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『エビスビールの生存戦略 ファンコミュニティーでインサイトをつかむ』~【web3&AI-テックビジネスのアイディアのタネ】2024.3.15

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■エビスビールの生存戦略 ファンコミュニティーでインサイトをつかむ

ビールブランド「YEBISU(エビス)」を手掛けるサッポロビールは、2022年から同ブランドのファンコミュニティー「エビスビアタウン」の運営を開始した。目的は情緒的価値の醸成。コミュニティー参加者とブランドのつながりを強化するとともに、ロイヤルティーの高い顧客の詳細な情報を取得して、ライト・ミドル顧客向けの施策に活用するのが狙いだ。機能的価値のコモディティー化が進むビール業界。エビスの生き残り戦略に迫る。

キービジュアルがこんな3Dイラストなのでメタバース関連のニュースかと思いきや、3Dなのはキービジュアルだけでした。

2022年に作られ今日まで運営され続けている『ヱビスビールタウン』というコミュニティサイトが、2年経って登録者数が12万人を超えているそう。

日経XTRENDの今朝のメルマガで知ってさっそく登録しました。
ヱビスビアタウンのサイトはこちら


ファンコミュニティで差別化する戦略

ロイヤルティーが高い顧客の特徴や、彼ら彼女らが感じるエビスビールの価値を、収集した顧客の声、いわゆる「ゼロ・パーティー・データ」から分析し、ライト・ミドルユーザー向け施策にも反映することを目的としている。

メタバース系ニュースなのか?というのがフックでしたが、違うと分かると次は、ビールのブランドがコミュニティサイトを作っていることに興味と疑問を持ちました。

・ビール類は年々消費が落ちている
・若い人が飲まなくなっている
・若い人はビールに限らずアルコール自体から離れつつある
・第3のビールも味がよくなり、ヱビスが属する高価格帯ビールとの味の差が(一般には)縮まっている

という課題をニュースなどでよく耳にします。

これら課題への対策としてアサヒは「フルオープン缶」、キリンは「地方クラフトビール」という商品そのもので勝負していますが、サッポロのエビスビールは「コミュニティ」。

少し遠回りな印象を持ちましたが、しかし商品そのもので勝負するのも刹那的です。商品勝負では、飽きられては次を投入・他社も季節商品など似たようなことをやる・あとは店頭の棚取りと価格やオマケ勝負になりがちです。

コミュニティが強固に作れたなら、似たような商品が並ぶなかでも「応援」「味方」「仲間」として積極的に選ばれるようになり、ファンが周りに広げてくれる存在になり得るかもしれません。

しかしコミュニティ発で買われる量や金額は「フルオープン缶」のような爆発力はないはずです。そういう意味ではトップが採れる戦略ではないかもしれません。

それでもコミュニティを時間をかけて作り育てていくというやり方は、ファンや推し活が経済を回し始めている現代のインサイトにはとてもマッチしたものだと感じました。


まずは熱量の高いファンの声を直接聞くために作られた

とはいえ、ファンコミュニティを作るのは大変です。
長く続ける覚悟が必要ですし、すぐに大きな売り上げに直結しないぶん、社内説得も含めた胆力が必要です。

そのためか、まずエビスビールタウンの立ち上げ時点での目的を「熱量の高いファンの声を直接聞くこと」としたのは非常にうまいと感じました。

コミュニティ発の直接売上を目的化するのは無理がありますし、ファンも離れます。

普段からも別途行っているマーケティングリサーチの一環として位置付けて、熱烈なファンを留め置いて自社で話が聞ける関係を持っておくとすれば、これまで調査会社にアンケート依頼していたコストの置き換えと見なせます。

ファンを留め置くためのコンテンツ運用やイベント企画には別のコストがかかりますが、コンテンツやイベントを考える中でファンの声を聞き自社の強みや弱みを改めて考えるきっかけにもなりそうで、社内もファンに向けた商品づくりや情報発信を意識するようになるという効果もありそうです。


会員登録時のファン度を訊くのがおもしろい

会員登録する際に、ファン度を尋ねられました。これもいい工夫だなと感じます。

登録するくらいですから全く無縁ではないと思いますが、会員の意見を聞く際に熱烈なファン「だけ」の声を聞くと、熱量がそこまで高くない人を置いてけぼりにする案だったりもします。

また自主申告のファン度と実際のサイトでの発言数やイベントの参加回数などを比較しても面白いデータが取れそうです。


地方系メタバースを企画する参考に

ビジュアルからメタバースかと誤解はしましたが、メタバースを立ち上げ運営する際のアイディアに活かせる部分は多いと感じました。

まず、熱熱なファンをまずターゲットにして、その方々に喜んでもらう、意見を聞くことを目的にするのはすぐに真似できそうです。

また、長く運営する覚悟という面でも参考になります。何度もここでは言ってますが、お城などランドマークを作っただけの「箱バース」は長く続ける意思が感じられません。

コンスタントに情報発信をしたり、イベントを企画するなど、運営が熱心であることは絶対的に必要です。

そして最も重要なのが、運営とファンの直接のコミュニケーションです。「箱バース」には運営が現場にいないことが多すぎます。地方都市の「関係人口創出」をユーザー任せにしてはいけません。

3Dである必然性があるかないかも本当は考えなければならないと思いますが、3Dでも記事中心でも、ファンと長く一緒に地元を盛り上げていくんだという目的意識と覚悟が必要です。

エビスビールタウンは2年運用され12万人の会員を有するところまで育ちました。記事を読んでいると他でもないヱビスを選びたくなりますし、イベントにも参加したくなります。

会員のコメントが「まだよくわかってませんが1年経ちました」というほほえましい書き込みが多くてほっこりします(笑)ファンだけどWebエキスパートではない、積極的に情報発信するタイプではない人もちゃんと居られる場になっているのだなぁと感じさせます。

居心地のよい場所だなと思ってもらえることがコミュニティの真骨頂だろうと思います。

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