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『テレグラムがブロックチェーンIDを採用。メリット・デメリットを整理』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2022.12.16

■テレグラムが電話番号登録なしで利用可能に、ブロックチェーンID採用で

メッセージングアプリ「テレグラム」は6日、プライバシー性能を高める機能を複数実装したことを発表した。特に、携帯電話に搭載しているSIMカード(個人情報識別用カード)なしでアカウントを作成できるようになっている。

Webやアプリのサービスを新しく使い始める時にアカウントを作りますよね。そして2度目以降はそのアカウントでサインインします。

この「アカウント開設~サインイン」の方法、ひと昔前はIDとパスワードでしたが最近は別の方法が試されています。でもこれがベストだという方法は固まってないように思います。

最近非常に多い「電話番号・SMS認証」をテレグラムでは不要にしたそうです。そのかわりに「ブロックチェーンID」なるものを実装したとしています。目的はプライバシー保護です。

電話ニーズが圧倒的に減少している中でいつまで電話番号を鍵代わりに使うのかも違和感がありましたので、脱電話番号というのはプライバシー面以外でも必然性がありそうです。

今回テレグラムに採用されている「ブロックチェーンID」、課題は多数ありますが、これから先の大きなトレンドの方向性だろうなと感じます。


■ユーザーIDをNFTにして発行する

テレグラムによると、ユーザーネームはパブリックブロックチェーンであるTON(The Open Network)上のNFTとして保存されるとのこと。TONはテレグラムが開発に関わったブロックチェーンである。

ユーザーIDをブロックチェーン上のNFTとして発行するのがブロックチェーンIDです。

このIDは有料で、オークション形式で発行売買されます。支払いはチェーンネイティブトークンであるTONトークンで行います。

つまりこのブロックチェーンIDを持たないと使えないならば

・アカウント開設が有料になる
・テレグラムなど使いたいサービスの外部でアカウントを買ってくる必要がある

ということになります。

認証の方法は詳しく書かれていませんが、ウォレット接続してNFT IDを確認する方法なのだろうと思います。そうすることでウォレットのアカウントやシードフレーズの管理のみに集中できます。


■ブロックチェーンIDのデメリット

先にデメリットから挙げると

・アカウント開設にお金がかかる。無償発行でもガス代はかかる。
・アカウントが有償になるためユーザー数が増えづらく、サービスが盛り上がらない恐れがある。
・使いたいサービスだけで操作が完結せず、外部サービスでIDを発行するのが面倒。
・指定されたチェーンのウォレットやトークンを使わなければならない。普段使わないチェーンだとわざわざ感が強い。

が主でしょうか。

さらに究極のリスクとして

IDを発行したチェーン自体がサービスを停止すると、発行したIDを使うサービスが連鎖して使用不可能になる恐れがあります。TONも過去に開発中止に追い込まれたことがありますし、メジャーなSolanaチェーンすらFTX事件で先行きが強く悲観されました。

ブロックチェーン上に刻まれたNFT IDだから永続性があるわけではないことは注意が必要です。


■ブロックチェーンIDのメリット

続いてメリットは

・テレグラムなどサービス側にアカウント情報がないため、ハッキングされても個人情報が漏洩しない。(今回テレグラムがブロックチェーンIDを導入した動機のひとつ)
・ブロックチェーンIDひとつで複数のサービスにサインインできる可能性。自分という存在をID化することができそう。
・サインイン時、ウォレットの管理のみで済み、サービス毎のIDの管理をする必要がなくなる。

などが挙げられます。

ただこれらはFacebook認証などSNS連携、Apple IDやGoogle IDによる認証とあまり変わりがありません。Facebookというサービスが終了する可能性とブロックチェーン自体が終了する可能性を比較してどちらが永続性が高いかを考えるような類のもので、ユーザーの体験としてはほぼ同じです。

web3的には特定企業にID=アイデンティティという大切なものの生殺与奪権を握られていることを危険だと考えるので、より永続性の高いブロックチェーンにIDを持つ方が好ましく感じそうです。

FacebookがなくなるよりFacebookアカウントがBANされる方が可能性は高そうですし、であればブロックチェーンIDの方がよさそうに思えます。


運営目線ではID発行をオークション売買させ手数料が取れるのはビジネス上の大きなメリットになると思いますが、他人のIDだったものを後から二次流通で売却する方法があるのはなりすましやマネロンなど悪いことに使えそうで怖いと感じます。

ブロックチェーンIDはその性質上、移転不可能なSBTとして発行するのが筋で、オークションなどビジネスチャンスにするなら一次販売のみにする方が適切だと思います。

それにTONトークンの需要を喚起し買い圧を高める効果も期待していると思いますが、マイナーチェーンにIDを持つことは怖い。やはりメジャーチェーンで共通ID化したいところです。


■認証方法はまだ模索が続きそう

おそらくウォレット接続でNFT IDの保有有無やIDの確認を行うのだろうと推測しましたが、

・ウォレットがチェーンごとに乱立している現状、結局いくつも管理しなければならないことに大差ない。
・ウォレットのシードフレーズをなくしてアクセス不能になる人は多い。
・詐欺サイトに不用意に接続しNFTを盗まれる人も多い。
・ブロックチェーン上のデータは盗まれた場合でも復旧が不可能。

など今のウォレットの扱い方では一般普及させるにはハードルが高すぎます。

Google Authenticatorを使った認証も増えてきましたが、サインインのたびに使うのは面倒に感じますし、全世代に使いやすいUXだとも言えません。


■分散型ID&認証のUXリテラシーを下げることが課題

安全性と利便性の兼ね合いでどちらに比重を置くかということになりますが、認証面では顔認証など生体認証が安全かつ簡単だと感じます。例えばApple ID+iPhoneでの顔認証サインインなら楽です。しかしIDをAppleに握られますしiPhoneから逃れられなくなります。

ブロックチェーンの分散思想は魅力を感じますが、まだ一般普及するには難易度が高く、どうしても中央集権的サービスでなければ多くの人が使えないのが現状。

テレグラムが採用したブロックチェーンIDも万人向けではないと感じます。

非中央集権型・分散型IDと認証の仕組みを、誰でも使えるUXに落とし込むことができるか。アカウント開設と認証が必要なサービスは無限にあり需要は非常に高いはず。これから数年トライされていく分野なのだろうと思います。

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