見出し画像

『物流の2024年問題。フィジカルインターネット発想にブロックチェーン技術は寄与するか?』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2022.12.12

■「物流の2024年問題」のタイムリミットまで1年4カ月を切った

トラックドライバーの時間外労働の上限規制が2024年度から適用されるために、2019年度比で14%以上の輸送能力不足が顕在化するという問題だ。これによって物流コストが大幅に上昇するだけでなく、一部で貨物が運べなくなる事態が発生すると懸念されている。

「物流の2024年問題」というものがあることをこの記事で初めて知りました。

時間外労働の上限規制が理由とのことで、今は新基準の14%以上の超過労働によって物流がどうにか機能している状況には申し訳なさも感じるしサスティナブルではないよなぁとも思います。

そんな状況を改善する方法のひとつとして「フィジカルインターネット」という考え方が提唱されていることが興味深かったのでご紹介します。

物流網をインターネット回線になぞらえて、年々大容量高速化を実現してきたインターネットの進化技術を物流に応用しようという発想です。

であればブロックチェーンテクノロジーの発想にまで行きつくことがあり得るのか、いや大容量高速化はブロックチェーンに今足りないものなので物流での応用より前にブロックチェーンのL2技術の進化が先だろう、など妄想が広がります。


■フィジカルインターネットとは?

「フィジカルインターネット」とは、物体=荷物をインターネットのように大量かつ高速に送れる「物流ネットワーク」を表す言葉だ。インターネットやデジタル技術を使って物流システムを効率化するだけでなく、インターネットの仕組みを物流に応用して産業構造そのものをイノベーションしようという取り組みである。

インターネットテクノロジーを導入することで業務改善を目指す「DX」とは違うようです。

パケットは「段ボール箱」や荷物をまとめて運ぶための「パレット(荷台)」、TCP/IPは「伝票・納品書」、ハブ/ルーターは「倉庫・物流施設」に相当する。

まさしく物流網の中でのパーツをインターネット技術になぞらえることができます。

とするとパケットサイズ=段ボール箱をコンテナ単位に大きくしたり、パケロスを一定程度許容することで高速化を実現する=ウーバーイーツの配達失敗の確率をサービス内に織り込むことで高速化を実現することもインターネットに習っていると言えます。同じくウーバーイーツでは店舗と注文客を配達員が直接つなぐP2P配達も実現しています。


■物流の標準化が重要

「物流分野で標準化されているのは、世界的にみてもコンテナのサイズと欧州で使われているユーロパレットしかない。日本でもT11型パレット(1100×1100ミリ)を標準と定めたが、本格普及はこれからだ」。大和ハウス工業グループの物流ITベンダー、フレームワークスの秋葉淳一社長は、物流分野の標準化動向をそう解説する。

物流網とインターネット回線の一番の違いは「標準化」です。

段ボール=パケット、伝票=TCP/IPになぞらえるなら、物流の世界では各事業者ごとに独自規格を作り互換性がない状況です。

セブンイレブンとローソンの物流網はそれぞれで最適化努力をしているし、Amazonが翌日や数時間後など爆速で商品が届くのもAmazonの独自規格で物流運営されているからです。

かたやインターネットは標準化によって進化してきました。たとえばWi-Fiの通信規格を挙げると、5GHz帯には「11ac」と「11a」、2.4GHz帯 には「11g」「11b」の4つの規格と、両方の周波数帯で使える「11ax」「11n」がIEEEで規定されています。標準化団体、標準化規格、適用する製品、ユーザーへの普及がすべてセットになって合理的にスピードが上がってきました。

新技術については独自規格で市場の独占を図るケースもありましたが最終的には標準化されています。

たとえば映像や音声のストリーミング配信技術では、昔はFlashストリーミング、Windows Media形式、Real Mediaサーバなど配信方式が開発メーカーごとに違ったりしていましたが、今はHTTP Live Streaming方式に落ち着きました。過去の独自規格はすべて淘汰されています。

普及した方式に一本化されていくことで、その規格の中で大容量高速化が進んでいくインターネットの進化に比べて、物流網は各社独自規格のまま標準化されないところが課題です。

裏返すと2024年問題を解決するためには標準化が効きそう、ということが言えそうです。


■ブロックチェーン技術を物流に応用できる?

L2のようにL1チェーンに負荷をかけずにスケーラビリティとスループットを上げる技術はなにか応用できそうな気がします。自社物流網の上にL2物流網を持つことで、マイクロトランザクションはL2が担い基幹物流は大型パレットに集約するなど。

これは既に物流の世界でも個社ごとにやられていますので、より大容量高速化を実現するには個社ごとの物流網を横断して全体最適化させる標準化が必要そうです。

またP2P化もインターネットとブロックチェーンの関係を考えた時には大きなトレンドですので、物流網においてもP2P化によって基幹物流の負荷を下げる流れは来そうな気がします。

物流のP2P化はちゃんとモノが期日通りに届くのかの安全性・確実性が課題になりますので、P2P物流業者で共通化された伝票をパブリックブロックチェーンで透明性高く管理するような応用はあり得るかもしれません。

ブロックチェーンがまだ進化の過渡期なので物流・フィジカルインターネットに応用するのは時期尚早ですが、進化の途中であるなら未来を見据えて物流×ブロックチェーンによるソリューションを今から仕込んでおくのはワンチャンあるかも。

2024年問題ははっきりとした期限があります。その期限日までにフィジカルインターネット化で物流効率を改善できるか、そこに最新のブロックチェーン技術が寄与するのか、はたまた期限日に間に合わず物流量が制限されてしまうのか。

早く確実に届くことを改めて感謝しつつ、物流業界の労働環境の改善と2024年問題がテクノロジーで無事解決できることを願います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?