#24 相手の「原点」&「将来ビジョン」を共有する / 人間関係を深める仕事の習慣
こんにちは、森本千賀子です。
今回から『ゆるぎない信頼関係を築く~真の「ビジネスパートナー」になるために~』のパートになります。”ゆるぎない信頼関係を築く(1)”です。
相手の「原点」&「将来ビジョン」を共有する
何か課題が持ち上がったとき、困ったとき、真っ先に自分を思い出していただける―—。
いつも私が目指しているのは、そんな存在です。
私の仕事は、企業に対して人材戦略・採用に関するコンサルティングを行い、ふさわしい人材をご紹介することです。こうしたサービスを手がけている企業は多数あり、つまりは「競合」が多い環境にあります。
そうした中、企業で人材ニーズが発生した際、すぐに「森本さんに相談しよう」と思っていただけるためには、相手企業をいかに深く理解するかが大きなポイントとなっていると思います。
ある企業の人事担当の方から、こんなことを言われたことがありました。
「うちの会社にも人材会社の営業はたくさん来るけれど、森本さんは質問してくる内容が他の人たちと全然違うよね」
どうやら、多くの営業マンたちのヒアリングは、「御社が求めている人物とは、どんな経験・スキルを持つ人ですか?」「どんなタイプの人が社風に合いますか?」といった内容に終始することが多いようです。
一方、私の場合は、初期の段階で、その会社の「過去」「現在」「未来」について質問します。つまり、創業時から現在に至るまでの経緯、将来ビジョンまでをお聞きするのです。たとえば、こんな質問を投げかけます。
●創業の背景、きっかけは?当時のメンバーは?
●創業当時の夢、目指していた目標・ビジョンは?
●一番最初の顧客とは、どのように取引が始まったのか?
●創業当時、どんな苦労があったのか?
●会社の「ターニングポイント」となった出来事とは?
●一気に従業員が増えたのは、どういうタイミングだったのか?
●現在の「3C=Customer(市場・顧客)・Competitor(競合)、Company(自社)」
●現状の組織図と組織概要
●今後の事業計画は?(現在の路線を維持していくのか、多角展開していくのか。
海外などマーケットを拡大していく計画はあるのか、など)
●最終的にどんなゴールを目指しているのか?
●社長自身は、ご自身の人生についてどんなビジョンを描いているのか?
相手が社長や役員レベルの方である場合はもちろん、「人事部長/課長」といった担当者が相手であっても、その方がわかる範囲でお話を伺います。
相手の方も、自社に興味を持ってもらえるのはうれしいもの。「ちょっと待っててね」と、奥の部屋からさまざまな資料を持ってきて、広げながら説明してくださることもよくあります。
このように、私が「まわりくどい」とも言えるようなヒアリングのプロセスを踏むのは、第一には自分自身が単純に「興味があるから」。そして、その会社の価値観、思想、哲学、カルチャーといったものを理解するためです。
「財務担当者を求めているから、事業会社の財務部門か金融機関の出身者をご紹介する」というデジタルなマッチングだけでなく、価値観や思想などの面でも相性のいい人材をご紹介できるようにするわけです。
また、「組織図や組織概要」をお聞きすることで、その会社に潜んでいる課題を探り、それに対して私がどのように役に立てるのかを考えるのです。
「過去」や「未来」への質問で本質が見えてくる
皆さんは、取引をしたい、信頼を獲得したいと思う相手に対して、目の前の課題だけに注目してはいませんか。けれど、もう少し視野を広げて、相手の「過去」「未来」にも向き合ってみてください。課題の本質が見えてきて、それを解決するための提案をすることにより、さらに大きな取引につながることもあります。
私の体験の一例をご紹介しましょう。
「営業職を複数名採用したい」というご依頼を受けて訪問したA社。営業職の離職率が高いのが悩みで、退職者の補充をするために求人を出そうとしていました。A社はオーナー系企業であり、面談相手は社長です。そこで、その会社のカルチャーを理解するため、創業時から現在に至るまで、どんなステップを踏んで成長を遂げてきたのかをお聞きしました。
すると、お話を伺ううちに、社長自身が気付いていない課題が見えてきたのです。それは、大まかにいうと次のようなものでした。
●急成長を遂げた時期があり、一度に多くの営業職を採用したため、「マネジメント」ができる人材が育っていない。
●社長の想いやビジョンが、第一線で働く営業スタッフにまで十分に伝わっていない。
●社長には、自分自身を基準にして、「人は意欲を持って、自発的に行動できるもの」という思い込みがあった。営業スタッフに対する指導やフォローがなされていなかったため「一方的に売上数値目標を押し付けられ、成果を求められる」という不満が募り、辞めてしまう人が多かった。
そこで私は、「複数名の営業職」よりも、「1人の営業マネージャー」を採用することを提案しました。「社長と営業現場の間に立ち、社長の想いを『翻訳』して営業スタッフに伝えられる人を迎えましょう」と。
そして、同業界で営業マネージャーの経験があり、「自分が共感できるビジョンを持った社長のもとで、経営参謀として働きたい」という希望をお持ちの求職者をご紹介し、採用に至りました。その方は、入社後、社長の考えを若いメンバーにも理解しやすいように伝え、一人ひとりの持ち味を活かすチーム作りをされました。
それを受けて、営業メンバーの意識も変わり、定着率がアップしたのです。
そして、社長は、営業部門をその方に任せたことで、新たな事業展開や戦略を考えることができるようになりました。私に対しては、今後の事業戦略や経営課題に関する人材の相談をいただくようになり、以来、長くお付き合いが続いています。
今、取引先との信頼関係をなかなか深められずにいる方は、「目先のニーズ」「表面的なニーズ」に対応するだけでなく、奥に潜んでいる本質的な課題を探り当てることに力を注いでみてください。
本質的な課題をつかむのは簡単ではありませんが、これまでお話ししたとおり、その会社の「過去」「現在」「未来」を共有することで、糸口が見えてくるものです。
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お客様や周囲の人々とよりよい関係を築き、あなたのビジネスがより大きく、喜びに満ちたものとなるよう、人生がキラキラと輝かしいものになるよう、心よりお祈りしています。
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