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命の保証も無いけれど

腹が減った。昨日の夜も今朝も食べ損ねて、僕は知らない街でふらふらしている。最後の食事は昨日の昼だ。24時間も何も食わないでいたら、人間は餓死するんじゃないか。道行く人の中で、僕だけが瀕死の空腹に耐えている。

なんでもいい。何か食おう。看板が見える、天ぷら、うどん、コンビニでもいい、あのスーパーで惣菜を買ってもいい。だが決められない。自分で自分を焦らしてしまう。空腹は最高のスパイスなのだ。今から食う飯は、何年かに一度の最高の御馳走になるのだ。そう思うと、つまらないものでこの機会を消費してはもったいない気がしてしまう。

それで30分も歩き回っている。僕はあほなのか。決断力のなさのせいもある。いよいよ疲労したら諦めてコンビニのパンでも食うのだろうが、それまでは彷徨ってしまう。

ふと、「リストランテ・コロッセオ」と書かれた看板が見えた。これは食い物の店か? 僕は導かれるように、その店へ入った。


(続く)

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