アニメ制作会社解説【スタジオKAI 編】

 アニメスタジオについて紹介するまとめ記事。前回までのufotable編に多くの反応を頂きありがとうございました。今回は今話題の新進気鋭制作スタジオ・スタジオKAIについて紹介します。

※詳細情報はウィキペディアやアニメスタッフデータベース、作画@Wiki、各作品のインタビュー記事を参照しています。

 以前調べた、ufotableに関するスタッフ情報まとめも是非。

※2024年5月更新



スタジオKAI(スタジオ櫂)とは

スタジオKAI 所属スタッフ 2024年5月現在

 スタジオKAIは2019年6月に企画・プロデュース企業【ADKエモーションズ】の子会社として設立。社名は漢字表記で『スタジオ櫂』とも表記され、船を漕ぐ道具である『櫂(かい)』が由来となっているそうです。

 設立後、ADK子会社であったアニメーション制作会社・GONZO(ゴンゾ・現在はADKから独立)より一部の制作事業・知的財産権、それらの管理・運用に関わる権利義務を継承しており、初代代表取締役社長には前・GONZO代表でもある勝村良一氏が就任しました。その後、2022年より2代目である現・代表取締役社長にADK子会社のアニメーション企画・製作・プロデュース企業、NAS(日本アドシステムズ)の代表取締役社長(当時)を務めADKエモーションズの取締役(現社長)も兼務している柴田邦彦氏が就任。2024年3月からはADKマーケティング・ソリューションズの国内ネットワークセンター長でもある大芝賢二氏が三代目代表に就任している。
 ※そのため、同社がM.S.Cと共同制作を務める『テニスの王子様』では出資・企画プロデュース・宣伝等をNASが担当しています。一方で『風都探偵』はADKホールディングスで製作を担当。

 設立直後、2020年までは同じADKの子会社同士であったGONZOの下請け・共同制作をメインに活動。GONZOが2020年に独立して以降、2021年より、『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』にて初のTVアニメシリーズの元請を務めました。


制作部門

   TVアニメ初元請制作を行った2021年に『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』や『スーパーカブ』などの話題作を手掛け、まだ若いスタジオながらその名を広めたスタジオKAI。しかし、スタジオに所属するスタッフは以前より業界で活躍する腕利きのアニメーターが集結しています。

同社の制作部門は【演出・作画部門】【3DCG部門】【制作部門】の3つ。

 3DCG部門にはGONZOのCG部門で、スタジオKAIが2020年に制作したCGアニメ『虫籠のカガステル』にてCG制作を務めたCGチーム『沖縄ゴンゾ』が2019年に解散した後にスタジオKAIにその機能を移しているそうです。

 一方で演出・作画部門にはアニメーション制作スタジオ・サテライトにて、『戦姫絶唱シンフォギア』シリーズを手掛けたキャラクターデザイン・総作画監督・作画監督・アクションアニメーター・メインアニメーターなどの主要スタッフが移籍して活動しています。これが若いながらも勢いあるアニメーション映像を制作できる理由です。

スタジオKAI 元・サテライト & 元・GONZOスタッフ

 この画像はスタジオKAIに所属するスタッフを『元・シンフォギアチーム所属』(黄)と『元・GONZOスタッフ』(赤)に別けたものです。

 この図を見るとわかるように、演出・アニメーターチームはその多くがサテライトにて活躍したシンフォギアの主要アニメーターチームで構成されています。アクションやライブシーンに定評のあるアニメーター陣で構成されていることが、TVアニメ初元請でありながら『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』におけるライブシーンのクオリティを実現させました。

 制作部に関してはサテライトとGONZOの双方のプロデューサーや制作デスクが制作部門の管理・主要スタッフとして移籍しています。サテライト側からはシンフォギア・アニメーションプロデューサーの金子文雄氏や篠笥和也氏、制作の増尾将史氏などの主力陣が同社に移籍しました。

 同社は設立当初からアニメーターの社員化にも積極的であり、所属クリエイターがメインの作品では積極的なコミュニケーションによる連携力の強化、スケジュール管理による安定した制作環境を作ることで、クオリティの向上につなげているとのことです。

特徴

 同社の特徴は『戦姫絶唱シンフォギア』シリーズで経験を得たスタッフ陣による作画で魅せるダンスアニメーションです。所属スタッフがメインとなりアニメーションを手掛ける『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』、『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』6周年MVアニメーション、『シャインポスト』アニメーションMV・ダンスパートでは、その技術力の高さを発揮しています。


ウマ娘 プリティーダービー Season 2 ダンスシーン


アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ
6周年MVアニメーション


シャインポスト アニメーションMV


TVアニメ シャインポスト ダンスシーン


風都探偵 ED
 


 ちなみに、スタジオKAIのプロデューサーやアニメーターにはアイドル好きが多いそうで、これがアイドル作品のアニメーション案件を多く引き受けている要因ではないかともいわれています(上記3作品はアイドル好きで知られる元・サテライトの制作進行・増尾将史氏が企画やプロデューサー、絵コンテで関わっています)。

 ちなみに、『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』のスタジオKAI元請回(8/13話、残りはP.A. WORKSグロス回)では、原画(第一原画)の3/4以上が社内スタッフで構成されており、作画監督に関しては元請回でほぼ全員、P.A.WORKSによるグロス回でも総作画監督・アクション作監はスタジオKAIの所属スタッフで担当。また、『シャインポスト』でも同じく所属スタッフが多くの工程を担当し、ダンスパートの主力カットも担当してます。小規模ながら所属アニメーターで多くの工程を担当しているのはサテライト時代から活躍するスタッフ陣の底力を感じます。

 一方で、ほぼ外注メンバーで作画を手掛けた『スーパーカブ』などの作品に関しても安定した品質を見せており、人脈や制作管理能力の高さが伝わります(同社作品は内制力の高いラインと外注・共同制作メインのラインが存在するようです)。

スーパーカブ PV



所属・参加スタッフ

増尾 将史(ますお まさし)

 サテライトにて制作進行を務め『戦姫絶唱シンフォギアXV』では制作デスクを務めた。スタジオKAIでは『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ 6周年MVアニメーション』『風都探偵』でアニメーションプロデューサー、『シャインポスト』にてアニメーションプロデューサーやPV絵コンテ(宗圓祐輔氏と共同)を手掛けている。
 
 『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』の制作スタジオ変更は、増尾が本プロジェクトに参加していた椛島に「ウマ娘が大好きで制作進行をやってみたい」と話し、現スタジオKAIチームがサテライトに所属していた時代にサテライト名義でOVA『BNWの誓い』第2話アニメーションを手掛けたことがきっかけとなっている。OVA制作当時、第2期制作の話題が上がっており、第1期を制作したP.A. WORKSの制作ラインの都合や「ウマ娘が大好き」と話す増尾の熱意もあり、同時期に設立されたスタジオKAIに制作が変更となった。
 
 大のアイドル好きとして知られており、『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』ではキービジュアル等の各種監修も担当、『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ 6周年MVアニメーション』『シャインポスト』ではPV絵コンテも手掛けるなど、その熱意がうかがえる。



椛島 洋介(かばしま ようすけ)

 スタジオZ5出身、その後はフリーランスとして『アクセル・ワールド』『とある科学の超電磁砲S』などの作品でメインアニメーターや総作画監督、アクション作監として活躍した。2017年から2019年まではサテライトに所属。『戦姫絶唱シンフォギアAXZ』に関わる。サテライト退社後は再びフリーランスで活動。『ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld』や『劇場版 Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット- 後編 Paladin; Agateram』のアクションで活躍した。

 2018年放送のTVアニメ『ウマ娘 プリティーダービー』にてキャラクターデザイン・総作画監督を担当。『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』でも続投した。第2期では椛島と縁のあったサテライトの制作デスク・増尾氏との縁もあり、同社『シンフォギア』チームが独立した新会社であるスタジオKAIが元請を担当。それが縁となり、同作の放送終了直後の2021年4月にスタジオKAIの所属となる。

 過去の経歴からも分かる通り、アクションやメカもの、美少女アニメから男性キャラクターばかりの女性向けアニメまで、何でもこなす万能型のアニメーター。2022年には仮面ライダーW正統続編『風都探偵』の監督も務めるなど、スタジオKAIの中核をなすアニメーターの一人となっている。



境 宗久(さかい むねひさ)

 アニメーション監督・演出家・音響監督。2022年より在籍。アニメ『ONE PIECE』の企画立ち上げから参加しており、シリーズディレクターを務めていた時期もある。2009年には劇場版『ONE PIECE FILM STRONG WORLD』の監督を務めた。

 近年は『ゾンビランドサガ』の監督として知られているが、同作のスタジオを2022年に退社し、現在はスタジオKAIに所属している。業界内でも話題のアニメーション監督である境氏ですが、アイドル作品に強いスタジオKAIでどんな作品を作るのか、期待値が高いです(ウマ娘関連のツイートをRTしているため、同作に参加するかもしれません)。



⻑⽥ 好弘(ながた よしひろ)

 サテライト作品の多くで作画監督として活躍したアニメーター。キャラクターデザイナーとしては『劇場版マクロスΔ』にて、共同キャラクターデザインの一人として参加している。

 スタジオKAIでは『シャインポスト』にてキャラクターデザイン・総作画監督を担当している。



冨永 一仁(とみなが かずひと)

 Seven Arcs作品を中心に多くの作品でメインアニメーター、作画監督を務めるアニメーター。近年は『炎炎ノ消防隊』などの作品にも参加している。

 2022年よりスタジオKAIに所属。『風都探偵』のメインアニメーターとして主要カットの多くを担当した。



中島 順(なかじま じゅん)

 『戦姫絶唱シンフォギア』にて作画監督を担当していた。スタジオKAI移籍後は『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』のメインアニメーターの一人として活躍した。

 スタジオKAIではアイドルアニメ関連での活躍が目立ち、『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ 6周年記念!「星環世界」アニメPV』の監督・絵コンテ・演出・作画監督を担当した。



宗圓 祐輔(そうえん ゆうすけ)

 『戦姫絶唱シンフォギア』の作画監督を担当。スタジオKAI移籍後は『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』のプロップデザインの他、メインアニメーターの一人としても活躍。

 アイドル好きとしても知られており、『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ 6周年記念!「星環世界」アニメPV』にてキャラクターデザイン・総作画監督を担当。『シャインポスト 「Be Your Light!!」アニメーションMV』では同じアイドル好きの制作プロデューサー・増尾氏と共同で絵コンテを担当した。



小畑 賢(おばた けん)

 『戦姫絶唱シンフォギア』の作画監督を担当。スタジオKAI移籍後は『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』のメインアニメーターの一人としても活躍。

 アクションアニメーターとしての活躍が多く、『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』では各話のレースシーンを多く担当しているほか、式地氏と共同で第1話と最終話のダンスシーンを担当し話題となった。以降も同社作品の主要カットの多くを担当している。



式地 幸喜(しきじ ゆきよし)

 アニメアール出身。サテライトでは『戦姫絶唱シンフォギア』のアクションディレクターとして活躍。膨大な数のアクションカットを担当しているとか。スタジオKAI移籍後は『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』のメインアニメーター・アクション作画監督の一人としても活躍。

 『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』ではアクション作画監督として各話のレースシーンを多く担当しているほか、小畑氏と共同で第1話と最終話のダンスシーンを担当し話題となった。以降も同社作品の主要カットの多くを担当している。

 『シャインポスト』では、第10話にてダンスパートのコンテ・演出を担当。社内スタッフのみで原画・CGパートを担当した映像は必見。



光田 史亮(こうた ふみあき)

 アニメアールで活躍したアニメーター。同社を離れてからは長年フリーランスとして活躍。アクション、エフェクト、バンクパートを得意としてお
り、とくにアクションパートは一見の価値あり。

 『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース』『戦姫絶唱シンフォギア』などの多くの作品でアクションディレクターやアクション作画監督を務め、多くのアクションシーンを描いてきた。
 
 2022年よりスタジオKAIに所属。『シャインポスト』ではライブパート原画を担当している。



井上 英紀(いのうえ ひでき)

 マッドハウス、サテライトなどで活躍したアニメーター。スタジオライブに所属していたが現在は退社し、2022年頃よりスタジオKAIに所属。

 アニメーターとして活躍する一方で演出家も務める万能型。『ARIA The ORIGINATION』第4話にて一人第一原画を担当するなどスピードも速い。同作では、主要スタッフ陣が彼に影響を受けたと言われるほどの活躍を見せている。また、銃器についての造詣が深いらしく、荒木哲郎氏は『BLACK LAGOON』制作時に銃については井上氏にアドバイスをもらっていたとのこと。

  スタジオKAIでは、『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』にて、メジロマックイーンの泣き芝居一連や成長したキタサンブラックとサトノダイヤモンドの入学シーンの原画を担当している。



土井田 竜健(といだ りゅうけん)

 サテライトで活躍した動画マン。スタジオKAI移籍後は原画マンとして各作品の主力カットに起用される活躍をしている。ダンスパートでも主力を担うなど、今後も楽しみなアニメーターの一人。


【元・所属】

藤本 さとる(ふじもと さとる)

 じゃんぐるじむ出身。A.P.P.P.でアニメーターの大田和寛氏から原画を学び、その後、フリーランスとして多くの作品に参加。とくに『ガールズ&パンツァー 』『WHITE ALBUM2』など美少女系の作品で活躍している。

 『戦姫絶唱シンフォギア』シリーズでキャラクターデザイン・総作画監督を担当。氏の代表作の一つに。『たまゆら~hitotose~』などの作品では演出も務めている。

 シンフォギア制作中はサテライトに所属しており、藤本氏がサテライトで初めて正社員になることを希望した第一号アニメーターであるとのこと。サテライトでは同時期に制作を担当した『WHITE ALBUM2』と『戦姫絶唱シンフォギアG』にてキャラクターデザイン・総作画監督を同時進行で担当。初のキャラクターデザイン作品であるのと同時に、制作が決定してから最終話の納品が終わるまで並行作業だったため、当時は死ぬかもしれないと思いながら作業していたとか。

 スタジオKAI所属後は『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』にて椛島氏と共同で総作画監督を務めたほか、オープニングアニメーションのコンテ・演出も担当している。絵コンテ・演出・作画監督・原画を担当した『骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中』第9話は必見。

  2023年末に独立し、ツインエンジン内の新たなアニメーションスタジオ「株式会社NAGOMI」の取締役に就任した。



今⻄ 亨(いまにし とおる)

 サテライト作品の多くで作画監督として活躍したアニメーター。キャラクターデザイナーとしては『終末なにしてますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?』『ガーリー・エアフォース』にて、キャラクターデザインを務めたほか、シンフォギアでも主要アニメーターとして活躍。

 スタジオKAIでは『スーパーカブ』や『骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中』にてキャラクターデザインを担当。『スーパーカブ』では繊細なタッチで手掛けたデザインが話題になったほか、『骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中』では鎧など、手間のかかるデザインをアニメーション向けに再デザインしている。

  2023年末に独立し、ツインエンジン内の新たなアニメーションスタジオ「株式会社NAGOMI」の取締役に就任した。



ハニュー

 『戦姫絶唱シンフォギア』のメインアニメーターを担当。スタジオKAI移籍後は『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』の作画監督の一人としても活躍。

 『シャインポスト 「Be Your Light!!」アニメーションMV』では、作中のメインカットであるダンスシーンの作画を担当した。

  2024年2月にツインエンジン内の新たなアニメーションスタジオ「株式会社NAGOMI」に移籍した。




 ここで紹介したクリエイターさん以外にも、多くのクリエイターさんが関わっています。ぜひ、注目していただければと。




 以上、スタジオKAIについて紹介しました。

 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


参考資料・出典↓↓↓


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