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『デジタル所有で新しいゲームモデルが生まれる。デジタル競馬の妄想アイディアを例に解説』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2022.10.18

■所有権によって新しいゲームモデルが生まれる、アニモカ共同創設者が語るNFTゲームの未来

アニモカ・ブランドの共同設立者であるヤット・シュウ氏は、NFT(非代替性トークン)ゲームは可能性のほんの一部であり、デジタル所有の結果、全く新しいゲームモデルが開発されると予測している。

同感です。

NFTゲーム、ブロックチェーンゲーム(BCG)、GameFiなどいろんな呼び方がされていますが、今ローンチされているゲームはまだまだ従来型ゲームの延長線上にあり、これから「デジタル所有」をもっと活かした全く新しいゲームモデルへと進化するでしょう。

誤解のないように注釈しますが、すべてのゲームが「デジタル所有」を活かしたゲーム性になることはありません。主にBCGがもっと「デジタル所有」を活かしたゲーム性になるだろうという予測です。


■今のBCGはデジタル所有をまだ活かせていない

STEPNはNFTシューズを買い所有することで「歩いて稼ぐ」という新しいゲーム性を発明しましたが、ユーザーはNFTシューズを所有している意識はほとんどなかったと思います。

Axie Infinityではスカラーシップがデジタル所有の概念を使ったゲーム性を持っていたと思います。Axieというデジタルキャラクターの所有者がスカラーに貸し出してプレイするという遊び方は「デジタル所有」の概念があってこそのものです。

ただし現代の奴隷制度のような、持つ者と持たざる者の格差をデジタル世界にも持ち込んでしまった感がありますし、あまりにもEarnに偏重してしまった結果、ゲームプレイをAxieの所有者もスカラーも楽しんでいないという状態になってしまったのは良くなかった。これならゲームというかたちを採る必要はなくDeFiボットでよいはずです。

Axie InfinityとSTEPNはいずれも、NFTのデジタル所有の概念よりもトークンによって報酬を得るトークノミクスの方に重点があるゲームであるため、NFTのデジタル所有によるゲームの楽しさの追求には目が向けられていなかったのだろうと思います。


■デジタル所有の結果生まれる全く新しいゲームモデルの例

ご紹介した記事の中では何も具体的なことが述べられていません。

「おばあちゃんは、孫に関連するプレゼントとしてだけでなく、交流の手段としてデジタルアイテムを購入するのではないだろうか」と述べ、逆に孫が描いたデジタルイラストをおばあちゃんにプレゼントすることだってあり得ると語る。

なんて言われても、そうかもね、で終わりです。

せっかくなので、デジタル所有という概念を活かしたゲームをひとつ考えてみましょう。

ベースはNFT競馬ゲーム「ZED RUN」です。2019年に登場した比較的老舗のNFTゲームです。

Zed Runでは、自分が保有する競走馬NFTで、レースの上位を目指すゲームです。
つまり、競馬のゲームで多く見られる、レースの結果を予想するゲームではなく、馬主として、自分が獲得した馬によってレースでの勝利を目指すシステムです。
尚、Zed Runには育成要素はなくレース繁殖のみであることも特徴です。
また、実際の競馬とは異なり、世界中のユーザーが参加し、24時間開催されているため、いつでも好きな時にレースに参加することが出来ます。

非常にシンプルなゲーム性になっていますが、デジタル所有の概念をより濃くすることでもっと深みのあるゲームに勝手に仕立ててみましょう(妄想)。

ひとくち馬主としてのデジタル所有権

自分が保有する競走馬NFTでレース上位を目指すことに加えて、ひとくち馬主として馬の所有権を細分化してみましょう。1頭丸ごとは高額で買えなくても馬主になれます。

馬主になれる、というのは所有権を体感しやすいですよね。

NFTの所有権を細分化するためにERC-1155ERC-3525という規格を使うと実現できそうです。

例えば、競走馬が入賞した際に賞金の分配が得られるという金銭的なメリットがあります。自分が所有する競走馬が大きなレースなどで勝利し有名になるなどすれば、大きな利益を上げることも可能なので投資として馬主になる人もいます。

一方で、競走馬の命名権、表彰式への参加、馬主席やトレーニングセンターへの入場などの特権を味わうために、馬主になる馬好きな人もいます。

賞金分配はもちろん、命名権やスポンサー費用の分配も馬の所有者ならではです。

所有者と育成者の分業

現状のZED RUNでは馬の育成機能がありませんが、育成機能を追加した上で馬の所有者でなはなく育成者としてEarnできる道も開きましょう。

競走馬NFTのデジタル所有という概念があるからこそ、馬を所有しないで育成者として雇われて稼ぐという道が開かれます。

Axie Infinityのスカラーシップのような分業体制ですが、馬の育成方針やターゲットとするレースへのコンディションの持って生き方などを馬主と相談して決め、オーナーが丸投げするのではなくチームとして勝利を目指す一体感が醸成できるとベストです。

ひとくち馬主制度を入れた場合は馬主全員によるガバナンス投票で育成方針を決めます。

現実世界で生きた馬の世話をする厩務員と違い、馬体の手入れや馬小屋の清掃などはゲーム的に省略もできますので、生き物を相手にするシビアさはデジタル所有で少し軽減できます。

ブリードにもデジタル所有権を引き継ぐ

そして育成した馬がピークを過ぎたらブリードです。
他者所有の競走馬とも掛け合わせて新しい競走馬を生み出します。

新たに生まれる競走馬の所有権は親馬の所有割合を引き継ぎます。
強い馬同士の掛け合わせは期待が高まります。つまりNFT所有権の値段が上がります。ひとくち馬主の人にも、仔馬に引き継がれた所有権を売却して利益確定する選択肢が生まれます。

勝ち馬投票券でのゲーム参加

馬を所有せずにレースで勝ち馬投票券を買うことで参加することもアリにしましょう。日本だと賭博法にガチで抵触するのでやれる国は限られますが、馬を所有して楽しむだけでなく勝ち馬を予想して楽しむこともセットでZED RUN競馬経済圏が回ると、現実世界の競馬を超えたサービスになる可能性もあります。

デジタル競走馬であることのメリット

馬が育成できる気候や土地の条件は限られますし、生き物を扱うシビアさもあります。競馬場への馬の運搬は大変ですし馬にとっても非常に大きなストレスです。ましてや凱旋門賞のように海外への馬の輸送は本当に大変。

それがデジタル所有される馬での競馬なら、アニマルライツ的にもよろしいですし、世界中からの参加が幅広く期待できます。


■デジタル所有の概念は現実の再現

現実のモノに対する所有権というのをデジタルワールドに拡張したものが「デジタル所有」の概念です。

デジタルアイテムであっても所有できる状態にすることで、所有から得られるベネフィット享受の権利化や、非所有であることとの区別の明確化や非所有参加という新しいパートの生成も可能になります。

現実世界でできることをデジタル世界でもできるようにすることで、ゲームの楽しみ方を文字通り「リアル」にすることができるのことが、「デジタル所有の結果、全く新しいゲームモデルが開発される」ことにつながります。

NFT競馬ゲーム、ZED RUNのようなシンプルさはとっつきやすいかもしれませんが、今回妄想例で挙げたようなリアル方向は普通に流行りそうな気がします。法規クリアの目途が立てば結構行けると思いますが馬に強いメーカーさん、いかがですか?


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