巨大猫型奇術師バーディ
「バーディ、ちゅっちゅ」
あったかいマンションの一室で、僕は愛しき飼い猫の名を呼ぶ。何度か呼んで、バーディは気だるそうに来てくれる。
「おーよしよしよしよし」
撫でてやると、まんざらでもなさそうな顔をする。かわいいなあ。
バーディは僕の手からするりと逃れ、壁に貼ってあるポスターを見上げた。
「ん、それはね、知り合いの変なおじさんからもらったんだよ」
電光ナンチャラなんとかマンみたいな、巨大ロボットのポスターだった。あの人、40になってまだこういうのが好きで、独身で、髭もじゃで白衣で、自称「博士」だし毎日ガレージで何か作ってるし、東大卒らしいけど変な人なんじゃなかろうか。僕も人のこと言えないけど。
「バーディ、ほら見て、手品やるよ」
トランプを取り出すと、バーディは行儀よく座って僕の手つきを見ている。カードを切る音、二人の世界。僕は売れない手品師で、消えそうな夢を抱えて、猫と穏やかに暮らしているのである。
(続く)
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