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『GoogleのチャットAI「Bard」でYouTube動画の内容を要約させることが可能に、コンテンツ作成者に悪影響が及ぶ懸念も』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.11.25


■GoogleのチャットAI「Bard」でYouTube動画の内容を要約させることが可能に、コンテンツ作成者に悪影響が及ぶ懸念も

Bardは2023年9月に追加された「Bard Extensions」により、特定のトピックに関連するYouTube動画を表示することなどが可能になりました。ただ、動画の内容について詳細な質問をすることはできなかったのですが、2023年11月のアップデートによってBardはYouTube動画の内容をより深く分析するようになり、動画の要約や内容に関する質問について回答するできるようになりました。

YouTubeを運営するGoogleならではのAIの使い方。Google製AI「Bard」が、YouTube動画の中身を検索・要約できるようになり、動画のに関する質問もできるようになりました。

ただし今のところアメリカだけでの実験的なサービス提供のようで、今のところ日本では使えません。

動画は検索できないことが課題でしたが、今回のBardの対応で検索も要約もできるようになるのはとても便利です。

Our mission is to organize the world’s information and make it universally accessible and useful
Google の使命は、世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスして使えるようにすること。

Googleの当初のミッションは「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスして使えるようにすること」ですから、動画も検索可能にするのは社是には適っています。できればポッドキャストなど音声コンテンツにも対応してほしいと思います。

しかし、動画を見ずにテキスト要約で結論だけを得られるようになれば、動画クリエイターの収益は減少します。収益が減ればYouTube動画の数が減ります。

自分で自分の首を絞めているように見えるGoogleの今回の対応、大丈夫なんでしょうか。


YouTube動画は長くダルくユーザー離れ

YouTubeは8分以上の動画から広告収益が得られる仕組みを採っています。2020年7月の仕様変更以前は10分以上でした。

10分だと長すぎてユーザーが離れると判断して8分に短縮したわけですが、8分でも長いと感じる無駄に結論を引き延ばすダルい動画が多く、TikTokに代表される短尺でサクッと結論から言うショート動画にユーザーを奪われています。

そのため、YouTube自身もYouTubeショートを開始するなどして対抗していますが、クリエイターは「ショートのほうが見られるが、ショートだと稼げない」というジレンマに陥っています。

ヒカキンやはじめしゃちょーなど超有名ユーチューバーを抱えるUUUMも、

決算短信では「ショート動画の再生回数は大きく伸長しているものの、アドセンス収益としては現時点で不安定であること等を受けて、アドセンス売上が減少」と説明しています。

と、YouTube動画は稼げないことに苦労します。

これにさらにBard AIによる要約機能が世界で利用可能になれば、クリエイターからはますます「YouTubeは稼げないプラットフォーム」だと見なされるでしょう。


むしろ超長尺化がトレンド、AIと相性がいい

長くなる動画の時間
制作する動画の時間を長くするクリエイターの動きは、「YouTubeが推奨エンジンや検索・発見を切り替えてきた(オーディエンスを新しいチャンネルやクリエイターに振り向けてきた)、この2年間とかなり関係がある」と、ファインブラザーズ・エンターテイメント(Fine Brothers Entertainment)のCEOであるラフィ・ファイン氏は語る。

TikTokをはじめとするショート動画の台頭に対して、YouTubeではむしろ超長尺化する流れも起きています。極端なものだと3時間を超える動画も以前よりずっと増えたと感じます。

ラジオ番組をYouTubeでも同時配信する試みも増えてきています。ラジオを日本全国・世界各地まで届けられるうえ、アーカイブとしての機能も果たします。しかしそのアーカイブは1時間や3時間など超長尺になります。

3時間ともなると、検索や要約、そして自動でチャプターを入れる機能などがどうしても必要になります。これをBard AIがになってくれれば、動画全体が長くても必要なところだけを見ることができ、結果的にクリエイターも収益が得られやすくなるかもしれません。


AIの精度は改善の余地あり

この「エスプレッソ・マティーニ」のレシピ動画で検証が行われています。

海外メディアのThe Vergeは、料理系YouTubeチャンネルのAmerica's Test Kitchenが投稿したエスプレッソを使ったカクテル「エスプレッソ・マティーニ」のレシピ動画を使い、Bardの新機能をテストしました。その結果、材料の完全なリストと手順をBardが説明してくれたそうです。
(中略)
Bardの回答と動画内容を見比べた結果、手順についてはかなり正確であることがわかりました。一方、材料については動画中だと「vodka(ウォッカ)」ではなく熟成したラム酒が使われており、0.75オンス加えるのは「Kahlua(カルーア)」ではなくベネディクティンで、0.5オンス加えるのは「simple syrup(単シロップ:砂糖水)」ではなくコーヒーリキュールであるといった問題点もあり、そのままうのみにしてしまうのは危険という印象です。

音声をテキストに起こして、そのテキストの内容を使ってレシピを書き出す、という比較的簡単そうな作業にも関わらず、間違ったレシピを出力してしまうのが現状のようです。

精度については改善の余地がありますが、時間の問題でしょう。


AIで便利になることが奏功するか離反するか

動画を検索・要約可能にして利便性を上げ、結果的にYouTube動画がより便利になることから広告収益も上がりやすくなるのか、それとも要約機能だけが使われて動画が見られなくなり、広告主もクリエイターもYouTubeから離れてしまうのか。

AIの技術的な実験であることもさることながら、GoogleとしてはAIでYouTubeを再価値化できるかどうかの実験でもあるのだろうと思います。

動画が検索可能になるのは本当に便利なので技術的には実現してほしいですが、やはりショート動画など手軽なものには勝てない気もします。さて、どちらに転がるでしょうか。

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