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『自己責任型セルフカストディウォレットより分散管理型があるべき姿だと思う』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.1.5

■セルフカストディ、2023年の常識に【オピニオン】

「カウンターパーティーリスクとは、投資、信用、トレーディングにおいて、相手方が合意を果たさず、契約上の義務を履行しない可能性」をいう。

こうしたリスクは中央集権型インフラにのみ存在する。通常は、カストディサービス(資産を保管・管理するサービス)が支払い不能に陥るか、業務を停止した場合に起こり、顧客は自らの資産にアクセスできなくなる。

今日から本格的に仕事始めです。
年末年始は努めてweb3の基本的なことを見つめなおしていました。トークンとはそもそも何なのか、NFT=デジタルデータが流通可能になる仕組みと受け入れにくい心理のギャップは、などなど。

そんなweb3の基本的な仕組みや思想性の中で、まだ一般に受け入れられにくい大きな課題だと感じているのがウォレットです。正確にはセルフカストディウォレット。

自己管理し、パスフレーズを忘れると全財産を失い、利用中のサービスが使えなくなり、サービス運営者に救済を求められない。そのうえインターネットやブロックチェーンの技術的構造を理解することを求め、わかっている人向けの難解な言葉遣いと説明不足を貫き、すべての責任を利用者のリテラシーのせいにしている、というのが私の今のセルフカストディウォレットに対する正直な印象。

人間は歳を取り、記憶を失い、やがて死にます。
人間は仕組みを理解するよりツールを使いこなす方に長けています。

そんな前提の人間が使うものに対して、まるでロボットを相手にしているような現行のセルフカストディウォレットの利用を強いるのは無理があるし、web3普及の大きな壁になっていると感じます。


■「セルフ」=自己責任ではなく「選択肢がある」と捉える

完全な自己責任を強いるのがセルフカストディウォレットにおける「セルフ」だと捉えると、多くの人にとっては難しいだろうと思います。

ご紹介しているオピニオン記事では「業界を挙げてセルフカストディウォレットを普及させていけばUXも改善するのだ」と楽観的な主張をしていますが、結局のところ自己の責任ではない第三者による救済が採れる方法が必要で、その救済方法が非中央集権的な仕組みで実現されることが望ましいのだろうと思います。

これまでの中央集権的サービスの場合、サービス運営のサポートにより救済が可能でしたが、サービス運営の胸先三寸でサービス利用を停止させられる恐れもはらんでいました。

よく挙げられるのがAmazonのKindle本ですね。本の所有権を買うのではなく利用権にお金を払っているだけなのでAmazonアカウントをBanされるとお金を払って「買った」にも関わらず本が読めなくなります。

なので電子書籍はNFT化して所有権を購入し、アカウントもAmazon配下でIDを発行するのではなく「自分のID」(なんとなく分散型IDを想定)が使えれば、AmazonがKindleというサービスをやめても、AmazonがアカBanしても、電子書籍を途中から廃刊にしても、手元にある本は読み続けられる。こんな世界を理想としてイメージしているんじゃないかと思います。


・自己管理型IDでさまざまなサービスが利用できる
は実現できそうな気がしますが、やはり認証できなくなった際の救済措置が(理想的には非中央集権的な方法で)あった方がいいでしょう。

ひとつのアイディアとしては、複数のサービスにコネクトしていれば複数のサービス運営の同時同意によって回復するというマルチシグ的な救済方法です。プロトコルや規格が必要になりますが、なんとなく実現できそうな気がします。

つまり、アカウントを管理するDIDやウォレットというものが完全に自己管理・自己責任である必要はなく、サービス提供者以外でも救済可能な状態かつセルフカストディウォレットでも他社ウォレットでも好みで使い分けられれる状態になれば、かなり非中央集権的、分散度合いが増すのではないかと思います。

そうなれば、MetaMaskのようなセルフカストディウォレットでもいいし、メルカリやTwitterがウォレット認証サービスを外部提供すればそれでもいいし、bitFlyerやCoincheckのような暗号資産取引所のウォレットを外部接続してもいい、敢えて超巨大中央組織であるApple IDやGoogle IDを使ってもいい。そんな選択肢が複数ある状態になればいいんじゃないかと。

そしてメインで利用中のウォレットへのアクセス方法を忘れたり、サービス終了で使えなくなったとしても、他のサービスに移行すれば継続利用できる。このあたりが標準化され採用するサービスが増えるのが未来のDIDの世界線なんじゃないかなぁと予想しています。


・運営が終了してもサービスやコンテンツを利用可能にし続ける
は多くの場合は難しいんじゃないかと思います。電子書籍やアバターのように汎用的なフォーマットが存在するジャンルならできますが、ゲームなどでは武器やキャラクターなどが他のゲームでも互換性を持って使えることはおそらくないと思います。(終了したゲームのアイテムを使わせることを狙って設計したゲームは別に登場しそうですが。)

コンテンツ側は難しいにしても、アカウントは今の完全自己責任型セルフカストディウォレットだけでなく、複数の選択肢がある状態にはできるんじゃないかと思います。


■それが分散型ID

分散型ID=DIDが来るのはもう少し年月がかかると昨年は言われていました。今年2023年も、web3サービスが新規に立ち上がるにつれ、サービスごとにアカウントを発行することがまだしばらく続くはずです。

しかし分散型IDの規格化と対応サービスの増加によって、サービスごとにアカウント発行することがなくなるのはおそらく既定路線。

完全自己責任型での分散型ID管理をイメージしているとなかなか普及しない気がしますが、複数サービスで相互補完できいざとなった時の救済方法も定義された規格であればいいなと思います。

そんな分散型IDの接続による新規サービスの利用開始フローが実現されればとても便利だしWeb2時代の中央集権的な課題の解決にもなる。そんな便利さがきっかけでweb3サービスが増えたりWeb2サービスが部分的に非中央集権的な設計に移行して、時代が徐々にweb3化していくんじゃないかなと期待も込めて予想しています。

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