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『聴いて稼げる「PENTA」の可能性と課題、そして改善案のご提案』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2022.10.7

■〝聴いて稼げる〟プレーヤー「PENTA」を正式公開、堤氏が創る分散型音楽ビジネスの世界

堤:PENTAは一言で言うと「Listen and Earn Music Player」と呼んでいるんですが、音楽プレイヤーを分散型で提供するというものです。基本的には、ミュージシャンの方々に対するオープンな課題がいくつかあると考えていて、例えば著作権の保護や、クリエイティブな音楽制作活動に関するジレンマやマーケティングといったものがあると思うのですが、それを解決することにフォーカスしたプロダクトです。そのために2つのユーティリティを提供する手段があって、それが「Listen and Earn」と「Compose and Earn」という2つの部分になってます。

PENTAの堤さんは現在、早稲田大学創造理工学部の4年生だそうです。日本でのweb3スタートアップやメタバース界隈で早稲田大学の名前をとてもよく聞くようになりました。

先進の業界に携わりたいなら早稲田、というブランディングにも奏功しそうだと感じますがそれは別の話。

今回は音楽を聴いてEarnできるweb3音楽プレイヤー「PENTA」に関するインタビュー記事をご紹介します。

PENTAが話題に挙がったのは今年の5月、ちょうど歩いて稼げるSTEPNが大暴落をする直前、つまりピークで「〇〇して稼げる」に皆が最も熱狂していた時期です。

我も続けと「X to Earn」の「X」にいろんなものを代入するブームが起き、そのうちのひとつ「音楽を聴く」=ListenでEarnするというアイディアがPENTAで提示されました。

堤:このサービスを始めたきっかけは、どちらかと言うと音楽を中心に考えたというよりは、トークノミクスの仕組み自体に価値があると僕は考えていて、そこに音楽を当てはめたっていう方が近いです。「X to Earn」、要はX(データ)をオンチェーンに溜めるっていうことが、ブロックチェーンの先にある技術の発展にあたって必要なことだと僕は考えています。「X to Earn」はデータを載せるためのインセンティブを配布するっていうことで有用な手段だと考えたんですよね。

あれから5か月、10月5日にPENTAが正式ローンチしたということで非常に速いスピードで開発が進んだなとは感じます。しかしweb3の時代の流れはもっと早く、「to Earn」ブームが終焉してしまいました。今や「to Earn」と呼ぶと資金調達が困難になるほどです。

そこで「PENTA」も「Listen and Earn」「Compose and Earn」と、最近のトレンド通り「and Earn」という表現に変えています。

そして「聴けば稼げる」ではなくミュージシャンが抱える課題を解決するソリューション型アプローチを表に出している印象です。このポリシーの部分はおそらく当初から変わっていないのですが、打ち出し方は「Earn」がメインではない、という見え方にしたのだなと感じます。

ソリューション型アプローチ、これが本質的に大事だなと感じます。


■ListenとComposeで何の課題を解決しようとしているのか

「Listen and Earn」は、ファンに対して、音楽を聴いたら聴いた時間に応じてPENTAという我々のトークンを報酬として渡すよというものです。そこからまずブロックチェーンというフルで誰もが見られ、信頼できるデータの場所に、誰がどの音楽を聴いたかというアドレスに紐づくデータを載せることによって、ミュージシャンや音楽活動をしている方々にとってマーケティングがしやすくなります。また、それにトークンインセンティブを載せることによって、自分たちの音楽をより聴いてもらいやすくなるというところを意識しています。

「Compose and Earn」は、ミュージシャンの方々に対してベーシックインカムのようなものを提供します。音楽をアップロードしてくれたらそれに対してPENTAのトークンを配布するよっていうことをやろうと考えています。

今回のインタビューで語られているのは上記の2点です。

「Listen」も「Compose」も基本的にミュージシャン側の課題を解決しようとしていることがわかります。

つまりミュージシャンが音楽で食っていけるようにする、が広い意味でPENTAが解決しようとしている課題だと言えます。

「Listen」については上記の「誰がどの音楽を聴いたか」に留まらず

堤:僕たちはどの程度聴いてるかっていうのもある程度可視化したいなと思っています。(中略)

これは最初からは難しいので、後々実装していく前提なんですけど、イヤホンのカバー部分に脳波のセンサーと音波のセンサーを同時に取り付ける。音波の方はイヤホンから音が出てるよねっていうのが分かり、脳波の方はどの周波数の脳波、またはどこの部分の脳波が活性化しているかがリアルタイムで取れるので、それを元に音楽を聴いている時に反応する脳波だったり、またはリラックスしているのか、興奮しているのかっていう状態を同時に取ることで証明できないかなと考えています。

どのくらい楽しんだか、感動したかなどの深さ・程度も可視化することで、ミュージシャンが世に問うた作品がどのくらい心に響いたかまでを可視化する構想も述べられています。

これが作品作りに反映されることで、よりリスナー・ファンに求められる楽曲が作れるようになる、という音楽業界のデータマーケティングとPDCAを実現できるようになるかもしれません。


■感動する楽曲のデータは何のため?

・・・とストレートに受け取ればそうなのですが、

・データに基づいて作られた芸術作品で本当に感動するのかの直感的な違和感
・データ傾向がわかった上での「感動する楽曲」を制作できる再現性は
・感動する楽曲と商業的な成功の相関関係
・ミュージシャン自身やレーベルなど周辺ビジネスの人が求めるのは感動する楽曲なのか、商業的な成功なのか、そのバランスは

などの疑問は湧いてきます。

そこで「Compose and Earn」によるベーシックインカムがセットになっているように見えます。インディーズミュージシャンが増えているトレンドと合わせて、音楽で最低限食っていける人が増えることで「感動する音楽」を目指しやすい環境が望まれる仕掛けになっています。

また、不正対策にも「感動する音楽」は役立ちます。Earn目的だけなら誰も聴いていないイヤホンから音が出ているだけ、という不正が容易に思いつきますので、感動度合いを測ることとセットにすることで不正対策が打てます。むしろEarnを打ち出すなら必須です。


■STEPNベースの問題点とPENTAのトークノミクス改善案

このサービスは最初にヘッドホンという NFT のデジタルアセットを購入する必要があって、その売上や、ユーザの二次流通の手数料が原資になります。ただそれだけでは不足していて、トークンを配布する分にはお金は減らないんですけど、イーサリアムなど他のコインに変えるときに減っていくんです。そこの流動性が原資になっています。

ヘッドフォンNFTを買って独自トークンをEarnし換金して利確する、というのはSTEPNと全く同じ構造です。

ユーザーの初期課金のみがEarn原資になっており、ユーザー課金以外の外貨が入らない・Earnに関係ない課金要素が不明、というSTEPNと同じ弱み・課題をそのまま抱えているように見えます。

加えて前述の「脳波センサー付きデバイス」「脳波測定と分析」など運営コストが高くなる要素も見え隠れしています。

・継続的な課金要素、Earnと関係ない課金要素
・外貨の獲得
・ローコスト運営

が「and Earn」とEarnニュアンスを弱めたとしても必要です。

上記の要素を踏まえてトークノミクス設計を改善するなら、

・NFTを通じた月額制ファンクラブの組成
- 無名なころは安く、有名になると値上がりするキャピタルゲインでのEarnの提供
- NFTの所有量、レアリティに応じてEarnできるトークン量が増えるが、トークンが売却できるのは1年後・3年後などロックアップがかかる
- NFT所有者(=ファンクラブ会員)はライブチケットの優先購入権、新曲を先行で聴ける権利、自分のために作詞作曲してくれる権利、ミュージシャンと1on1で話ができる権利などをEarnしたトークンで支払うことで獲得
- これら権利はトークンで買うが、ライブチケットを実際に買うなどは法定通貨での支払い
- トークンのみで買えるグッズも用意
- トークンをETHやUSDCなどに換金もできるが、チケット優先購入権を買うにはトークンが必要なのでむしろトークンを買いたくなる、買い圧を高める
- 応援しているミュージシャンが1年後に売れた暁に、ファンならNFTは売りにくい、トークンも売るより人気ミュージシャンのために使いたくなる

こんな感じならどうでしょう。

聴くだけでEarnできる、という部分の不正対策としてはシンプルに、聴くだけでのEarn量を圧倒的に小さくする。これならローコストです。

むしろミュージシャンが人気を上げるためにSNSで拡散する、ライブにチケットを買って参加する、楽曲やグッズを買うなど、貢献するさまざまなアクションをする方にトークンを多く支払う設計とします。

稼いだトークンも現金化されるよりミュージシャンのために使われ、むしろ足りなくなってトークン自体を買いたくなるのがベスト。

ミュージシャンが音楽で食っていけるようにする、というソリューションをweb3のトークノミクスで提供するには、STEPNのようにEarnで出銭ばかり増えるモデルではなく、EarnしたトークンがミュージシャンのためにBurnされる設計であるべきです。

成功の程度はミュージシャンごとに違いますが、100人の有料・優良なファンが付けば食っていけるソリューションはこんな感じで提供できるんじゃないかと思います。

聴かれた量に応じて支払われるSpotifyのモデルではミュージシャンが食っていくソリューションにならないことは明白になってきているので、聴いた量に応じてEarnされる「Listen and Earn」のモデルよりも、よりファンダムに近いモデルの方がソリューションになりそう。

PENTAは始まったばかり。音楽ファンとミュージシャンがweb3・ブロックチェーンのテクノロジーでよりハッピーになる世界線が実現が来るとよいなと思います。

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