一度失った信頼はもう取り戻せない

100均ってあるじゃないですか。あれ、私あんまり好きじゃないという話です。良い、悪い、という話ではなくて、私あんまり好きじゃないという話です。

昔からの個人の主観なのですが、100均で買えるものってもう+200円くらい出したら使い心地というか、全体的なユーザーエクスペリエンスが格段に向上すると思ってるんですよ。ユーザーエクスペリエンスね。ユーザーエクスペリエンス。なんかこう例えばファスナー系とか、100均のものより+200円位出したやつの方がスゥーっていく感じしません?途中で引っかかったりしなくなくなくないですか?
みたいな個人の思想が理由であんまり100均で買い物してこなかったんですよね。

で、なんとまあ身近なところで妻は100均大好きなんですよ。すぐ100均で買い物する。
だからといってもう私も30代に突入してるのでそんな個人の宗教観を妻に押し付けるようなことはほとんど、ほとーんどしなくて、仲良くやっていたんですね。

ここでタイトルに戻るんですが、もう完全に信頼を失った事件があったんですよ。
話はさかのぼって第1子の出産直前。夫婦で出産時の入院グッズを買い出しに近所に出かけたんですね。
出産のプロダクトオーナーは妻だったので買い出しに行く場所も妻に選択権がある。妻は100均に行く。私はほんのりと反対の空気をかもし出しつつ妻に付いていく。

で、このとき買ったうちのひとつに「ペットボトルのキャップにストローを取り付けられる」というやつがありました。

こういうやつです。キャップを取り替えたら市販のストローを差し込めてこぼれづらく飲みやすいという。
出産時は飲み物を飲むのも大変だからこういうのがあった方がいい、という情報を得ていたので買っておいたんですよ。100均で。ストローも同封されてたのでこれひとつで十分使えるねーって言いながら。

んでいざ出産ですよ。出産に立ち会ったことのある男性の方ならご理解いただける方もいらっしゃるかもしれませんが、こと出産に立ち会うときの無力感って半端ないんですよ。目の前で最愛の妻が苦しんでいるのに何もしてあげることができない。
私もそれはもう「俺は、なんて無力なんだ...」という思いでいっぱいになっていました。

だから、妻が「お茶飲みたい...」といったときはもう全力でペットボトルのキャップにストローを取り付けられるやつを用意しました。「俺の生命の意義、ここにあり」くらいの勢いでペットボトルのお茶のキャップを取り替え、そしてそこに同封されていたストローを差し込む。

オッ、ストローを差し込めない。ストローを差し込めるはずの穴に、ストローを差し込めない。
あれっ、なんかこれ同封されてるストローと穴のサイズ合ってなくない?穴よりストローの方が一回り大きいからこれストローは穴に入らなくない?

そうです、やられたのです。完全に不良品をつかまされたのです。このタイミングで。よりによってこのタイミングで。

無情にもただ過ぎゆく時間。
いきむ妻。
ストローを穴に差し込もうとして差し込めず、右往左往する私。

これほど、惨めな思いをしたこともありませんでした。

結局、そこから一気にお産が進んだこともあってお茶を飲ませてあげることはできませんでした。
いろんなことで気が動転しきった私はそこからの記憶があまりなく、気づいたら子は無事に産まれていました。

一度失った信頼はもう取り戻せない。

今でも100均の前を通ると、あの時のことを思い出し、古傷が疼くのを感じます。

もし時を戻せるなら、100均ではなくこの記事に貼ったAmazonのやつを買って持って行きたい。
たとえ何万回分の1の確率でも、1は確実に存在している。そういう気持ちをもってプロダクト開発していきたい。
数字の中には生身の人間がいる。そのことを忘れずにプロダクト開発していきたい。

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