コンテに描かれた担当するカットの画から情報を読み取り、各種設定も元にしてレイアウトを手掛ける。『キャラクターを演技させる』『カット内容に合わせた構図を作る』技術が必要。

原画の工程は、キャラクターデザイン・美術設定・プロップ設定などをもとにレイアウト(キャラの配置、動きの指示、美術のもとになる背景原図)とラフ原画(ラフな絵で描かれた動き)を作成。演出、作画監督、総作画監督(場合によっては監督)の監修を受けた後に、戻ってきたカットを清書。再び、演出、作画監督、総作画監督(場合によっては監督)の監修を受けて完成する。

デジタル原画』『デジタル作画』と表記される場合は、デジタルペイントで作画をしている(表記がなくてもデジタルを使用している作品は多い)。また、『レイアウト』と表記される場合は、担当カットのレイアウトのみを手掛けている。

レイアウト(LO)は背景原図、パース、頭身やポーズをしっかり描いておけば仮に顔がキャラクター設定から外れても素材としては通用するらしい(ただし、後工程の負担を減らす意味でもキャラ似せの技術は当然必要)。あわせて、ラフ原画に関しても頭身やパースなどは絶対合わせる必要がある。逆にキャラクター設定に合わせられる人でもパースや頭身、演技がダメならいくら描き込んでも素材としては全く使えない。上記をしっかりできてれば仮に簡略的な画でも通じるとか(ただし、二原撒きにより担当者にLOが戻せない場合は多少でも描き込まないと二原担当者や演出・作画監督への負担が増すケースもある)。また、あくまでLO段階では演出や作監に「この方針で良いのか?」とお伺いを立てる計画案でもあるので、原画同然に描き込み過ぎると、どれだけ上手くても作品や演出の方向性に合わせて演出・作監修正が入るケースの方が多いので、描き込み過ぎは描き込み過ぎで無駄な作業が増えるだけのこともある。

LOには後述する「3DLO」も存在し、そちらにもメリットデメリットがある。

タイムシートと呼ばれる芝居やカメラワークなどの詳細情報を後行程へと伝達するために使用する表の作成も行う。ここに関する専門知識が制作においても特に大事だが、近年ではこの工程を学ばずにアニメーターとなる人も増えており、現場で事故が絶えないとも言われる。

中割り参考(中参考、参考)と呼ばれるものも作成することが多い。これは、動画工程で担当者が中割り作業をする際に動きの参考となる画のことであり、輪郭のみなどラフな画で中割部分の参考画を原画マンが描いている。動画マンはこの参考部分を清書したうえで顔のパーツや衣服等細部を描き足すことでし中割を完成させる(そこから動画マンがさらに中割を足すこともある)。

原画には、原画の時点で原画マンが動画に該当する中割部分の動きまで「原画工程」で描く『全原画』『フル原画』というカットもある。ただし、全原画をする場合には「担当者が二原まで自分でやること」「できない場合、二原担当者や作監の負担を減らすようLOラフ原時点である程度作り込むこと」が前提となる。本来、動画マンに任せるべき中割部分も原画として担当すると、最終的に動画が本来担当する部分まで二原でやる必要が出てくる。また、それをさらに原画作監が全て見る必要があるため、もしLOラフ原時点で顔のあわせ等が不十分だった場合、二原担当者が余程合わせが上手くないと原画作監の負担が非常に増える。そのため、仮に行う場合は作画監督、第二原画担当者の負担を極力減らす努力が必要。もちろん、二原まで自身でやるのが一番良いと言われる。

上記のように、『全原画』に関しては他の担当者の負担が増すため、「中割や動検の作る中割参考で済む内容なら無駄に原画は描かない」ことが大事と言われている。一方、全原画のメリットとしては外注により動画担当者が誰かもわからない場合がほとんどの中で、想定できない動画マンの技量不足を補える点や原画担当者が動きの部分まで作り込める点。

某作品ではLO(第一原画)を『作画』、二原動画をまとめて『原動画』でクレジットしていた。


メインアニメーター

作中の重要カットを中心に手掛けるアニメーター。この表記がある場合、作品の中でも特に話題となるカットに関してはメインアニメーターが担当していることが多い。『 キーアニメーター』『エースアニメーター』『チーフアニメーター』『作画チーフ』など、作品によって表記は様々である(ちなみに原画マンのことを英語で『キーアニメーター / key animator』と呼ぶため、この表記は海外だと誤解を受ける場合も)。

ある特定のカットに特化したアニメーターのことを同じ意味合いで表記することもある。アクションに特化したカットを担当する『アクションアニメーター』、剣戟に特化したカットを担当する『剣戟アニメーター』、楽器によるライブシーンを担当する『ライブアニメーター』、特定のキャラクターに特化した『○○専属アニメーター』など、様々なメインアニメーター表記がある。

この作業は主要カットのすべてを原画工程までやるわけではなく、同時並行で作業している多くの話数に参加するためにLO・ラフ原のみを多く手掛ける場合も。さらには、棒人間的な大まかなラフとタイムシートのみを大量に手掛け、それを別のアニメーターに清書させてLOとする手法も採用されている(後述する「第二原画」の項目で解説している【0.5原】と同じ役割)。

あるアニメーターさんは「難易度の高いカットを専門とする、コンテと原画(二原担当者)をつなぐ原画用コンテの担当者のようなもの」とも例えている。この難易度とは、決して派手なシーンばかりではなく、一見地味だったりカット内に登場する人物が多い場合など、若手では事故を起こしそうな高カロリーカットにもあてはまる。

ちなみに、メインアニメーターで表記されるスタッフはそのスタジオに所属するエースアニメーターのこともあれば、作品専属で契約(拘束)しているアニメーターのこともある(フリーランスが大多数のアニメ業界では基本的に後者の場合が多い)。

また、数カットしか仕事を引き受けていないアニメーターが、その担当カットが評価されたことで放送までにメインアニメーターとして表記が変更されることになる事例もあるとか(これは他職種でも起こることがあるとか)。


第二原画

レイアウトとラフ原まで完成した原画(第一原画)の清書のみを担当する。レイアウトを担当したアニメーターに演出と作監が監修したカットがスケジュールの都合上戻せない場合は別のアニメーターにカットが回される。それを第二原画と呼ぶ。作品によって『原画補佐』とも表記されることもある。

清書とはいうが、レイアウトや作画監督・演出修正から指示や意図を読み取り、画を完成させる技術が必要。また、動画工程への橋渡しでもあるため、動画へ適切に渡せるだけの素材を作る知識もいる(なので本来は動画工程、できればV編時のリテイク作業も経験する動画検査工程を経験したスタッフが担うのが望ましいが、近年は必ずしもアニメーター経験者を二原として雇えない現場も出てきている)。また、「使える線」を引けないと素材として使い物にならない。この使える線は見比べるとよくわかるらしい。LO素材や作画監督の修正をただなぞるだけではなく、演出意図、LOや作監の意図を拾って「生きた線」を引かないといけない。この線も作品やカットによって種類が異なる。

LO担当者のスケジュールがないケースやLO担当者にどんどんLOを手掛けてもらうために二原工程はやらせないケース、演出や作監で素材が止まってしまいLO担当者に戻す時間が無くなったケースなど、とにかくLO担当者に修正素材を戻す時間がない場合には他のアニメーターに二原を撒く場合が多い。それ以外にも、若手の育成を目的に余裕がある場合でも原画昇格前の動画スタッフに上手いLOの第二原画を担当させることもある(逆に監督や作監級のベテランが第二原画を担当していることもあるが)。

作監や演出、監督が修正指示を出してくれることもあり、新人の原画マンはなるべく、担当したカットのレイアウト作成から清書までの工程をすべて担当したほうが成長できる。修正や指示が上手い人に見てもらえるなら、これが一番確実な育成方法という意見もある。他の人のLOが修正されてるのを見るのも参考にはなるが、「自分が描いたLOがなぜ修正されているのか」を知ることは、そこで得られるフィードバックの具体性が大きく異なってくる。とくに、LOが他のアニメーターに撒かれた場合、そのスタジオの社員・所属でもない限りは放映までその詳細が分からないままなので、成長も何もないのである。

動画マンが原画に昇格するためのステップともいわれている。近年は作画監督がレイアウトの作画監督作業時にそのまま該当LOを直接原画素材にする『直原』を行う場合も多い。

ちなみに、よく言われる『原画単価』は正確には『レイアウト料+第二原画料』となっており、どちらかの工程のみしか担当できない場合は片方の報酬しかもらえない(レイアウト担当のほうが多くもらえる)。

また、メインアニメーターや一人原画(LOのみ)を手掛けたLO担当者が、かなりラフな画(厳密には服も顔の表情もほぼなし)を大量にあげたうえで、二原をその担当者に戻せなかった場合は、ほかのアニメーターに二原を大量に撒く or 作画監督が修正・直原して表情含めしっかり描き込む場合もあるらしい。この場合もLO担当者、二原や作監担当者が貰う単価は変わらないため、その負担から「せめて二原を撒く前にLO担当者にリテイクを出してもう少し描き込ませてからにしてくれ」という意見も聞く。また、LOにおける不備の修正を二原担当者が単価据え置きで求められることも多いとか

ちなみに、昔より原画には『0原』『1.5原』『3原』と、さらに工程を細分化した状態が存在する現場があったらしい。大野勉氏の話を参照すると以下の感じ。

第0原画(0.5原)
 
タイムシートの作成と大ラフ(かなり大まかなアタリ線程度)
第1原画
 第0原画を基にLO/ラフ原/原図を作成
第1.5原画
 LO/ラフ原/原図が素材として使えない場合や演出・LO作監からリテイクが出たのに元のLO担当者が対応できない場合に、代わりにリテイクを担当する役割。使えない素材の底上げに関してはLO作監入れができる程度に修正。
第2原画
 1原素材や演出・LO作監修正を基に原画を完成させる
第3原画
 第2原画が素材として使えない場合(LO作監修正を拾えてない)、そのリテイク対応をする。素材の底上げに関しては原画作監入れができる程度に修正。「2.5原」と呼ぶ方も。

こんな感じで、1.5原や3原はリテイク要員のことを指す。ただし、あくまで現場でそういわれていただけのものであったが、近年ではいよいよクレジットにも表記されるようになっており、業界の先行きが危ぶまれている。

なお、スタジオによっては昔からこの仕組みで動いているスタジオも存在している様子であり、上手いアニメーターに棒人間的な大ラフのLOとタイムシートを0.5原として作成してもらい、 それを若手や日雇いのアニメーターに清書させてLO(1原)とする方法により、不備の出やすいタイムシートやキャラクターの動き、パースや頭身のエラーを少なくしているとか。一見、工数が増えるようにも見えるが、最終的な演出・作監負担を減らすことも可能となる(ただし、結局、1原が溶けていたら負担自体はそこまで変わらないという指摘も多い)。この手法は特に、メインアニメーターやアクションアニメーターに大量に主要カットを担当してもらうために採用されることが多いらしい。


動画検査

キャラクターの動きが不自然ではないか、トレースした線に歪みや描き忘れ(抜け)がないか等、動画の仕上がりをチェック・修正する動画の監督的存在。スタジオによっては『動画チェック』『動画監督』と表記されることもある。デジタル動画の検査の場合は『デジタル動画検査』と別に置かれることもある。

最終的に映像に出るのは原画ではなく動画による線のため、動画マンの技術によっては良い原画も台無しにしてしまう可能性がある。そのため動画検査の役割は重要であり、動画歴の長い腕利きアニメーターが動画検査を担当することも多い。動画検査を補佐する『動画検査補佐』という職種もある。また、アニメスタジオ・C2Cでは『総動画監修』という役割が置かれており、動画検査を統括している。

動画検査の仕事としては、初めに「動画撒き前チェック」(前検、前動検とも)と呼ばれる工程がある。これは、動画検査が原画を全カットチェックしたうえで芝居の注意点などの作業指示やタイムシート&原画素材の不備がないかのチェック、トレス線の見本作成や各カットの中割参考を入れてから動画を撒く作業(所謂、動画マンと意思共有するための「指示書作成」)であり、この作業によって動画マンから戻ってきたカットを検査した際のリテイク数を少なくすることが出来る

「動検にとっての勝負は撒き前にどれだけ参考(前検)を入れられるか(リテイクを減らせるか)」にあるという方もいるぐらい重要な工程。近年は海外へ動画を撒くことも多いため、文字のやり取りが難しい分、中割参考として絵を入れるのが一番確実ともいわれる。ただし、近年はスケジュールが短いためこの工程が機能していない現場も多いという(そのため、動検がただの修正・リテイク要因になっている場合も。ちなみに、前検無しで撒いた場合には全てのカットが崩壊することもあるという)。

そのほかにも、動きを作ろうとすると動画枚数は多くなり、そのぶん描き忘れや動きの整合性が取れない素材も出てくるため、仕上げ作業に回す前に各カットの動画に不備がないか1枚1枚チェックしていき、担当動画マンにリテイクを出したり自身で描き直す作業もある。

原画マンの描いたカットの意図やニュアンスを動画マンがしっかり拾って線を引けているか、指示した通りの演技を描いているかなどのチェックをするため、動画の品質維持の最後の要ともいえる。また、素材不備がある場合、担当原画マンや演出、作画監督へのリテイクを出せる立場でもある(ただし、スケジュールの都合上制作側が許可しない場合もあるとか)。

上述の理由から、近年では質の高い動画を上げるために動画マン、動画検査の育成に力を入れるスタジオもある。また、動画検査はビデオ編集時のリテイク作業にも深く関わり、原画マンになる前に経験しておくことが推奨される職種でもある。

しかし、近年では動画検査を置いていない現場も多い。理由としては人材不足の面が大きく、動画検査が所属していなかったり確保できない場合や所属スタッフの退社による人員不足などが多いとのこと。また、制作スケジュール短縮のために動画検査の工程を制作側が軽視して飛ばす場合もあるという。しかし、この場合、リテイク作業の負担の多くは仕上げ検査などの後工程に回るという。作監無しより動検無しのほうが現場として崩壊するとも

また、スタジオが動画検査を軽視して工程を飛ばす場合、そのスタジオの動画部門の育成が行き届いていなかったり社内作画部門が機能していないケースも多く、素材不備に誰も気が付かない場合もあるとか。この被害を受けるのは基本的に外注している作監や演出、後工程の仕上げ検査や撮影部門などである。

最近では国内の動画マン不足や単価高騰により、「海外動仕発注」という動画・仕上げ工程をまとめて海外のグロススタジオに発注する工程がほぼすべてのアニメ作品で行われている。この工程は動仕工程をまとめて発注する関係上、動画と仕上げの工程の間で元請スタジオが動検チェックを行えない。また、基本的に短いスケジュールの中で撒かれるため、発注前チェックも満足に行えないこともある。その場合には、確実にチェックしておかないと後の工程で大幅なリテイクを必要としてしまうような難易度の高いカット素材のみ前検を行い、それ以外の素材は全て「前チェックスルー」という形で確認せず対応することも多い。

このような対応を行う関係上、海外から戻ってきた素材はほぼ全て仕上げ検査担当者が動検が見る部分もチェックする場合もあり、仕上げ検査担当者が動検チェックも行うという過重労働になる場合もある。その場合も単価が上がるケースは少ないともいわれている(動検が海外戻りの素材にしっかりとチェックを入れるスタジオもある)。


動画

原画の線をトレース用紙にトレースして(写して)線を整えた後、原画と原画の間をつなぐ中割りと呼ばれる絵をタイムシートなどの指示書をもとに描く

トレースとは原画の線をトレース用紙に描き写し、整った1本の線で構成される画にする作業。原画の線をそのまま動かしてしまうと、原画マンによって線はバラバラのため荒い映像になってしまう。そのため、動画マンのトレース作業が必要となる。近年では最後に色を塗る作業は完全デジタルのため、色を塗る際に別の場所に色がはみ出さないようにするためにも重要な作業である。

動画の仕事はトレースや中割の技術以外にも、先輩アニメーターによる原画やタイムシートを見ることで「どういう原画が良い素材なのか(動画作業がしやすいのか)」「タイムシートをどう付ければ後工程もスムーズにいくのか」「実際に自分が原画マンになった際に自身のカットが動画工程でどのように中割りされるのか予測できる(予測できると原画枚数を効率よく抑えられる)」「どのような原画を描けば動画以降の工程でエラーが起きないか」など前工程の要素を学ぶことができる。また、振り向きや靡きなどの中割技術を通して動きの基礎を多く学ぶ場でもある。そのため、アニメーターに必要な知識や技術を学ぶことができる大事な工程でもある。これらはアニメーターに必ず必要な技術であり絶対的に求められる。

描く枚数はカットによってバラバラで、中には原画の時点で原画マンが動きまで描く『全原画』『フル原画』というカットもある(その場合もトレースは動画の仕事である)。

『デジタル動画』『デジタル動仕』と表記される場合には、デジタルペイントによって動画作業、又は動画と仕上げ作業を一緒に行った場合に記載される(表記がなくてもデジタルで作業している場合はある)。近年では動画マンの賃金を少しでも上げるためにデジタルで仕上げの作業までを全て動画マンに行わせるスタジオもある(この場合、TP修正も一緒に行っている場合が多い。なお、単価が上がるとは言うが作業量も増えるので、そこまで割に合っていない現場もあるとか)。ただし、仕上げ関係のスタッフによる監修・指導体制が整っていない環境で行う場合は素材の劣化を招くこともある。

動画で技術を学んだ後、原画に進むパターンがほとんどだが、動画という作業にこだわりを持つ、または相性が良いアニメーターは原画に進まず動画メインで活動する場合もある。また、近年では動画の経験を経ずに原画マンとして活動をするアニメーターも登場している(知識を学ぶ意味でも経験しておくべき職種ではある。実際、動画の知識が不足していることで他工程に悪い影響を及ぼす場合もあるとか)。

ちなみに、動画(中割)=『原画と原画の間を繋いで動きを作る』という内容ではあるが、動きを作るために画を崩す所謂『おばけ』の表現も動画の工程と勘違いされる場合が多い。この部分は原画の工程の話であり、ネット上でよく議論される「崩れている絵は動画の作業」という認識は誤り。


【彩色関連】

色彩設計

作品全体の色彩を決定する色の最高責任者。メインキャラクターから武器、小物までアニメーターの描く画の色彩を決定し色指定表を作成する。

その役割から同じく色の領域を担当する美術スタッフや光の領域を担当する撮影スタッフとの関わりが強い。色を決める際には美術監督の描く美術ボードの色を参照にしていることが多い。

色は『ノーマル色(標準)』以外にも『昼色』『夕景色』『夜色』『室内』『ハイコン(ハイコントラスト、強い光が当たり明暗の差が大きい部分)』などを美術ボードを参照して作り上げている。

色彩設計を補佐する『色彩設計補佐』が置かれることもある。


色指定

各話数の色の責任者。色彩設計の作成した色データをもとに担当話数のカットそれぞれの色を指定していく。各話ごとに登場する小物系の色は色指定が決めることも多いとか。また、塗りの際の注意事項を作るのも色指定の仕事である。

1話に300カットの映像(動画作業まで完了済み)の素材があるとすれば、各カットごとに「どの色をどの部分にどのように塗るのか」という指示を色彩設計が作成した色指定表を基に全カットで行う。その指示を基に仕上げ担当者が色を塗っていく。

美術ボードを参照して『昼色』『夜色』など美術に合わせてカットごとに色を変えていく作業は『色変え』と言われる。リアリティ路線の作品などは少し影のある部屋に入っただけで色を変更するため、多い作品では1話あたり20回以上の色変えがある作品もある。カットごとに美術に合わせてどんどん色を変える場合は、一度もノーマル色を使わずに終わる作品もある

僅かに登場するだけの小物やキャラクターなどは、色彩設計の代わりに色を決める役割もある。すでに色が決まっているキャラクターの場合でも、美術に合わせて場面ごとに変わる色の指定を行う(基本的には色彩設計者が昼色など全て設定をしており、美術に合わせた一部調整個所を決めることが多いとか)。


仕上げ検査

色が色指定の指示や注意事項通りに塗られているか、動画のトレース線は問題ないかを確認して、場合によってはリテイク指示や自ら修正を行う作業。色の作画監督的存在。

素材を動かして確認しながら色パカ(色を付け間違えにより、動いた際に色がパカパカと点滅して見える現象)や線パカ(作画のミスで線が抜けていた影響で動くと点滅して見える現象)があればリテイク指示や後述するTP修正を行う。

動画検査の項目でも述べた通り、動画検査を置けない現場や動検が機能していない現場においては仕上げ検査が動検チェックと同様の仕事内容を並行して行う現場も多い。また、「原動仕撒き」という原画(二原のみでLOは国内の場合もある)・動画・仕上げの工程をすべてグロススタジオや海外スタジオに発注する場合、海外に撒かれた素材は作監・動検のチェックが一切入らずに戻ってくることが多く、その場合も仕上げ検査が色チェック以外の作画修正など、細かい対応もこなしていく必要が出てくる

上記のように、仕上げ検査が機能しているおかげで素材の品質が維持できている現場も多い(なお、元から酷い素材は流石に対応不可のため原画段階からリテイクを出す場合も)。なお、他工程が機能していない場合の尻拭いを仕上げ検査がしても単価は上がらないことが多いとか。


TP修正

T.P.=トレス・ペイントのこと。『デジタル修正』とも。簡単に言えば仕上げ工程で着色済みの素材に不備を発見した際、仕上げ職が線も含めデジタル上で修正してから撮影に渡す作業。また、ビデオ編集時に「リテイク」が出た場合は動画検査担当者以外に仕上げ職が修正をする場合も多く、その場合もこの表記が使用される。

この「トレス」は『色トレス』のこと。影やハイライト、模様を塗る際に他の線と同じ黒で線を描いてしまうと、これらの境界線の見分けができない。そのため、青や赤で塗り分け線を引く。これを色トレスと言い、明るい部分は赤の線で、暗い影の部分は青い線で引く場合が多いとか。

仕上げ検査の項で前述したように、素材を動かして確認しながら色パカ(色を付け間違えにより、動いた際に色がパカパカと点滅して見える現象)や線パカ(作画のミスで線が抜けていた影響で動くと点滅して見える現象)があればリテイク指示や後述するTP修正を行う。ただし、スタジオによっては仕上げ担当者が在籍せず、デジタル動画マンがこの工程を担当することが多い。この際、動画マンが仕上げ関連に疎かった場合は素材の劣化を招くこともあるとか。

近年はクレジットでも『TP修正』と表記が載る場合が増えている。


仕上げ

キャラクターや作画で描かれた小物(美術工程では描かれなかった小物という意味)などの色を塗る作業。『彩色』『ペイント』『デジタル彩色』『デジタル仕上げ』『デジタルペイント』と表記されることも。

ペイント作業のほか、動画のトレース線の修正(デジタルペイントや撮影でエラーが出ないように線を修正する)、色トレスの確認も事前に行う。今はデジタルによるペイントが主流、というかほとんど。


特殊効果

エアブラシやグラデーションなどの塗りで、絵に透明感や立体感、質感を出す仕事。『特効』『スペシャルエフェクト / Special Effects』と表記されることも。イラストのような塗りになっている場面や艶のあるキャラクター、料理、小物の場面は特殊効果の力が大きい。キャラクターが対象の場合には『キャラクターレタッチ』と表記する作品もある。

以前は仕上げの仕事の範囲であったが、近年はブラシ作業やグラデーション処理は撮影の仕事にもなっている(というより両部門が連携している場合も多い)。撮影が【画面全体の空間表現】に関わる特殊効果をするとしたら、仕上げは【キャラクターや小物に直接描き込んで質感を生み出す】ことを主としている(撮影の場合は単に「撮処理」と呼ばれることも)。


カラースクリプト

色彩演出』とも呼ばれ、色と光でシーンを設計する職種。色のシナリオとも言われる。作画アニメの世界では2010年後半以降に飛躍的に注目されるようになった近年のアニメーション作品で重要度が増している職種の一つ。

各シーンやカットにおける配色やライティング(光)を作画や美術制作の前段階で決める作業。監督、演出、美術監督、色彩設計の担当者と事前に全体や各カットの配色イメージやライティングのバランスをすり合わせながら共有することで、完成画面の色味や明暗、それによるキャラクターの心情、視聴者がその配色を見て受け取るだろう心情を事前に設計することが可能になる。その為、色彩表現の精度が飛躍的に向上する。

コンセプトアート作成後や絵コンテ完成後、美術ボード作成前に行われることが多く、絵コンテにスクリプターが色をのせて色付きの絵コンテを作成するパターンをよく見かける。

コンセプトアートや美術ボードに近いところもあるが、こちらは主に各パート・カット全体の『色や光の演出的な指標』に特化しており、より具体的な指示が可能となる。

ただし、この職種を置くということは事前準備や作画・仕上げ・撮影工程への負担などが通常よりはるかに増えることを指すため、どの作品でもできる手法ではない。また、カラースクリプトを担当するスクリプターは色彩感覚以外にも視覚的な演出意図の具現化や作画、撮影処理への知識など、通常よりもさらに豊富な知識を問われる。

近年は色彩設計だけでなく、アニメーターや演出家がこの職種を兼任することが多い。

ちなみに、カラースクリプトはCGアニメーションの世界では主流の職種であり、ピクサー作品が特に有名。


【美術関連】

美術監督

背景美術の統括・管理を行う。美術セクションの責任者であり作品の世界観・雰囲気・色彩を決める職種。美術スタッフのスタッフィング・統括のほか、美術スタッフの描いた背景の監修・修正も行っている。話数ごとに美術監督が代わる場合は『美術話数担当』『美術担当』と表記されることもある(美術監督が全話数で一貫していても、各話数ごとに美術責任者を置いた場合にこの表記でクレジットされることもある)。 

重要な仕事として美術設定や各種設定、時には絵コンテなどを基に、監督のイメージする色味や雰囲気を考察しながら背景のもとになる『美術ボード』を手がける役割がある。『美術ボード』は色の指標であり、作中の時間帯に合わせて同じ場所でも色味を変えながら何枚もボードを描き雰囲気を決めていく。この美術ボードが背景画を手掛ける際の見本にもなるほか、色彩設計や色指定の指標にもなる。美術監督とは別に『美術ボード』専門のスタッフがクレジットされることもある。

美術ボードは頻繁に登場する場所や重要なカットを中心に手掛けるが、物語が進むにつれて追加で美術ボードを制作することも多い。時には美術ボードがそのまま背景美術として使われることケースも多々ある。

新人の美術監督が参加する作品や有名な美術スタッフを監修役に呼ぶ場合に『美術監修』と呼ばれる美術ボードを監修する役割が置かれることもある。


美術監督補佐

美術監督の補佐をするスタッフ。『美術担当』と記載される場合もあれば、補佐と担当は別で記載されるケースもある。話数ごとの補佐を『話数担当』で記載するケースも。

美術監督の指示の元で原図チェック、スタッフへの指示出しや仕事の振り分け、美術素材上りチェック・修正等の管理業務のほか、話数ごとの美術ボードの一部を制作する。作成した美術ボードは美術監督が監修する。

話数担当の場合は話数ごとの美術監督、美術監督補佐の場合は美術監督のサポートを話数関係なく行っていることが多い。


美術設定

作品の舞台設定を作るスタッフ。『美術デザイン』とも。建物から街の全景、草原、海など背景美術の土台となる設定全般を作る。美術関連の設定画の中で一番「設計図」らしい設計図と言えばコレになる。

制作初期から関わり、プロットや構成段階で決められた設定、コンセプトアート、制作が用意した各種資料、監督らの要望を基に、物語に頻繁に登場する主要な場所を細かいところまで設計する(どのような場面を描くことになっても対応できるように)。これをもとに美術ボードや絵コンテが制作されレイアウト・原画の制作などにも活用される。各話数の脚本・絵コンテに合わせて追加で設定を作る場合も。建築関連の知識も求められる。

必ずしも美術監督や美術スタッフが設定を担当するわけではなく、原画マンとしても参加するアニメーターや演出家、専門のイラストレーターなどが担当しているパターンも多い。


美術ボード

美術設定や各種設定、絵コンテなどを基に、監督のイメージする色味や雰囲気を考察しながら背景のもとになる『美術ボード』を手がける役割

『美術ボード』は色の指標であり、作中の時間帯に合わせて同じ場所でも色味を変えながら何枚もボードを描き雰囲気を決めていく。この美術ボードが背景画を手掛ける際の見本にもなるほか、色彩設計や色指定の指標にもなる。美術ボードは頻繁に登場する場所や重要なカットを中心に手掛けるが、物語が進むにつれて追加で美術ボードを制作することも多い。時には美術ボードがそのまま背景美術として使われることも多い

本来は美術監督が手掛けるが、専門の『美術ボード』スタッフが別に置かれることもある。また、美術ボードの制作に協力したスタッフは『美術ボード協力』とクレジットされることもある。


3Dレイアウト /  3DLO(美術)

絵コンテをもとに3DCGを駆使してレイアウトを制作する。美術スタッフ関連でクレジットされる場合は背景美術専門の3DLOとなる。

原画マンのレイアウトにも流用されるが、メインとしては美術スタッフ向けの3D美術モデルとなる。美術向けの3DLOを使用することは遠近感やレイアウトのほか、光や影などを含めたライティングなどの認識を全体で細かく統一することができる。これにより、スタッフ全員が遠近感やライティング、レイアウトの認識を統一できるほか、ある程度の画面設計がすでに終わっているため美術スタッフが背景画を描く際の作業時間を短縮することが可能となる

3DLOはCGクリエイターが作成する場合もあるが、美術スタジオに専任のスタッフが所属している場合や、美術スタッフ自身が作成する場合もある。


背景美術

コンセプトアート・美術設定・美術ボード・3DLOなどを参考にレイアウト(背景原図)の指示のもと背景を描く『美術』『背景』とクレジットされることもある。

近年はデジタルペイントが主流でありスタジオによっては完全デジタル化をしている美術スタジオも存在するが、ポスターカラーや水彩画による手描きの背景が採用されることも多い。また、CG背景の監修やCGなどに貼り込む2D素材を描くこともあり、時にはCGによる美術モデルを作成することもある。CGによる背景の場合は『CG背景』とクレジットされる。


3DBG / 3D背景

3DCGによる背景美術(3D Back Ground)。『CG背景』とクレジットされることも。CGスタッフが作成することも多いが、近年は美術スタジオにCG専門の美術アーティストが所属して作成することも増えている。


【3DCGI関連】

3DCG監督

CGアニメーターを統括する責任者。『CGディレクター』『3D監督』『CG監督』と表記されることも。

CGのデザイン、モデリング、リグ設計、アニメーションなど、CG業務の全てを統括している。なお、フルCGアニメだとTVアニメ作品にもよるが、各話数ごとに担当が変わっている。この場合のCGディレクターや『CGアニメーションディレクター』はその話数の作画監督・動画検査的立ち位置となっている。

3DCG監督のサポートとして『3DCG監督補佐』『サブCGディレクター』などの職種が置かれることもある。


CGチーフ

CGディレクターの補佐を務める主任。3DCG関連の副監督ポジションで現場統括なども務める。


3DCGプロデューサー

CG部門を統括するプロデューサー。『CGIプロデューサー』『CGアニメーションプロデューサー』ともクレジットされる。CG部門の管理職的立場で制作管理の最高責任者


CGスーパーバイザー

CG関連全体の統括役。ディレクション担当、マネジメント担当として記載されることも。監督やプロデューサーらと協議して彼らが目指すCGの最終形をイメージとして共有したうえで、それを実現するための方法や手順をスタッフに提案し、CG全体のクオリティを高めることが役割。CG部門の仕切り役として俯瞰した立場から各話ディレクターを統括することもある

アドバイザー的立ち位置のこともあれば、作品によっては3DCG監督より上の職種としてCG映像制作の統括を実際に行う現場責任者の場合もある。

『モデリングスーパーバイザー』『リギングスーパーバイザー』と各工程にスーパーバイザーが付くこともある。


3DCGシーケンスディレクター

CGによるシーケンス(パート)をディレクションする職種。シーケンス(シークエンス)とはシーンの集合体のことで、「カット」が集まり「シーン(場面)」となり、シーンが集まると「シーケンス」という一つの成立した物語になる。これら、CGで制作した一連のパートのディレクションを担当する。所謂「パート監督」的存在。


リードアーティスト

CGクリエイターチームを統括する役割や主力を担うアーティストのこと。『CGリード』『CGリードデザイナー』『リード3Dデザイナー』『リードモデリングアーティスト』『リードリギングアーティスト』『リードアニメーター』と表記されることもある。


3Dレイアウト /  3DLO

絵コンテをもとに3DCGを駆使してレイアウトを制作する。作品によっては、3DLOを統括・監修する立場として『3DLO監修』『3DLOマネージャー』が表記されることも。主にCGスタッフが手掛けるが、作画のアニメーターや演出家がCGを使用してレイアウトを作成することもある。

3Dレイアウトを統括・監修する場合もあれば、この職種のスタッフのみで3DLO全てを手掛けることもある。対象は作画・CGI問わずアニメーター向けのレイアウト作成の他、美術スタッフ向けに3Dの美術モデルを作成する。

CGアニメでは後述するプライマリーアニメーターが近い役割を担っているほか、近年では特に作画主体のアニメで需要が増えているようで、3DLOをアタリ(所謂「下書き」のことで大まかな位置決めなどを行う)として上記のように原画や美術を手掛けることが増えている。だが、CGアニメーターの中には「作画や演出的な知識・レイアウトに疎い」クリエイターも当然おり、作画のアニメーターもその点が未熟な層は多い。その為、それが掛け合わさることで構図的におかしなレイアウトが生まれる欠点もある。また、CGでは作画的な嘘(現実的にはあり得ないポーズ等)を作るのが苦手という点もあり、CGレイアウトそのものを嫌う層も一定数いる。

ただし、一方で上手い・知識のあるクリエイターが作れば未熟なアニメーターがLOを作成するよりも品質の高いレイアウトが作れるため、それを未熟なアニメーターが使用すれば品質の底上げも期待できるとか。また、描き込んだレイアウトをリテイクする必要性が出た場合、そのリテイクを出す側が描き込みっぷりから躊躇して結局方向性的に破綻した状態でリテイクを出さずOKをだしたり、そもそもLO担当者にリテイクを拒否されることもあるほか、その描き込み量からみても残りの作業期間やコスト的に見合わず制作管理側がリテイクNGをだすケースもある。そのようなケースもCGレイアウトなら修正をしたいとなった際にリテイクが出しやすいメリットがあり、作画に入る前の事前設計でもあるCGLOを駆使することで事前に不備を洗い出し、作画作業以降にリテイクを出すリスクを減らして効率化を図ることもできる(なお、CGレイアウトは事前設計される分、作画アニメーターの自由度を奪うという声もあるが、必ずしもCGレイアウト通りになぞって作るのではなく、あくまでも参照程度の方が良いとも言われる)。

3DLO用のCGモデリングを作成する職種を『3Dレイアウトモデリング』と表記する場合もある。また、CGレイアウトでCG・作画アニメーターがキャラクターを配置するためのガイドとなる舞台を作るという意味で『CGガイドアニメーター』という表記がされることもある。


モデリングディレクター

モデリングに関する最高責任者。CGモデル(主にキャラクターのこと)の制作・監修を行う。キャラクターデザイナーに近い存在。『CGモデリングチーフ』と表記されることもある。

モデリングの対象はキャラクターのみならず、衣装や小物、背景美術なども含まれているが、キャラクター以外は別途職種を立てることもある。

実際にはモデルを作らず監修に徹することが多いとか。とはいえ、モデリング全体を統括しているスタッフであるため、CGモデルの品質を左右する重要な職種である。


モデラ―

3DCGでキャラクターやプロップ(小道具)、メカ(ロボット)、背景美術などの3Dモデルを造形する工程。メインでモデリングを担当するスタッフは『3DCGメインモデラー』と表記される。小物担当者は『セット(背景シーン)&プロップモデリング』『セッツ&プロップスモデリングアーティスト』で記載されるケースもある。

モデリングでは、服のボタンから装飾品まで一つ一つを作成する必要がある。そのため、キャラクター1人のモデリングでも、各パーツごとに分けて複数人で制作することが多い。モデルを作ってしまえば使いまわせるし便利だと思われているが、メインキャラクターや主要な舞台・道具の場合、1つのモデル制作に1か月以上の期間が必要となり予算もかかる。特に服に関しては新規の衣装の場合、新たに作成するのに作画アニメと比較してもかなりの時間を要する。

上記の理由から、使いまわさない素材に関しては資金面、時間効率の点からCGアニメでも作画で手掛けることが多く、服の場合はCGモデルの上から作画で書き足すことも多い。ちなみに、上記理由からCGアニメーションに向いているのは資産(作成したモデル)を長期に展開できることを見据えた作品であるとも言われている。

モデリング制作の一部に参加したり、補佐的な役割で関わる、短期間のみ参加したスタッフ、下請けの外注先などは、『モデリング協力』とクレジットされる。


3Dデザイナー

3Dによるキャラクターや道具、背景などのデザイナー。キャラクターデザインやキャラクター原案に近い職種。その中でもデザイナーを統括する職種は『リード3Dデザイナー』とも表記される。

モデラー(モデリング)と明確に分けて表記される場合もあれば、同じ意味でクレジットされる場合もある。


ルックデベロップメント

ルックデブと略されることも。3Dで作られたモデルのルック(見た目)の質感をテクスチャやシェーダ(陰影付け、表面の質感や凹凸の設定、各画素の表示色の決定など)を調整しながら作り上げる。モデラーが兼任するケースが多い。


リギングディレクター

CGモデルを動かすための骨組みとなる『リグ』制作の統括責任者。CGモデルの動きに関する監督・監修・制作を行う。

動きのクオリティに関わる重要な職種。ある意味では一部分のみ作画監督に近い役割がある。そのためCGアニメーションにおいてかなり重要な役割を担っていると言える。また、この職種はただ動かせるようにリグを作ればいいというわけではなく、CGアニメーターが効率的にCGモデルを動かせるかどうかも考える必要があり、制作現場全体の効率化を図るためにも重要な職種である。


リグ開発

リグを作るためのシステムを開発する担当者『ツール開発』『リグシステムデベロップメント』でまとめられることもある。既製品だけでなく、各社独自のシステムを構築しているところもある。主に、効率的に現場が使いやすいように作品ごとに改良することが多いらしい。スタジオによってはこのクレジットが後述の「リガー」と同じポジションの場合もあるとか。『3DCGセットアップ』と呼ばれることもあり、そのディレクションをする『3DCGセットアップディレクター』という職種もある。


リガ―

リグ(モデルを動かすコントローラーのこと)と呼ばれる骨組みをモデラーが制作したモデルの中に作り、動かせるようにする工程。『リギング』と表記されることも。モデラ―が兼任することもある。

骨組みの対象はキャラクターの手足など所謂『関節』のみではなく、髪の毛の1本1本や目・口などの表情、人物以外の小物、スカートなどの揺れもの、メカの装置など、動くものには一つ一つリグを作る必要がある。楽器などではギターの弦の全てのほか、ドラムの場合は楽器としてしっかり機能するよう各部分全てにリグが必要になる。

キャラクターに多彩な動きや表情をさせようとすると複雑な骨組みが必要になるが、それと同時にどのようなアニメーターが使用しても理解しやすく、使いやすいものでなければならない。そのため、ただ骨組みを増やして動きを多くするだけではダメ。また、表情に関しては「モーフターゲット」という表情差分を大量に作り、「モーフィング」というモーフターゲットをもとに形状を変化させる機能を使うことで、表情が滑らかに変化するように設定する技術も一緒に使用される場合が多い(大手CGスタジオのサンジゲンはモーフターゲットを80種以上作ることで豊かな表情芝居を実現している)。

アニメーションに関する知識以外にも、人間や動物の解剖学に関する知識やメカの構造への理解が必要とされる。


フェイシャルアーティスト

フェイシャルモデリングやリギング、フェイシャルアニメーションをメインとする職種。所謂「表情専門のCGアニメーター」。『フェイシャルアニメーター』『フェイシャルアニメーション』とも。

ゲーム業界やハリウッド映画でよく置かれている職種。日本のCGアニメーションでは上記の「モーフィング」などと立場は似ており、個別で表記されることは少ない。近年、海外の実写映画でよく目にする『フェイシャルVFX(俳優の顔を若返らせたり、老化させるなど、特殊メイクや代役を立てなくても人物を老化若返り美化させられる技術)』も職種としては近い役割となる。


3DCGI / 3DCGアニメーター

モデリングをリグを使用して動かすアニメーター。『CG』『3DCG』『3D』『CGアニメーター』『CGアーティスト』『CGワークス』『3DCGワークス』『3Dモーション』と表記されることも。作品によって、モデラーやリガーが兼任することが多く、まとめて3DCGIで表記する場合もある。作画アニメでいう原画・動画を担当するスタッフ。

どれだけ優れたモデルやリグがあっても、動かすアニメーター次第で作品のクオリティが大きく異なる点は作画アニメと同じ。同じモデルを使用していても、CGアニメーターのセンス一つで動きや表情の魅せ方、場面構図に差が出てくる。また、詳しい人が見ればどのCGアニメーターが動かしたか分かるレベルで個性も出るらしい。

フルCG作品であれば上述のようにモデラーやリガーなど細かく職種分けされてクレジットされているが、作画主体のアニメではモデラーやリガー、後述のオペレーターも含め、すべて一纏めにして『3DCGI』で表記されることが多い(CGの使用頻度が多い作品では詳細に表記される作品も増えている)。

大手CGスタジオのサンジゲンではCGの分業体制を強化しており、以下のチーム編成をしている。

プライマリーアニメーター
 身体や手足、指、顔の表情など、主要なパーツの動きを付け、レイアウトも作る

セカンダリーアニメーター
 衣服、マント、揺れる装飾品、髪などの細部の動きを付けたり、めり込みの解消など細かい修正も行う

ターシャリーアニメーター
 最終チェック担当。彼らを統括するターシャリーディレクターが配置される場合もある

大手スタジオがプライマリーとセカンダリーに分業している理由としては、プライマリーチームの待機・作業時間を極力減らしてほかの主要カットに回し、難易度が低い作業をセカンダリーチームで担当して生産力向上を図るため。そのため、セカンダリーチームは比較的若手が配置されることが多いらしい。

その他にも、大手のポリゴン・ピクチュアズではCGアニメーターを「レイアウター」「リードアニメーター」「アニメーター」の3種に分業していたり、スタジオ特有の体制を築いている。


オペレーター

CGアニメにおける各職種のサポート役。職種ごとに『モデリングオペレーター』『リギングオペレーター』『アニメーションオペレーター』が置かれる。 作画アニメでいう第二原画に近い印象。

各職種のスタッフの指示に従い、簡単な作業を行うことが多い。新人のCGアニメーターがほとんどで、オペレーターを経験してからモデラー、リガー、CGアニメーターになるパターンが多いらしい。


テクスチャ

CGモデルに質感や模様などを作るために用いるデータテクスチャ(貼り込み素材・画像)をCGモデル(オブジェクト)の表面に貼っていく。

『テクスチャデザイナー』『テクスチャーアーティスト』『テクスチャーデザイン』『テクスチャワーク』『3Dテクスチャ』『テクスチャペインター』『テクスチャー素材』『テクスチャー特効』と表記されることも。

素材を貼りこむ対象によって『衣装テクスチャ』『背景テクスチャ』『2Dテクスチャー』などが存在する。テクスチャ素材はアニメーターや美術職が描いたものを使用する場合も多い。


エフェクト / CGエフェクト

CGを使用したエフェクト表現を行うCGアーティスト「エフェクトアニメーター」と記載される場合も。

種類としては「2Dエフェクト」「3Dエフェクト」「物理シミュレーション」などがある。魔法に使用する魔法陣や漫画で見られるような集中線、オーラのような2D表現を手掛けることもあれば、CGやVFX、物理演算も使用して炎や爆発、煙、破片、水、雪、雲、雨粒、布などの実写的なエフェクトの表現も手掛ける。

その内容から、『VFX』の作業範囲でもあるため、その表記でクレジットされる場合も多い。


コーディネーター

CGクリエイター専門の制作進行のことを『コーディネーター』と表記することがある。ほかにも『モデリングコーディネーター』『リギングコーディネーター』『プロダクションコーディネーター』と表記されることも。


CGアセット

アセット(共有資産)とは3DCGのモデルデータ、CGアニメーションデータなどの各種素材データのことを指すほか、開発環境を構成するハードウェア、ソフトウェアのこともアセットと呼ぶ。一言で言えば『3DCG制作にて必要な素材データをまとめたもの』であり、CGスタジオでは過去のアセットを蓄積し、別作品でも使用して業務の効率化を図っている。

この職種でクレジットされたスタッフは、アセットを量産しているスタッフということであり、簡単に言えばモデラーと同意義である。


CGアセットディレクター

CGアセットスタッフの管理・ディレクションを担当する職種。


パイプライン

所謂『アセット管理』。3DCG制作の仕組み(ワークフロー)を組み立て、効率的に良い作品を生み出すための基幹を支える職種。CGの各工程で効率的に質の良い作品を生み出すための仕組みを作り、スタッフのストレスを減らす役割がある。


スクリプト開発

ソフトウェアの機能をカスタマイズするための簡易的なプログラミング言語を開発する職種。機能拡張を目的に行う。


テクニカルディレクター

CGを手掛けるクリエイター職と、それを表現するためシステムを作るエンジニア職の異なる職種を結ぶ職種。『テクニカルCGクリエイター』『テクニカルアーティスト』とも表記される。
 
クリエイターとプログラマの双方の技術を掛け合わせてクオリティーを引き出す仕事であり、双方の技術について高度な技術力と知識を持ち、スタッフの力を引き出す能力が必要である。プロジェクトを円滑に進めるためのツール開発やディレクション業務、プロジェクト全体の相談役など、企画により役割は様々。


テクニカルサポート

技術的問題に対する問い合わせを受け問題解決をサポートする職種。『テクニカルアーティスト』と記載される場合もある。『テクニカルディレクター』と内容はほぼ同じ場合が多い。職種ごとに『○○テクニカルアーティスト』という風に記載されることが多く、例としてシミュレーション(物理演算)専門の場合は『シミュレーションテクニカルアーティスト』というように、専門分野に絞った記載がされることも多い。

ハードウェアやソフトウェアの撤去・設置、操作・運用方法や問題解決方法のマニュアル作成などの業務も行う。


【コンポジット / デジタル関連】

撮影監督

コンポジット(合成)・撮影処理の統括責任者。素材の合成作業の統括のほか、撮影処理による空間の表現なども統括しており、色彩設計や美術監督と共に画面の色味や光などの表現を決めるなど、映像の雰囲気を作り出す役割もある。

近年の映像美と言われる要素の多くを占める重要な役割を果たしており、撮影監督の『』が画面に色濃く出ることも増えてきている。

撮影監督を補佐する『撮影監督補佐』という職種もある。


撮影

仕上げまで作業が終了した素材、背景美術素材、3DCG素材などのバラバラの素材をコンテやタイムシートなどの指示書をもとに全て合成して、一つのカットを完成させる役割。『コンポジット』と表記されることもある。撮影という言葉はデジタルが主流となる前の時代に各素材を「撮影台」と呼ばれる台に置いて、それを撮影して合成していたため、その名残とされている。

合成のほか、ブラシ作業やグラデーション処理、透過光などの特殊効果を加えて映像に奥行きや雰囲気を作る職種でもあり、全ての素材を違和感なく集約させ、アニメーション映像とし成立するかを確認する役割もある。

撮影で出来上がった映像が最終的にテレビ画面に映るため、映像制作の最後の砦ともいわれることがある。

撮影作業に協力したスタッフは『撮影協力』とクレジットされる。


VFX

Visual Effects』の略称。『VFXアート』『VFXアーティスト』とも。視覚効果のことであり、撮影後のアニメーションにコンピューターで特殊効果や様々なCG素材を加えて視覚的な演出を行う。仕上げによる特殊効果と違い、CG寄りの特殊効果技術となる。
 
近年はVFXを使用するアニメーションが増加しており、主に撮影部署のスタッフが担当することが多い。


エフェクト / 特殊効果 / 撮処理(撮影処理)

エフェクトは自然現象の動きの表現のこと。『エフェクトアーティスト』と表現されることも。

エフェクトは3つのセクションが場面や演出に合わせて使用している。

作画:斬撃や土煙、岩の破片などを手書きで描く
3DCG:CGを使用した水や破片などのエフェクト。物理演算も使用
撮影:土埃や光、斬撃など

このように複数の工程で分担しているが、その全てを取りまとめるのが撮影部署のため、これらのエフェクトを画面でとりまとめて演出する役目もある。また、撮影スタッフがCGエフェクトを担当する場合もある。

その内容から、『VFX』の作業範囲でもあるため、この表記でクレジットされる場合も多い。

また、撮影による特殊効果もエフェクトで表記される場合がある(または、エフェクト処理のことを特殊効果と呼ぶ場合もある)。仕上げによる特殊効果が【キャラクターや小物に直接描き込んで質感を生み出す】ことだとしたら、撮影による特殊効果は透過光やぼかし、フィルタを加えた【画面全体の空間表現】のことを指す場合が多い(この工程は「撮処理(撮影処理)」と呼ばれることもある)。


ラインテスト / 線撮

コンテ撮、レイアウト撮、原撮、動撮など、完成前のラフ・線画段階の素材を撮影する作業であり、仮編集やアフレコ、音響、音楽などの編集・音響・音楽作業のために先行して未完成のカットを撮影する仕事。線撮専門のスタジオも存在する。外注した場合には『線撮協力』と表記されることもある。

仮素材とはいえ、アフレコ用に各キャラクターの見分けやセリフのタイミングがわかるようにする必要があるため、キャラクター名のテロップ(ボールド)を入れたりと手間の掛かる作業でもある。

タイミング撮」という言葉もあり、これは撮影前の彩色までが終わった段階の素材のこと(特殊効果なしの状態)。試写に間に合わない場合、これで乗り切る現場もあるとか。完成映像は「本撮」という。

この工程はアニメ業界が生み出した悪しき習慣ともいわれているとか……。


3Dコンポジット

CG素材の撮影をメインに担当するスタッフ。3CCGがメインの作品で表記されることが多い。


ライティング&コンポジットアーティスト

フル3DCG作品のライティング、レンダリング、コンポジットを担う。3Dコンポジットと同じ役割のことが多い。キャラクターや背景のライティングとルック(見た目・モデルの質感)開発、レンダリング(画像生成)の最適化なども担っている。

セクションを統括する人物は『リードライティング&コンポジットアーティスト』と記載されることもある。


2Dワークス

貼り込み素材のこと。この素材は、作中に登場する書類やポスター、雑誌などに貼り込む文面・イラスト素材、CGによる背景などに貼る素材(壁や机、床など)のことを指す。『2Dワークス』『2Dデザイン』『2DCGI』『2Dグラフィック』と表記されることもある。

文面に関しては、制作スタッフや文芸スタッフ、脚本家が担当。イラストはアニメーターや美術スタッフが担当していることが多いほか、専門のアーティストを雇う場合もある。これらの素材を撮影スタッフで貼り込む。


2DCGデザイン

2DCGデザイナーがデジタルツールを用いてイラストを手掛ける。3DCGデザイナーがポリゴンを駆使したCGデザインを作るのに対して、2DCGデザイナーは所謂「イラストレーター」と同じ職種(デジタル機器(CG、コンピューターグラフィック)を使用して作画(2D)を行う)
 
アニメ作品においては「2Dワークス」と同じ仕事内容であり、スタジオによっては作品全体でかかわるスタッフを2Dワークス、話数単体でかかわるスタッフを2DCGデザインに分けてクレジットするスタジオもある。


モニターワークス

SF作品の劇中にて、モニターに表示されるSFっぽい架空の画面のこと。『モニターグラフィックス』『モニター』と表記されることも。

撮影・CGスタッフが画面設計を担当することが多いが、作品によっては専門のデザイナーを雇うこともある。


プラグイン開発

撮影やCG職が使用するソフトの機能を拡張するプログラムを開発する職種。『システム設計』と表記されることも。また、外注する場合は『プラグイン協力』とクレジットされる。
 
プラグインとは、ソフト(アプリ)の機能を拡張するためのプログラム。プラグインで機能を追加することにより利便性や品質の向上が見込める。


ツール開発

作画やCGなどの各素材を保管する管理ツールを作成する仕事。作業効率に関わる重要な役割。スタジオによってはこの職種にリグ開発が含まれる場合もある。

管理ツールの作成は制作進行関連のスタッフが担当することも多いが、実際に現場で膨大な素材を管理する撮影スタッフが開発しているスタジオもある。CGアニメでクレジットされることが多いが、稀に作画アニメでも表記されている。

アニメ制作では完成素材や線撮などの仮素材、リテイク素材など膨大な素材が集まるため、必要な時に必要なデータを効率よく取り出すシステムが必要となる。ツールの出来次第で、その後の作業効率が大きく変化するため、ツール開発に力を入れているスタジオもある。


【モーションキャプチャー関連】

モーションキャプチャースタジオ

モーションキャプチャ(モーキャプ)を行う設備を備えたスタジオ。モーキャプは特殊なスーツやマーカーを付けた人やモノの動きをデジタルデータに変換する技術
 
全身に着けたマーカーの位置をトラッキング(追尾)するシステムを利用して、人物の動きをデータ化。それをCGキャラクターに反映させることでリアルな動きを表現できるほか、アニメーターの作業の省力化、効率化を図ることができる
 
モーションキャプチャを利用したCGモーションはCGアニメーションだけではなく、その動きを3DLOに応用して原画マンが上からトレースすることで、作画によるアニメーションにも変換できる。


モーションキャプチャープロデューサー

モーションキャプチャの現場プロデュースを担当する職種。全体の統括・管理の責任者。


モーションキャプチャーディレクター

モーションキャプチャの現場でディレクション業務を行う職種。


モーションキャプチャーデザイナー

モーションキャプチャのデータ処理、撮影、編集業務を担当する職種。


モーションキャプチャーオペレーター

モーションキャプチャの撮影準備、進行管理を担当するアシスタント的な役割。モーションキャプチャを使った撮影の準備、進行管理などのスタジオオペレーション、データ編集業務を担当。『モーションキャプチャーエンジニア』とも表記される。


アクターコーディネート

撮影スタジオ、アクター、振付師の手配・スタッフィングから振付・演技指導、撮影、ディレクション、データ納品までを作業を管理・サポートするコーディネーター。制作進行的な役割。『モーションアクターコーディネート』とクレジットされることもある。

                

振付

発注を受けた内容に沿って振付を行う振付師。ダンスから演奏シーン、スポーツまで作品によって専門の振付師がアクターを指導する。振付を提供したクリエイターや参照した振付がある場合は『振付協力』とクレジットさる。


モーションアクター

モーションキャプチャで動きを記録するために、マーカーを身体につけて演技をする役者。基本的には専門の俳優が演技を行うが、場合によっては作品のジャンルに関わる専門職(スポーツ選手など)をアクターとして雇う場合や声優自身がアクターを務めるケースもある。
 
日本のアニメでは、ダンス・音楽シーンに関わるアクターの多くがソリッド・キューブ所属か同社が手配したアクターである場合が多い。


【編集関連】

編集(オフライン編集)

撮影から送られてきた撮影済み素材を繋ぎ合わせる。『オフライン編集』と表記されることも。各カットを繋ぎ合わせ、そこから更にカットを切ったり伸ばたりしてテンポや音のタイミングを調整し、規定の尺に収める作業であり、物語の面白さに直結するテンポを決定付ける職種でもある。

送られてくる素材は編集でテンポを調整するためにわざと尺が長めに作成されており、編集時に尺を調整するほか、テンポや物語の流れに整合性を持たせるために監督や演出と相談の上で欠番カットを出したりカットの順番を入れ替えることもある。そのため、作業現場には監督と担当話数・担当パートの演出家、制作進行が立ち会う(現場によってはプロデューサーや音響監督、音響効果、音楽家、ごく稀に脚本家も立ち会うことがあるとか)。しかし、基本的な作業は一人で行っており、最初の段階では音素材もないため、編集を行うオフラインエディターは作品のコンテや脚本をもとに無音の状態で作業を行っている(声を出して演技をしながら作業する人が多いとか)。

編集はコンテ完成後の段階から関わっており、『コンテ撮(コンテを繋ぎ合わせた映像)』『線撮(レイアウトや原画を繋ぎ合わせた映像)』など、仮素材を事前にカッティングする作業も行う。この編集映像は、各カットの原画や仕上げ素材が完成するごとに更新されていく。

現在のアニメ制作では、線撮素材を音響に渡してアフレコを行い、その素材が返ってきたら声の演技に合わせて映像を再カッティング。この工程が繰り返され、音響や音楽素材、完成した仕上げ素材、CG素材、本撮素材などを何度も入れ替えて完成させていくため、道のりは長い。

コンテ段階で尺の指示自体はあるが、それはあくまで目安。実際の映像のリズムなどは編集者の技量で決まるとも言われている。そのため、アニメの観やすさは編集で決まる部分も大きい。また、作品によってはオフラインエディターがコンテ段階から密接に関与する作品もある。

編集者のサポートを行う『編集助手』という職種もある。


編集スタジオ

編集を行うスタジオのこと『オフライン編集スタジオ』とも。

オンライン編集スタジオを『オンライン編集スタジオ』『ポストプロダクション 』『HD編集室』『HD編集スタジオ』デジタルラボ』『デジタルスタジオ』と表記することも多い。また、フォーマット編集専門の『フォーマット編集スタジオ』が表記されることもある。すべての設備が併設されている場合には『編集スタジオ』でまとめてクレジットされる。

後述のオンライン編集の場合は、編集機材やスタジオ設備が高額投資・維持費にかなりの費用を要する。そのため、内製にこだわるアニメ制作スタジオでもオンライン編集機能を併設しているところは非常に少ない(オフライン編集のみ併設されている場合はある)。


オンライン編集

オフライン編集後の映像に各放送局の基準にあわせて明るさやモザイク規制などの細かい調整を行う。『V編(ビデオ編集)』『HD編集』とも呼ばれ、納品用のテープに収録するための本当の最終工程となる。オンライン編集者を『オンラインエディター』、補佐職を『オンラインエディター助手』、管理職を『オンライン編集デスク』とクレジットする場合もある。

作業としてはリテイク作業(修正箇所があるかの確認)を行い、V編に参加する全スタッフが問題ないと判断した場合、オープニング・エンディング・提供画面・スタッフクレジットを挿入。そこからさらに『ハーディングチェック』と呼ばれる明るさ規制やモザイク処理を行うと納品となる(この機械が高価なため、専門のスタジオでしか行えない作業となる)。

参加するのは製作委員会各企業のプロデューサー、監督、話数演出、制作プロデューサーなど。場合によっては脚本家や原作者が参加することもある。

作業中は元請制作スタジオに制作デスクや制作進行が待機。仮にリテイク指示が出た場合、スタジオに待機する彼らに連絡して該当カットをその場で修正するように指示を出す。現場には動画検査や仕上げスタッフ、撮影スタッフが待機しており、その場で修正を行いカットの差し替えをする。また、製作委員会側から放送上の都合で修正を加えないといけない箇所の指示が出る場合もある(製作委員会と無関係の企業ロゴの修正指示など)。V編で行われるリテイク作業では該当スタッフが全員スタジオに待機することとなり、地獄の時間と言う人もいる。

オンライン編集はオフライン編集と同じ編集スタジオで行うこともあれば、オンライン編集のみ別の編集スタジオに委託するパターンも多い(機材を導入していないオフラインメインの編集スタジオもあるため)。

近年は高画質な映像へとアップコンバートする編集システムを導入するスタジオも多く、有名どころでは「FORSアップコンバート」「PixelShake」などがある。


フォーマット編集

完成パッケージを放送形式や上映時の画面比率・サイズなど規格ごとのフォーマット(形式)に合わせて比率・画質・局ごとに決められた尺などに編集すること。オンライン編集と同じだが、別に分けられてクレジットされる場合もある。


DCPマスタリング

デジタルシネマパッケージ(DCP)。デジタルデータ形成された劇場での投影方式。かつてはフィルムで上映をしていた映画館だが、現在はDCP上映に切り替わっている。『デジタルシネママスタリング』と表記されることも。編集者は『デジタルシネマエンジニア』と表記される。

上記データーを記録媒体(Blu-ray Disc、ビデオテープなど)で量産して各劇場に持ち込むためには元となる原盤を作成する必要があり、その作業をマスタリングという。昔でいう各映画館用のフィルム作成のデジタル版である。 


デジタルシネマスタジオ

デジタルシネマ向けのDCP配信や機材の提供、デジタルシネマ設備を管理するソフトなどを作成・管理するスタジオ


ラボマネージャー

オンライン編集やDCPマスタリングを行うスタジオの業務運営・管理を行う統括役。『ラボ・マネージメント』と表記されることも。


ラボコーディネーター

オンライン編集やDCPマスタリングを行うスタジオのスケジュール調整・管理、スタジオの確保等を行うスタッフ。


スタジオコーディネート

編集に関するスケジュール調整・管理、スタジオの確保等を行うスタッフ。『スタジオコーディネーター』と表記されることも。


ポストプロダクションコーディネート

ポスプロ全体(編集やV編など)のスケジュール管理や各スタッフ間の調整をするスタッフ。


【音響関連】

音響監督

音響面全般を監督・統括するスタッフ。監督、プロデューサーと共に声優の選定を行ったり、音楽の発注・選定、効果音の発注・選定も行う。『録音演出』と表記されることも。

音響の演出家ともいえる立場であり、音響効果と相談しながら音のタイミングや内容を決定する。BGM制作・選定にも大きくかかわる。アフレコでは監督の要望を尊重しながらではあるが、音響監督の技術で声優さんのキャラクター演技が大きく変わるとか。キャストの選定にも大きく関わり、音響監督の個性が出るキャスティングもあるとか。

この職種は監督やプロデューサー、時には声優などが兼任することもある。


音響効果

作品内の効果音を制作するスタッフ。環境音や動物の鳴き声、機械音などを様々な道具や録音機器を駆使して制作する。

音響効果の助手として『効果助手』という職種が置かれることもある。


サウンドデザイン

作品の方向性や世界観を基に音に関するすべてを構築(デザイン)する

アフレコ録音・編集、ミキシング、フォーリー、音楽などの選定や制作など、各音響セクションのデザインを担当する指示役的なデザイナー。


フォーリー

フォーリーサウンド』のこと。担当者はフォーリーアーティストと呼ばれる場合もある。アニメーション映像を実際に再生しながら、映像にあわせて効果音を録音する手法。

効果音はそれだけで場面の空気や緊張感、人物の性格を表現できるため、事前に録り溜めてある音素材のみでは表現が難しい場合がある。そのため、映像に合わせた効果音を制作することで音に演技をつけることが可能となる。


ダビング

アニメーション映像にアフレコで収録した音声や制作済みの効果音、音楽などを合わせていく作業


スタジオエンジニア

ダビング作業を実際に行うエンジニア。『ダビングエンジニア』と表記されることもある。


録音調整 / ミキサー

声優の声を録音するミキサーという機械やマイク等のアフレコ機材の調整・操作をするスタッフ。『ミキサー』『サウンドミキサー』『録音・調整』とも呼ばれる。音響監督が音響全体を統括する仕事なら、実際に録音を行うのがこの職種。

職種の名称の由来ともなっているミキサーという機械は、アフレコマイクからの音を取り込む機材であり、音色の加工や音量調整などにも使用される。

この職種は、声優の芝居に合わせてリアルタイムで音量などのバランスを取る仕事となり、20名以上の声優が参加する収録の場合は各声優の演技に合わせてリアルタイムで調整が必要のため、高い技術力が求められる。ミキサーの技術次第で声優の演技が違って聞こえるともいわれる。

本職種と同じく録音を担当するスタッフは『録音』、録音の補佐をするスタッフは『録音助手』『サウンドエディター』と表記される。


ダイアログエディター

アフレコ収録音声のデータについて、音質・音量調整・編集を行う職種。『音声編集』とも表記される。


整音

収録音を整えて聴きやすくなるように加工を行う工程。ノイズ低減、ボイス(ダイアログ)の音量均一化・ラウドネス(人間が感じる音の大きさを示す規格)調整などを行う。『ミキサー』と仕事が重なる部分もある。


選曲

脚本やコンテ、線撮、監督・演出家の意見やイメージを基に、楽曲の詳細が書かれた指示書と合わせながら選曲を行う職種。作曲家への発注や追加発注も行う。

これらの仕事は音響監督が行うことが一般的だが、東映アニメーションなどのスタジオでは『選曲』として別に置かれている。


キャスティングディレクター

監督やプロデューサーから依頼を受けて声優をキャスティングする。 作品のイメージに沿った声優をリストアップする(最終的に決めるのは監督や音響監督、プロデューサーなど)。


キャスティングマネージャー

キャスティングディレクターと共に声優のキャスティング業務を行うほか、監督らのイメージに該当する声優のピックアップやスケジュールを調整、取引先へのキャスティングの提案・交渉から出演料などの交渉も行う職種。


台本制作

アフレコ用の台本を制作する職種。制作進行が台本印刷所にアフレコ用台本を発注する。台本印刷所は脚本、絵コンテを元に台本を作成して印刷・製本を行う。

ちなみに、台本に書かれている「ト書き」はコンテに書かれている文章が主であり、脚本とは別物である。

アフレコ台本の表紙には毎話数ごとにアニメーターがデザインを描く作品もある。


音響制作担当

音響制作における予算・スケジュール管理などを行うスタッフ。音響の制作進行。声優のスケジュール確保も行う。『音響制作』とクレジットされる場合もある。また、音響制作の上に統括役となる『音響制作デスク』という職種もある。


音響制作

実際に音響関連全般を制作するスタジオ。音響監督や音響効果が所属しているスタジオが担当することが多い。録音スタジオを兼任することもある。


録音スタジオ

アフレコや音響を録音するスタジオ。基本的には音響制作を担当するスタジオが録音スタジオを兼ねている場合が多いが、別の録音スタジオが担当する場合もある。


ダビングスタジオ

ダビング作業を行うスタジオ。アフレコスタジオと一緒の音響スタジオで行う場合も多い。


【劇伴 / 楽曲関連】

音楽

作中のBGM(劇伴)を作曲する音楽家。作品によっては主題歌・挿入歌の作詞・作曲・編曲を担当することもある。

音響監督との打ち合わせ(監督やプロデューサー、音楽プロデューサー、音楽ディレクターなども含む)や彼らからの発注指示書(「明るい場面で使う音楽」や「戦闘シーンで使う音楽」などの指示のほか、作品自体の方向性、使用したい音楽のジャンルなど)を元に作中のBGMを作成する。

基本的には発注書を基に事前に作成された音楽を監督や音響監督が場面に合わせて選定していくスタイルがとられているが、劇場アニメや一部のTVアニメでは作中の映像に合わせて音楽を作る『フィルムスコアリング』が採用されている(映画作品は手法)。

作品の『音』に関連する職種の中でも声優と共に注目される仕事であり、BGMを聴くだけで作品の場面を思い出せることもある非常に重要な職種。


音楽プロデュース

作中の音楽全般、または特定の部分(主題歌のみ、劇中歌のみ、劇伴のみなど)の音楽をプロデュースする職種

『音楽プロデューサー』と同じ意味の場合もあるが、こちらの場合はあくまで音楽面のプロデュースのみで管理関連とは無関係。また、有名なアーティストが参加している場合も多い


音楽統括 / 音楽監督

コンテンツの音楽に関わるすべての作業の統括する職種。音楽制作からリアルライブなどの総合演出など、音楽関連のすべてを統括する。


音楽プロデューサー

音楽制作に関するプロデュース、スタッフィング、予算管理、宣伝・販売戦略等を担当する

この『音楽』には、劇伴のほかに主題歌、挿入歌も含まれており、声優が主体の主題歌・挿入歌を制作する場合は、音楽プロデューサーの手腕が問われることも。

主題歌・劇中歌を専門とする『主題歌 / 劇中歌プロデューサー』や劇伴をメインに担当する『劇伴音楽プロデューサー』が置かれる場合もある。


音楽ディレクター

楽曲のレコーディングからプロモーションまでを統括する監督。作詞家や作曲家・編曲家の選定からレコーディングミュージシャン・録音スタッフの選定、各種スケジュール管理、ジャケット写真などのプランニング、CD制作の発注など、楽曲の制作からプロモーションまでをすべて管理している。音楽プロデューサーが全体の統括を行うとしたら、音楽ディレクターは制作現場での監督を務める

作品が音楽関連の内容だった場合は監修作業等を行う場合もある。また、主題歌・劇中歌を専門とする『主題歌 / 劇中歌ディレクター』が置かれる場合もある。


レコーディング&ミキシングエンジニア

レコーディング、編集(ミキシング)、マスターテープ制作(マスタリング)の作業を担当する技術職。『レコーディングオペレーター』『ミュージックエディター』『音楽録音・編集』と表記されることも。

音楽を調整する『ミキサー』という機械を操作する。また、劇伴専門の『劇中音楽録音・編集』という職種もある。


アシスタントエンジニア

レコーディング・エンジニアの補佐役。『レコーディングオペレーター』と表記されることも。マイクロフォンや録音機材などのセットアップやレコーディング・セッションのオペレーションなどを行う。


レコーディングスタジオ

歌唱・演奏等の録音(レコーディング)、音の編集・調整(ミキシング)などを行うためのスタジオ。『レコーディングミキシングスタジオ』と表記されることも。

世に出る楽曲の多くは、レコーディングスタジオで録音・編集・調整されたもの。


音楽制作

ミュージシャンや奏者を集め、演奏などの音楽制作を担当する企業。製作委員会の企業の中でも音楽レーベルを持つ企業が担当する場合が多く、主題歌の販売・宣伝等も行う。『劇伴制作』と表記されることも。

音楽制作における制作進行職』がこの名称で表記される場合もある。


音楽制作アシスタント

音楽制作における制作進行職。管理業務全般を請け負う。


音楽A&R

Artists and Repertoire(アーティスト・アンド・レパートリー)の略。音楽に関する企画・楽曲提供・宣伝戦略を行う職種。
 
レーベル所属のアーティスト育成のほか、新たなアーティストの発掘・育成、新人アーティストのコンセプト企画立案や楽曲提供の企画発注など、『主題歌・劇中歌アーティストのプロモーション』に関わっている。


音楽協力 / 主題歌協力

作品の音楽や主題歌制作に何らかの形で協力したスタッフ・アーティストが記載される。『音楽制作協力』とクレジットされることもある。


【スタジオ制作管理関連】

制作進行

担当話数・パートの制作管理(スケジュール・スタッフィング・事務関連など)を担当するスタッフ。各セクションとの橋渡し役でもある。『プロダクションマネージャー』『制作話数担当』と表記されることも(京都アニメーションでは制作進行のことを『制作マネージャー』表記で示している)。

『作画管理』『動画管理(動画進行、動仕担当、動画・仕上げマネージャー)』『仕上げ管理(仕上げ進行)』『背景管理(背景進行)』『撮影管理(撮影進行)』など、各セクションごとに制作進行を置く作品もある(この場合、全体を担当する制作進行とは別枠で表記されている)。また、近年は海外に仕事を委託する場合がほとんどであるため、海外グロスの制作管理を専門にする『海外制作』が置かれることも。

3DCG作品の場合『CG制作進行(2D・3D管理)』『作画制作進行』に職種が別れていることもある。また、制作進行をサポートする『制作進行補佐』『進行協力』『制作サポート』が置かれる場合もある。

その仕事は多岐にわたり、主には以下の通り。

作業期間:担当話数・パートの演出・作画管理~V編(納品)までの全工程

【スタッフ管理】
◎営業

 基本的にフリーランスがメインの業界であるため、企画ごとに一から集める必要がある。営業相手はスタジオの電話帳に記録されているスタッフや面識のあるスタッフが主だが、近年はSNSで募集する場合も多く、この方法がトラブルを呼ぶ場合も増えている(電話帳の場合でも相手の許可や仲介役などもなく電話番号を入手していた場合にはトラブルとなるケースが多い)。そのため、事前に依頼相手について調べて把握しておいたり、依頼する場合にも手順を踏む必要がある(ちなみに、スタジオごとにブラックリスト入りしているアニメーターもいるとか)。

交渉
 
カット内容やスケジュール、単価を提示して仕事を請けてくれないか交渉を行う。単価やスケジュールに関してはアニメーターの希望を制作デスクに相談し、なるべくお互いにとっての好条件を引き出す必要もあり、制作進行は両者の板挟みになる。
 交渉相手は同業者のみにとどまらず、資料に必要なロケハン先との交渉、車の手配、必要資料の収集などあらゆる雑務をこなす(とくにロケハンや資料関連の収集に関する許可取りについて、近年はこの工程がおろそかとなり炎上するパターンが多い)。

管理
 
各セクションやフリー個人のスケジュール進行を管理・調整する。基本的には脚本・コンテまでの工程と演出、作画監督の人選は制作進行が参加した時点で終了しており、演出~V編までのスケジュール管理を行う。
 特に制作進行が関わる範囲内では『原画スケジュール』『演出、作監チェック』の2点で遅れがでて後工程が切迫する場合が多い(フリーランスが大半の現場が基本であるため人によっては相手の実力も良くわからないことが多い点や、それによりスタジオに常駐していない人が多いため人によって連絡が取れず進行具合の確認が遅れる点、ミス・修正・リテイク・未納の増加が原因としてある。また、これにより演出や作監のチェック工程で多くのLOが止まってしまい、LO担当者本人にや二原担当者に戻す・渡すのが遅れることも一因だとか。ほかにも、アニメの品質向上や線・枚数の増加も追い打ちをかけているらしい。なお、それより以前の脚本や絵コンテの段階による遅れで切迫する場合も多い)。制作進行は上流の工程でなるべく遅れが出ないようにスケジュールを調整していく必要がある
 フリーランスや外注が多い関係もあり、かつては素材回収に制作進行が車などで直接取りに行く必要があった。しかし、近年はデジタル化の影響で受け取りがメールになったり、車での回収も専門業者に委託する場合が増えている。

コミュニケーション
 各スタッフとのコミュニケーションを行い制作管理をスムーズに進める
必要がある。特にスケジュールの要となる職種が「演出」「作画監督関連」「動画検査」「仕上げ検査」「撮影」等であり、中でも演出や作画監督とは密なコミュニケーションを要求される。このコミュニケーションを大事にする制作は、そこで築いた人脈を武器に独立して活躍する人もいる。




【素材管理】
 各セクションの仮素材(中間製作物)や完成素材を管理する。制作進行はその素材の担当者や詳細な内容など、すべてを正確に把握する能力が必要。コンテの意図も含め担当話数については演出や監督以上に精通している必要がある




【資金管理】
 発注内容・請求書の管理(実際のお金の運用等はデスク以上の役職の仕事となる)。特にフリーランスとの仕事が多いため、スタジオの信用を維持するためにも重要な作業となる。

以上のことから全セクションと関わりを持つため、各セクションの作業内容に精通する能力を問われる。これらの要素から、プロデューサーや演出家のスタート地点ともいわれる。

役割は主に上記の通りだが、コンテ・演出・作画監督の人選は制作デスクや制作プロデューサー、ときには監督が集める(原画メンバーも多くをデスクや監督、演出担当が呼ぶ場合もある)。だが、制作進行自身が担当話数のコンテから作画監督までを全員集めた話もある。また、作業が遅れている場合は追加で外注の作画監督に素材を撒く必要もあるため、制作進行の活動範囲は上記内容にとどまらない場合も多い

制作進行のなかでも経験を積んだ者は多くの実力派アニメーターや各セクションスタッフとのコネクションを持っており、彼らとのコネクション、又はスケジュール管理能力が作品のクオリティを大きく左右するともいわれている。演出家のなかにはに「絶対この話数にはこの制作さんが来て欲しい」「この話数の品質を維持するには制作の○○さんが必要」と話す人もおり、制作後のインタビューで作品に対する一番の貢献者として名前をあげられる場合もある。制作進行無しではアニメ制作が成り立たないため、アニメ制作の『柱』ともいえる存在であり、人によっては制作進行の名前を見て作品のクオリティを予想できる人もいる(このような役割のため、優秀な制作進行が独立して退社することによりスタジオの制作能力が一気に低下するケースも多い)。

制作進行は基本的に社員雇用(契約・正社員)であるが、近年はフリーランスの制作進行も増加傾向にある。スタジオの中には、元請管理ができる制作デスクが一人でもいれば、残りはフリーの制作進行で賄う元請スタジオ作品も存在する。

制作進行は基本1人~2人体制だが(若手指導のためにベテランとペアを組まされるケースも多い)、切迫している現場ではさらに人数が増えたり、「制作進行補佐」を置くこともあり、制作進行の人数で制作現場の状況が予想できることもある


設定制作

作品のキャラクター・小物・美術など各種設定・デザインの発注、完成した設定資料の管理、設定資料が正しく運用されているか「香盤表」や「設定リスト」にまとめながら各工程をチェックする管理スタッフ。『設定マネージャー』『設定管理』と表記されることも。設定制作の補佐として『設定補佐』、設定制作の統括として『設定デスク』が置かれる作品もある。誤解されやすいが、設定を実際に作成しているのは別スタッフであり、この職種は資料管理を主に行うスタッフである(稀に例外もあるらしい)

アニメでは何百点もの設定が作られている。それらの設定を必要な時にピックアップし、新たに必要な場合はクリエイターに発注し、さらに求められた時にはすぐに取り出せるように管理する必要がある。発注は各責任者に確認を取ってから行うが、原作がある作品では必要素材を先読みして発注をかける必要も出てくる。各素材の発注からかかわるため、プリプロダクション(設定・脚本制作段階)の時点で制作に関わる

上記内容から、作品のクオリティコントロールの一端を担っており、各設定に矛盾や間違いがあれば主要スタッフにも意見を言えるほどの作品理解とコミュニケーション能力が必要となる。そのため、演出処理が出来るくらいの能力も必要だと言われている。プロデューサー、演出家、脚本家を目指す制作が経験しておくべきポジションの一つ。

設定制作は上記内容から、基本的には1人のスタッフが1作品を通して担当するが、例外もあり数人がクレジットされる場合もある。また、一定話数ごとに担当が変わる作品や諸事情により途中で交代となる場合もある。 


文芸 / 文芸担当

脚本の制作管理を行うスタッフ。脚本家のスケジュール管理、各話脚本の管理などを担当し、脚本会議に参加することも多い。場合によっては脚本のスタッフィングに関わることもある。脚本専門の制作進行的立場。

脚本家を目指すスタッフが経験のために担当する場合も多く、ときには作中に登場するちょっとした文章の作成や脚本を一部担当する場合もある。


進行チーフ

制作進行の中の主任職。スタジオによってはデスクと同じ立場だが、制作進行チーフと制作デスクが分けて表記されている場合は、デスクのもとで制作進行を統括する主任であることが多い。


制作デスク

制作進行を統括する職種。『チーフマネージャー』『制作担当』と表記されることも。一言でいえば、作品全体の制作進行状況の管理を行う。制作プロデューサーへの登竜門のひとつ。

各話数・各パートの管理を担当する制作進行を統括しており、一つの作品に1人~2人置かれている。あくまでその作品におけるデスクであり、担当作品以外では制作進行として活動している場合も多い。また、デスク担当作品でも制作進行として参加する場合もある。

制作進行が各話数・パートの管理責任者なら、制作デスクは全話数・全パートにおける制作進行業務の責任者。管理する内容としては制作進行と同じではあるが、その規模が大きくなり以下のようになる。

【スタッフ管理】
・各話・各パート演出家・作画監督など中核スタッフの人選・交渉・管理

コンテ段階までの制作管理。コンテ完成後、制作進行への工程引継ぎ
・各話数の進行スケジュールを確認しながら全体のスケジュールを調整
各話制作進行の進捗状況確認

【素材管理】
素材の中でも編集データや音響データなどの重要度の高い素材を管理する

【資金管理】
全体の制作費を管理し、制作プロデューサーやラインプロデューサーらと単価調整なども行う

制作進行同様に、制作デスクのコネクションや管理能力次第で作品全体のクオリティが大きく左右され、デスクの名前から作品のクオリティを予測できる場合もある。

CGメインの作品には『CG制作デスク』という職種が置かれることもある。

なお、時折、クレジットに各話の制作進行が記載されない話数があるが、この場合は制作デスクが兼任している場合もあるという。


ラインプロデューサー

制作管理における最高責任者作品の製造ラインを形成する職種でもある。『制作マネージャー『ラインマネージメント』『ラインマネージャー』『制作ライン管理』と表記されることもあり、スタジオによっては『制作プロデューサー』のことをこの名称でクレジットする場合もある。また、撮影やCGなどの専門スタジオの制作マネージャーは『プロダクションマネジメント』『プロダクションマネージャー』『スタジオマネージャー』と表記される場合もある。その場合、プロダクションマネージャーをサポートする職種を『プロダクションアシスタント』と呼ぶ。

各作品の制作デスクも含めたスタジオの制作管理部門全体を統括する。スタジオ全体の管理責任者であり、制作デスクが1つの作品の管理責任者なら、ラインプロデューサーは複数の作品を管理している。スタッフィングや予算管理等の最終決定権を持つ一人。

制作デスクが中核スタッフの選定をするのに対し、ラインプロデューサーは編集スタジオ、美術・撮影・CG・音響等の専門スタジオなどを選定して制作ラインを構築。各社との予算交渉、スケジュール管理、調整を行う。この仕事はスタジオによっては制作デスクが兼任する場合もある。


システムマネージャー

スタジオ全体のシステム管理を行うスタッフ。『システム管理』『ITインフラマネジメント』『システムエンジニア』『デジタルサポート』『プログラマー』『システムアドミニストレータ』と表記されることもある。スタジオ内のシステム管理全般を担い、作画やCG等のデジタル機器関連のシステムも管理するエンジニア的存在。


プロダクション営業

制作スタジオに所属する営業職。『スタジオ営業』と表記されることも。

スタジオに元請やグロスなどの仕事(作品)を獲得してくる仕事であり、各所に営業をかけて作品を受注するほか、オリジナル作品などでは他業種・企業によるアニメ企画の企画書作成の手伝いや立案なども行う。


法務 

アニメスタジオの法務担当者。『法務担当』とも記載される。著作権及び版権等の契約書の作成・確認や権利侵害に関する調査・対応・法的手続きに関する事項など、法務全般を担当する。


総務

備品の管理、スタジオ管理、資料作成、福利厚生の整備、来客対応、防犯・防災対策など、一般的なバックオフィス(総務職)。


制作事務

制作スタジオの事務全般を担当する職種。一般的な事務職のこと。全体を管理する役職は『制作事務統括』と表記される。


翻訳 / 通訳協力

海外クリエイターとの橋渡し役。近年は動仕を海外に撒くことがほとんどであり、国内・海外グロス先共に通訳を行うスタッフは必須となっている。

海外へのグロスやクリエイター発注が増えたこともあり、通訳が関わる範囲は拡大。時には演出打ち・作打ちに関わることもあるほか、演出・作画監督修正の際の翻訳作業など、関わる範囲も増えている。作品特有の用語の理解など、作品世界観へ精通している必要もある

自社に通訳のできる制作進行を置くスタジオもあれば、外部に委託する場合もある。


車両協力

素材回収を担当するスタッフや委託企業。一部スタジオでは回収業務専門の『車両進行』が存在する。

特に近年は制作進行が車で素材を回収することは大幅に減少している。理由としては疲労困憊の制作進行による車両事故が多発したことも挙げられる。制作進行の社員化も増え、就業時間を厳守するための効率化として行うパターンも多いとか(一番外注しやすい仕事でもあるため)。

一部スタジオではセキュリティ強化のために外注するパターンが増えているとのこと。これは、特に「京アニ事件」以降、営業時間をきっちりと決めてスタジオのセキュリティを強化し、時間通りにスタジオを閉めるために行うケースが増えたとか。


制作プロデューサー / アニメーションプロデューサー

制作スタジオ・制作部門、または制作チームごとの最高責任者。『アニメーションプロデューサー』と表記されることも多いほか、スタジオによっては制作プロデューサーがラインプロデューサーを兼任する場合もある。また、撮影やCGなどの専門スタジオのプロデューサーは『プロダクションプロデューサー』と表記される場合もある。

製作委員会参加企業との各種調整、総製作費の管理と各話数への配分調整、メインスタッフ管理とプリプロダクション工程(企画~脚本・絵コンテ)の管理、制作スケジュール全体の調整などを務める。

アニメーションプロデューサーは製作委員会(作品の権利組織)と制作現場の橋渡し役であり、作品を納品するための最高責任者となる。そのため、この役職はスタジオの代表取締役社長が担う場合も多い

一方で、複数のラインを持つ規模の大きいスタジオの場合は、それぞれの制作ラインにアニメーションプロデューサーが在籍している。スタジオによっては『○○ライン / ○○班』など、そのプロデューサーの名前を取った制作ライン名で呼ばれており、同じスタジオ内でも制作ラインごとのプロデューサー自身の個性や人脈、能力によって作品のクオリティが大きく変わる場合もある(社内で派閥争いや人材の取り合いをするスタジオもあり、班ごとに育成環境や雰囲気も違ってくる場合もあるらしい)。

管理としては制作デスクが社内担当、制作プロデューサーが社外担当となる場合が多く、製作委員会のオーダーを制作現場に伝える役割もある。ただし、スタジオによって役割は曖昧な部分もあり、各工程の最終決定のみを制作プロデューサーが担うこともあれば、制作デスクが担う役割を制作プロデューサーが担当し、詳細なスタッフィングなどにも深く関わる場合もある。逆にデスクが制作プロデューサーの仕事を担っているスタジオもあるとか。

立場としては監督よりも上の役職であり、監督の要望に対する決定権もある。また、オリジナル企画などでは制作プロデューサーの発案した企画の映像化に取り組む場合もあり、映像化企画を発案したりスタジオに持ってくることもあれば、メーカー側に自身の企画を売り込むケースもある


制作統括

各ラインの制作プロデューサーを統括する。作品によっては『総括』『統括』と表記されることもある。ライン数の多いスタジオに置かれる役職で、そのスタジオの代表や取締役相当が担うことが多い。


【アニメーション制作スタジオ関連】

アニメーション制作

アニメーションを実際に制作する元請スタジオ。製作委員会から制作を依頼され受注。制作費を受け取り、スタッフ編成、外注スタジオへの素材発注、アニメーション制作進行管理、予算管理など、制作に関する現場業務全般を管理する。

企画を引き受けられるだけの能力(協力企業やスタッフを集められるだけの実績や企業的な信用、人脈、制作費運用、制作管理能力)があれば、制作管理スタッフなど、社員10名未満の小規模スタジオでも元請受注が可能

また、アニメスタジオはクリエイター色の強いイメージを持つ人も多く、実際、その色が濃いスタジオもある。しかし、アニメスタジオはあくまで実制作の予算管理、各工程の編成や素材発注・管理、作品の納品が役割。そのため、制作デスクなどの管理業務スタッフしか社員が在籍していないケースも多い(近年は制作進行もフリーランスに業務委託しているケースがある)。

2社以上のアニメスタジオでアニメーション制作の元請を請け負う場合は『共同制作』名義になることが多い。2社以上での制作のメリットは、各社で負担を分散できるところにあるが、作品によっては各スタジオ担当回ごとに制作能力の差が出てしまうこともある。

制作スタジオは主に制作費と二次利用印税(制作印税)から収益・利益を得ているが、出資するだけの体力やライセンス管理能力のあるスタジオは製作委員会に出資をして版権を得ることで、ライセンス運用から利益を上げている場合もある。しかし、多くのスタジオは赤字前提の制作費や少ない二次使用料のみが収入となるためスタジオ維持もままならず、複数の作品を請け負う自転車操業でスタジオ経営を維持しているところも多い


制作協力

グロス請け(絵コンテ又は演出処理以降の1話分の制作管理を元請スタジオから発注されて請け負う)スタジオ。所謂『外注』。元請スタジオより発注された1話分の制作全般の責任を負う。基本的には1クール内に2~4本分の制作を請け負っている場合が多い。

この表記の場合、動画や仕上げなどの下請けを数カットのみ請け負うスタジオではなく、1話数全ての制作管理の下請けを行うスタジオのことを言う。そのため、グロス回のみ元請回と雰囲気が変わることも多い。

TVアニメはOPやEDを除いても21~22分程のアニメーション映像が12~13本必要であり、元請スタジオのみでは納品スケジュールから逆算しても1クール全話数分の制作管理を行えるほどのキャパシティが無い場合が多い。そのため、どうしてもグロス請け回が数回必要となってくる(近年は全話元請のスタジオも増えている)。

グロス回では演出以降(時には絵コンテ込み)の工程の管理を請け負うが、作業内容自体は一般的な元請の制作工程と同じ。そのため、グロスを請け負うスタジオの人脈や管理能力が高ければクオリティが元請スタジオの回より良くなる場合もあるし、その逆のパターンも多い。また、グロススタジオもさらに孫請けのスタジオへ素材発注をする場合が多いため、クリエイターへの単価が低くなるケースもあるとか。

グロス請けを経て元請制作スタジオに成長する場合もあるほか、有名な大手スタジオが現在もグロス請けを行う場合もある。


プロダクション協力

所謂『下請け』。『アニメーション協力』とも表記される。グロス請けのように1話分すべての制作を請け負うのではなく、各工程数カット~数十カットのみ下請けを行う外部スタジオや個人クリエイター

第二原画や動画は『作画協力』『動画協力』、仕上げは『仕上げ協力』、美術は『美術協力』、撮影は『撮影協力』、CGは『3DCG協力』など、表記は様々(表記別け無しでクレジットされる場合も多い)。


制作 / プロデュース

『制作』のみであればアニメーション制作を指す場合もあるが、制作スタジオと分けて表記されている場合には、アニメーション制作をプロデュースしているスタジオやプロデュース専門企業がクレジットされる。『プロデュース』『アニメーションプロデュース』『企画プロデュース』と表記されることも。

この場合、『制作』でクレジットされているスタジオ・企業がアニメーション制作全般のプロデュースや管理を行っている。アニメスタジオがクレジットされている場合、実制作スタジオは『制作』を担当するスタジオの管理の下でアニメーション制作を行う(所謂『全グロス』)。

アニメスタジオではなく、アニメの企画プロデュースを専門に行う企業がクレジットされている場合は、一言で言えば『出資企業と制作スタジオの仲介役』を担う場合が多い。両企業の間を取り持ち座組を組むほか、アニメについて詳しくない出資者側に提案やサポートをしたり、トラブルが起きた場合にも仲介役としてどちらの立場にも立てる役割を担う。つまり、アニメに詳しくないけど参加したい企業のサポートをしてくれる

製作委員会側ともアニメスタジオ側とも違う第三者視点で全体をプロデュースしていくことから、『独立系プロデュース企業』と呼ばれることも(そのため、作品への出資等はしていない場合もある)。

東映アニメーションやトムスエンタテインメントなど、大手スタジオが版権を持つ作品の場合、彼らが権利者となり別のスタジオにアニメーション制作をすべて発注することが多い。近年はCloverWorksとWIT STUDIOによるプロデュース企業「JOEN」のように、クリエイターの待遇改善を目指してアニメスタジオ自身がプロデュースに乗り出すケースも増えている

元請アニメスタジオも含め、作品の企画から一貫して制作を引き受けている場合は『企画・制作』と表記されることもある。


【プロデューサー(製作)関連】

プロデューサー

アニメ企画において製作委員会出資企業から参加する各企業の代表担当者
基本的には各社から一人ずつ参加するが、プロデューサーを複数人立てる企業もあれば、担当を立てずに版権獲得の目的で出資のみを行う企業もある。

特に幹事企業となるプロデューサーは【企画、人集め(出資企業・元請スタジオ)、資金集め(制作費・宣伝費)&回収&分配】の中心となり、「作品をつくる」監督や「制作請負、クリエイターを集め、制作現場管理」をする制作(アニメ)プロデューサーの様な『映像制作側』とは別の、更に前の段階で作品を企画し、アニメが生まれる環境自体を用意する責任者となる。

『製作委員会方式』の煩雑化により【プロデューサー】と名前の付く役職は昔より増えているが、単に【プロデューサー】と表記される役職は、各企業の代表担当者として、出資で得た版権の運用方法や利益拡大のための道筋を決める責任者である。一言でいえば『投資家・株主』的な人。

実際にアニメ企画を立案するのはプロデューサーであることが多い。また、収益の回収、利益拡大を第一としており、最終的な放送・放映の可否を下すなど、製作陣にとって実質的な最高責任者の立ち位置であることも多い。監督や制作プロデューサーも各企業のプロデューサーの意見を優先する。脚本などへ深く関わることも多く、監督が『クリエイターをまとめ、作品を生み出す創作者』制作プロデューサーが『制作スタジオの管理責任者』であるとすれば、プロデューサーは『アニメ企画を運営・管理する責任者』である(しかし、アニメ現場について詳しくないプロデューサーもおり、現場をかき乱す事例もある)。

利益拡大が目的であるプロデューサーだが、製作委員会の各出資企業のプロデューサーが自分たちの要望ばかりを推し出していては企画が進まないため、基本的には主導権を持つ幹事企業を決めておき、その企業に最終決定をゆだねる場合も多い(主に幹事能力を持つ企画・プロデュース企業や映像販売メーカーが幹事を務めることが多い。ちなみに出資比率=発言権ではないため、出資が多ければ幹事企業になれるというわけでもない)。

プロデューサー主導で企画が生まれることが多く、プロデューサーの思い描く内容を監督が映像として表現していく方向性の作品も多い。また、上記のように作品における様々な決定の可否はプロデューサーが決めることも多く、彼ら次第で作品の出来不出来が大きく左右されるともいえる。近年では、この人数を抑える目的で出資企業を少なく編成する作品もあるとか。


エグゼクティブプロデューサー

プロデューサーよりさらに上の管理職。プロデューサーを統括する役割。プロデューサーの企画や要望に対する決定権を持つ。

現場のことはプロデューサーに任せるため、実質、名義貸しだけの存在のことも多いらしい。というより、プロデューサーの要望にGOサインを出す(捺印を押す)人という認識でよい。『製作総指揮『企画』『製作』と表記されることも。


チーフプロデューサー

プロデューサーより上の役職であり、エグゼクティブプロデューサーと同等かその下の役職

役割はエグゼクティブプロデューサー(EP)とほぼ同じでプロデューサーの統括を行うが、EPよりもさらに現場レベルで関わる。

課長が「プロデューサー」、次長が「チーフプロデューサー」、部長が「エグゼクティブプロデューサー」という認識でよいと思われる。


クリエイティブプロデューサー

クリエイティブ面から作品のプロデュースを行う職種。プロデューサーを中心とする製作チームと監督を中心とする現場をつなぐ役割がある。

具体的には双方の立場がやりたいことを実現させるために動く橋渡し役・通訳・相談役的立ち位置。そのため、クリエイター職(監督)経験者が付く場合も多い。

近年、製作委員会を構成する企業の数やライセンス業務の範囲拡大などに合わせて各企業が対応する内容も分散しており、それにより製作・スタジオ双方ともに役職・職種が増加している。分散した分、意思伝達や確認作業にも時間や人員を要し、アニメでやりたい表現も意思伝達の煩雑化からやりにくい状況が生まれた。そのような、分散してしまっている各職種をまとめるためにも重要な立場となっている。


コ・プロデューサー

Coプロデューサー』とも。副プロデューサーやプロデューサー補のことでプロデューサー補佐を務める。この名称で置かれることが日本のアニメでは珍しい職種でもある。


アソシエイトプロデューサー

プロデューサーへの制作面での補佐を行う。プロデューサーの業務代行のほか、プロデューサーが意見を求めた際には具体的に意見や助言をしてサポートをする役割もある。

見習いプロデューサーや若手プロデューサー的立場であることも多が、作品によっては、彼らが企画立案したコンテンツを展開するパターンもあり、実質的なプロデューサーとして活躍するケースもある。


アシスタントプロデューサー

プロデューサーへの業務管理の補佐を行う。アソシエイトプロデューサーより下の職種であり、プロデューサー専門の制作進行。そのため、スケジュール管理や雑務が主な仕事となる。

現在はこの名前がアソシエイトプロデューサーに置き換わるケースが多い。理由として、アニメ以外の業界においてはこの職種が所謂『制作進行』と同じ認識で使われており、アニメ業界における「制作現場ではなくビジネス面におけるプロデューサーのアシスタント」という意味合いにとらえない人が多いことが要因と言われている。


【マーケティング / プロモーション / 宣伝関連】

宣伝プロデューサー

宣伝を企画・統括するスタッフ。宣伝面全般を統括しており、宣伝プロデューサーのプロモーション戦略次第で作品の知名度や売上が大きく変化する場合もある

宣伝は製作委員会の参加企業や幹事企業内にある宣伝部が担当することもあれば、外部の専門企業に委託するケースも。製作委員会内で宣伝の中心となる企業は『宣伝幹事』と呼ばれる。


宣伝統括

宣伝スタッフを統括する職種。宣伝プロデューサーの方針に対してその可否を決める立場でもある。


宣伝

消費者向けの宣伝業務全般を行う営業マン。公式サイトやSNS運営も宣伝担当の仕事となる。『プロモーション』とも表記されるほか、作品によって国内向けの『国内宣伝『国内プロモート』『国内プロモーション』や海外向けの『海外宣伝『海外プロモート』『海外プロモーション』『グローバルプロモーション』と表記されることもある。


宣伝協力

宣伝に協力したスタッフ・業務委託企業が表記される。主に原作の出版社やその出版社お抱えの広告代理店が協力企業として書店での広告展開や連載誌での宣伝を行うことが多い。『プロモーション協力』と表記されることも。

ほかにも、個人クリエイターなどに宣伝イラストなどを発注したりする場合などにもこの表記でクレジットされる場合がある。


宣伝デザイン

宣伝に関わるデザインを手掛ける職種。『宣伝アートワーク』とも。広告を出す作品の意図をくみ取り、イメージを的確に反映させて視聴者に伝えるために大事な職種となる。

このデザインはイラストに限らず、文字のデザインや配置、構図やキャッチコピー等も含まれる(構図などは宣伝デザインが担当し、イラストはクリエイターへ発注する場合が多い)。


宣伝ライター / コピーライター

広告に載せる文言やキャッチコピーなどの広告文を考える職種。このコピー1つで商品展開が左右されるともいわれている。

アニメ作品に関する報道向けの事前情報を記した『プレスリリース』の執筆のほか、映画作品ではパンフレットの文章執筆・編集も行う。


プロモーションデザイン

扱う作品のプロモーションに関わるマーケティング戦略を考える職種。作品と顧客をどのようにつないでいくかを立案する。


セールスプロモーション

各企業、流通業者などへ販売促進活動(プロモーション)を行うスタッフ。消費者へプロモーションを行う宣伝担当と違い、業界内・企業向けの営業を行う。


パブリシティ

アニメ作品に関する新情報やその発表日などを記した事前資料である『プレスリリース』という資料を事前に各ニュースサイトや雑誌記者などのマスコミに配布し、報道・掲載してもらえるように営業を行う広報担当。『広報』『メディアプロモーション』と表記されることも。
 
宣伝マンと仕事が共通している部分もあるが、企業が自ら行う宣伝と異なり情報コントロールの主体はマスコミなどの情報を受け取った媒体側となる(そのため、公平性が保たれる)。


Webプロモーション

SNSなどインターネットを駆使してプロモーション活動(販売促進)を行う職種。『WEB担当』『デジタルプロモーション』と表記されることもある。


WEB制作

作品の公式HPのデザイン・作成を行う。『公式サイト制作』『公式ホームページ制作』『公式サイト』と表記されることもある。

同じ作品でもHPが複数ある場合はデザイン・管理会社が異なる場合もある。なお、関わるのはHPの作成までで、実際の運用管理や情報更新は宣伝を担当するスタッフが行う。


セールスプランニング

営業に関する企画・戦略を行う職種であり、主にセールス(利益回収)に必要な施策の検討を行い実行する担当者。『プランニングマネージャー』と表記されることも。


販促 / 販売促進 / 販促デザイン

販促は販売促進(SP)の略。宣伝・広告が「消費者に広く周知させる」ことが目的であるのに対し、販促は「購買の動機づけをして購入を促す」ことが目的。そのために企画・戦略を立てて実施する職種。『セールスプランニング』と同じ意味で使用されることも多い。


マーケティング

アニメコンテンツのマーケティング(企画、運用、キャンペーン)を手掛ける担当者

作品を認識してもらい視聴・購入してもらうためにする活動を「プロモーション」とするなら、顧客が自発的に作品を視聴・購入し続けるための大枠の仕組みを作る活動を「マーケティング」と言い、プロモーションはマーケティング戦略という大枠の中の一部となる(顧客獲得のために企業が行う活動の総称がマーケティングで、その企画を実現するための戦略としてプロモーションを行う。そのプロモーションの手段の中に宣伝などがある)。


予告演出

PV・CM・次回予告などを演出するスタッフ。作品に参加する演出関連スタッフや宣伝スタッフが担当する。作品によっては『予告編ディレクター』が表記されることも。


予告制作

PV・CM・次回予告などを制作・編集するスタッフ。『予告編』トレーラー制作』『PV制作』『PV・CM制作』『PV・TVスポット制作』『特報制作』と表記される場合もある。

PVなどの予告編は宣伝担当が制作する以外にも、専門スタジオに委託する場合も多い。国内では10GAUGE(テンゲージ)が有名。なかにはアニメスタジオ自身がこれらの予告関連を制作・編集する場合もある。


広告制作

予告編やCMを制作する編集者や広告企業。アニメスタジオが自ら制作することは少なく、基本的には宣伝を担当する企業が制作するほか、広告代理店に委託する場合もある。

ちなみに、広告代理店は媒体社(テレビ局、新聞社等)の媒体枠獲得のための仲介役として交渉や媒体枠の販売、広告制作等の様々な業務も行っている。


【ライセンス管理】

ライセンス統括

作品の版権(権利)に関する運用管理の統括を行う。商標管理など、作品のグッズ展開にも関わる職種。


ライツ管理

コンテンツ展開に際し、各メディアにてコンテンツを利用出来るよう、法律、契約、ビジネスなどのあらゆる側面から戦略的な提案を行う。後述のライセンス業務全般を総称してこの名称で表記する場合もある。『ライツプロモート』と表記されることも。


国内ライセンス

国内へのライセンス展開・販売を取り扱う営業職『国内ライセンシング』『国内セールス』『ライセンスコーディネート』『ライセンスコーディネーター』と表記されることもある。

国内で商品化や配信権などの権利を販売していく窓口となる。このスタッフを窓口にグッズ化などの展開が企画される。


海外ライセンス

海外へのライセンス展開・販売を行うスタッフ。『海外事業』『海外販売』『海外セールス』『海外渉外』『海外ライセンシング『ライセンスコーディネート』『ライセンスコーディネーター』『グローバルライセンス』と表記されることも。

業務内容は国内ライセンスと同様であるが、海外向けの展開を行うため、その方向性は異なる。海外出身スタッフが担当している場合もある。

近年は作品・コンテンツにおける収益の半分以上を海外ライセンスが担う場合も多く(配信権のみで作品の制作費を回収できるケースもある)、海外ライセンスの窓口獲得は製作委員会各企業にとっての最優先事項となっている場合も多い


版権管理

作品の版権、つまり著作権を管理・運用をする業務。『版権』『版権制作』『ライセンス』『プロダクションライセンス管理』と表記されることも。

他企業のライセンス担当者や商品化窓口担当者が提案する商品化企画に対し、その企画監修やイラスト制作発注、イラスト制作のスケジュール管理、サンプルなどのチェックを担当する。各企業との交渉やグッズ制作の企画・開発にも関わることがある。扱う版権はあくまでアニメ化に際したものであり、原作のある作品の場合、原作の版権管理は出版社が行っているため別の窓口となる。

版権制作はイラスト発注や監修を行う関係上、主にアニメスタジオ側の制作担当者が担う場合も多い。版権制作では、円滑に案件を進行させるために外注先との関係を構築するための能力やコミュニケーション能力が求められる

アニメスタジオがライセンス管理の一部を担う場合は『プロダクションライセンス管理』で表記されることが多い。


商品化 / 商品化ライセンス / MD

アニメコンテンツの商品化について企画・発注・監修・管理を担当する職種。『商品事業』と表記されることも。

商品を適切に消費者へ届けるための戦略でもある商品計画・商品化計画を意味する『マーチャンダイジング(MD)』で表記される場合もあり、『MD担当』『MDライセンス』と表記されることもある。


タイアップ

宣伝や販売促進のために他の企業と提携して行うプロモーション活動の一環。『タイアッププロモーション』とも。タイアップは「提携する」という意味で使われている。

キャラクターやコンテンツが持つ力を使用するために複数の企業が製作委員会と提携を行い、そのコンテンツを使用した商品を販売する。商品には製作委員会の「©マーク(著作権)」が付与されており、この表記のある商品を購入すると製作委員会にも利益が分配される。

作品によっては『タイアップ協力』と表記される場合もある。


パッケージ

BD/DVDのパッケージ製造を発注管理する職種『パッケージ製造』『パッケージコーディネート』『ビデオグラム制作』『ビデオグラム事業』『Blu-ray&DVD制作』ともクレジットされる。パッケージ専門のデザイナーである『パッケージデザイン』が表記される作品もある。


配信担当

配信サイトでアニメ作品を配信していくための窓口となる人物。『配信』『映像配信』『配信セールス』『国内配信事業』『配信ライセンス』と表記されることもある。

各配信サイトとの交渉やスケジュール調整を行う役割もあり、近年の配信時代において重要な職種となる。


番組販売

アニメーション映像を放送局・配信企業へと販売・納品するスタッフ。各放送局・企業へのアニメ販売の窓口的な存在。『国内番販』『海外番販』『番組セールス』『国内番販事業』『海外番販事業』と表記されることも。

制作映像の二次利用権を販売する仕事であり、「1話あたりの金額×話数」で取引される場合が多い。深夜アニメは製作委員会による放送枠買取か、番組販売による放送・配信のどちらかが主流と言われている。

放送枠の獲得に関しては、広告代理店が仲介役となるケースも多い。


【テレビ放送 / テレビ局関連】

番組宣伝

作品が放送されるテレビ局で番組の宣伝を行う担当者。作品の視聴率を少しでも上げるために宣伝・広告活動を検討する。

基本的には主体となる放送局の職員や製作委員会に参加するテレビ局の担当者、製作委員会内のプロモーション担当者が担う。


編成

アニメの放送枠編成を行うスタッフ。放送におけるプログラム(番組表)の組立のことを『編成』という。

主に各テレビ局の編成部門の職員が担う。


データ放送

リモコンのdボタンを押すことで利用できる情報画面。ここにクレジットされるスタッフはデータ放送を作成するスタッフ。主に夕方の時間帯に放送するアニメ作品や子供向けアニメでクレジットされることが多い。


【映画配給 / 興行関連】

配給統括

国内外への映画作品の配給業務を統括する。映画館(興行)への配給に関する最高責任者。


劇場営業

劇場への映画配給、シアターマーケティング全般、上映館のプランニング、作品に関連する宣伝・イベントの企画立案など、劇場上映に関する業務に携わる営業職。『配給営業』とクレジットされる場合もある。
 
興行会社(映画館)に営業を行い、公開館数・公開日数の確保や興行情報管理(上映のタイムテーブルや公式HP・SNS情報の管理)、前売り券・劇場物販・来場者特典の企画立案、各劇場装飾の企画、舞台挨拶運営など、映画に関係する様々な運営・営業に携わる。映画をヒットさせるためのデータ分析と戦略立案も行うため、劇場版のヒットには欠かせない職種となる。


インシアタープロモーション

シネアド(シネマアドバタイジング、映画本編上映前に流れるCM)をはじめとする映画館館内でのプロモーション戦略を担当
 
シネアド以外にも、映画館内の様々な導線を活用したプロモーション(ポスター・ステッカーの配置場所からチケットカウンターやロビー・入り口を利用した商品プロモーションなど)を企画立案する。


劇場物販担当

劇場で展開されるグッズ販売などの管理を行う職種。主に配給企業やライセンスを管理する企業が担当する。
 
劇場物販協力』が記載される場合には、劇場で販売されるグッズのデザイン・製造をした企業がクレジットされている。


パンフレット制作

劇場用のパンフレットを制作・編集する仕事。『劇場パンフレット』『劇場パンフレット制作・編集』と表記されることも。編集作業は専門企業・出版社に委託することが多い。


ライター / オフィシャルライター

パンフレットの文章執筆・編集をする職種。キャストやスタッフインタビューを行うほか、『プレスリリース』の執筆を担当することもある。


配給

製作委員会と映画興行(映画館)をつなぐ企業・部門。配給会社が大規模なシネマコンプレックス(シネコン)や独立系の小規模映画館(ミニシアター)などの興行側に営業を行うほか、P&A(上映データ【昔で言うフィルム】作成&宣伝)も行う。配給は製作幹事企業か製作委員会参加企業が担当することが多いが、未参加の大手配給企業に委託、または共同で配給を行うケースもある(配給のノウハウがなかったり上映規模が大きい場合)。

配給は完成した映画を全国の映画館オーナー(興行主)に上映してもらえるように交渉・契約する営業の仕事である。この配給は主に専門の企業が行うことが多い。その理由としては大都市の映画館から地方の個人劇場まで、様々な興行主との人脈やそれぞれに異なる収益配分の仕組み、ビジネスの進め方など、煩雑な業務内容について精通しているのが基本的に配給専門の企業のみだからである。東宝など、配給企業の規模により劇場上映の規模は大きく変化する。

配給企業には製作委員会と同等の収益(そこからP&A・配給手数料などを差し引く)が入ることも多いため、製作には関わらなくても配給のみを専門に行う企業もある。


【制作協力】

企画協力

原作の出版企業や製作委員会参加企業、その他企業などにおいて、何かしらの形で制作に協力している人物・企業がクレジットされる

漫画や小説が原作の作品の場合、出版社の編集担当の名前が記載されることが多い。ほかにも企画に協力した企業や個人、都道府県・市町村などがクレジットされる。

テレビ放送を行う際に広告代理店が製作委員会と放送局との仲介役として入り放送枠交渉・調整などを行うため、その代理店がクレジット表記される場合もある(例として、アニプレックス作品ではBS11などの土曜24時枠の取引の際に広告代理店・クオラスが仲介に入るため、同社がクレジットされる)。


協力

こちらも企画協力とほぼ同じ。ロケハンなどで取材を行った地域や企業、人物、作品または参考資料に対しては『取材協力』『監修協力』『出典』とクレジットされることが多い。


スペシャルサンクス

基本的には『企画協力』『特別協力』『協力』と同じだが、その中でも特に「感謝の意を示す」場合に使用される。『SpecialThanks』とクレジットされることも。ここに記載される基準は作品や企業によりけりである。


【製作委員会】

製作 / 製作委員会

複数の企業が出資して組織した任意組合。参加企業がアニメーション製作・ライセンス管理に関する共同制作契約を結び、収益を得た場合には出資比率に応じた利益を得る。また、各企業がそれぞれの特色を活かした窓口業務も請け負う。そして、アニメスタジオと制作委託契約を結び、アニメーションを発注する。

製作』と『制作』の違いは以下の通り。

【製作】
アニメを企画。資金を集め発注。権利を得てビジネスを行う。
【制作】
製作から受注して制作費を得る。その資金を基にクリエイターを集め、彼らに仕事を発注。制作を管理する

名称としては『○○製作委員会』と表記されることが一般的だが、特徴的な名前で表記される作品も多い。また、企業名のみが並べられる作品もある。製作委員会に参加はしないが何かしらの形で協力した場合には『製作協力』とクレジットされることがある。

映画ではEDクレジットにて『製作委員会』の枠にスタッフ名のみが記載されていることが多い。この場合は製作委員会に参加する各企業の代表委員が記載されていることが多い(製作委員会の役員は代表委員実行委員に分けられる)。また、製作委員会クレジット枠の各企業枠に大勢のスタッフが記載されている場合には、各社にて委員会関連業務(書記や補佐、広報、雑務)を務めたスタッフが全員記載されているケースが多い(なお、その企業枠にクレジットされた人数が多いから委員会内で一番発言権があるかと言われるとそれは一切関係なく、単純に関わった人数が多いだけである。特にアニメスタジオは制作や版権関連の作業を行う関係上、事務方の人数が多くなりやすい)。

各企業がアニメコンテンツに出資する最大の理由は「作品の版権(権利)獲得によるの独占的・優先的な二次利用とそれによる利益回収」にあり、利益を上げることが製作委員会の大きな使命となる。また、製作委員会を組むことで仮に赤字になった場合のリスクを分散できるメリットもある。

各企業が出資した資金は製作幹事企業が集めるが、企画立ち上げ時に一気に集めるわけではなく、契約により決められた期間に分散して少しずつ集める形式が多い。ここで集められた資金のうち、宣伝費を除いた制作費が制作委託契約を結んだアニメスタジオに振り込まれ、アニメーション制作を発注することになる(振り込みに関しては、事前に振り込まれることもあれば、各話納品後に振り込む場合や分割払いなど、作品や体制によって様々)。

製作委員会に参加した企業は二次使用の権利を生かして、それぞれの得意な分野で窓口となり、制作や宣伝、商品化に関わる(音楽メーカーは音楽制作・販売、配信会社は配信展開、グッズメーカーは商品展開など)。その過程で各委員会企業のライセンサーが営業により様々な企業とライセンス契約を結ぶことで、グッズ展開や配信展開が拡大していく。

放送・配信・公開が開始するまで、企画から2年以上は大きな収益は見込めないが、放送などの作品展開が本格的に開始して以降はライセンシーによる商品売上や配信収益、番組販売収益などが各分野のライセンサーを担当した企業に入ってくる。そして、それらの収益から手数料や人件費等を差し引いた利益が製作幹事企業に収められることになる。幹事企業は集まった利益を出資比率に合わせて参加企業に分配していくことで参加企業全体が比率に応じた利益を得ることができる(出資比率が大きいとリスクも大きいがリターンも大きい)。

ちなみに出資率=発言力というわけではない(任意組合なので出資比率に関わらず発言権は平等)。製作委員会によっては幹事会社以上に多く出資している企業もある。しかし、幹事会社は出資率の大きい企業が必ずしもなれるわけではなく、製作幹事のノウハウや窓口がある大手メーカーが請け負う場合が多い(ただし、多く出資している企業への忖度はあるとか)。

また、製作委員会は一度組織されると解散することはまず無い(著作権は公表後70年間は切れないためビジネスが続けられる)。商品展開がなくなったように見えても、どこかで再放送をやったり配信が続いていればビジネスは続くため管理する組織が必要となる(放送後10年で出資した額を回収できた作品もあるとか)。ただし、ライセンス管理のための事務費用などが得られる収入に見わないケースもあり(放送数年後、年間に百円単位しか利益が得られなくなった場合)、管理自体が簡略化していくことは多いらしい。

製作委員会では、各社より作品担当のプロデューサーが選出され、作品展開に関する会議が都度行われる。ただし、各出資企業のプロデューサーが自分たちの要望ばかりを推し出していては企画が進まないため、基本的には幹事企業に最終決定をゆだねる場合が多い。また、会議に参加するのはプロデューサーだけではなく、補佐や事務管理のスタッフなど、各社2~3名は参加するとのこと。かつては、全員の予定を合わせるのも難しかったが、近年はリモート会議によりこれらの問題は解消している。

製作委員会には制作委託を請けるアニメーションスタジオが出資している場合もあり、このケースではアニメスタジオ自身がライセンスを得て作品への二次利用の権利や委員会会議での発言権を得られる。また、製作委員会より提示される制作費以外にも、黒字になった場合の利益分配を得ることもできる。ただし、出資をする場合は赤字になったときのリスクを負う必要があるほか、そもそも出資するだけの体力がない、またはライセンス管理・窓口ができるほどの管理能力を持たないスタジオも多く、制作費と少しの二次利用印税(制作印税)のみを受け取るスタイルであればリスクが少ないため出資しないスタジオも多い(制作費以外にも出資の有無に関係なく制作スタジオには著作権が発生し、二次利用印税による収入を得る権利もあるのだが、製作委員会に出資していない場合、配分は無いに等しいと言われている。制作費だけで赤字を補えない場合、不足分を二次利用の収益で補うケースもあるが、100円単位の印税しか入らず、十分な利益が得られない話もある)。

近年では製作委員会内の意思決定を円滑に行うための取り組みとして、製作委員会の出資企業を2~3社と少なくする作品も多い(企業が少ない場合、各社から提示される決め事が減り映像制作における制約が少なくなるケースがあるほか、意思決定がスムーズになる点や黒字になった時の分配比率も多くなる。また、何十年と続くライセンス管理において、数十円の利益でも各企業への分配手続きが必要のため、その作業の手間を削減できる点もメリットになる。ただし、デメリットとして出資額の増加や赤字による経営リスクも増す)。ちなみに、近年、誤解する人が多くなっているが、2社以上が『製作』に記載されていた場合、基本的にそれは製作委員会方式の作品となる。

単独出資』という選択を取る作品もあるが、この方式は制作の自由度向上やヒットした際の収益が大きい反面、赤字だった時のダメージも製作委員会方式の場合より大きいほか、各種窓口業務を1社で担う必要があったり、制作費自体を1社で負担する必要があるため、資金も十分にある規模の大きい企業やスタジオでしか行えない方式となる。そして、それらの企業であっても、仮に赤字だった場合に備えて他の作品やコンテンツ展開による利益により、赤字を補える仕組みを事前に整えておく必要がある(その1作品だけで倒産してしまう可能性もある)。ちなみに、単独出資する1社に十分な資金が事前にない限り、「単独出資=制作費が上がる」とは限らないため、単独出資はアニメーターの待遇改善につながるとは限らない(ちなみに映像規制問題に関して、製作委員会方式のケースでも【規制最小限】や【CMなし】などの対応は可能であるため、このあたりの優位性も実は少ない)。

製作委員会方式に関しても、年々制作費が増えている話がある一方で「アニメスタジオに発注する際に支払われる制作費が要求されるクオリティに対して十分ではなく、制作費のみでは赤字経営となる」場合が多くあるらしい(製作側の人間がアニメ現場に疎いケースや所謂「脅し」、スタジオ側の交渉不足など原因は様々)。そのため、作品を複数請け負うことで赤字を補おうとすることで「自転車操業」になるスタジオも多い。まこの状況に合わせてクリエイターに支払われる単価も十分ではなくなっている(たとえ技量が基準を満たないアニメーターであっても雇われた以上は最低限の報酬を得る権利があるが、必要以上に安く買いたたかれるケースも。これはベテランであっても例外ではないとか)。そして、近年の業界における作品数増加によりアニメの需要が増える一方で、作品数に対して一定の基準に達する実力派クリエイターが集まらず現場が崩壊するケースが多くなっている(合わせて若手を育成する機会も減少傾向と言われているが、近年はスタジオ主導で育成を得る機会は増えている様子)

現在、アニメスタジオ主導のプロデュース企業が誕生しており、製作委員会方式に対する変化が期待されている。




以上、アニメ作品のクレジットまとめでした。

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