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追悼ジェーンバーキン。

10月の新作2個目。バスケットバッグ「J」です。

バスケットバッグ「J」(鎧編み)

かごとしてはとても一般的な形であるはずのこの形、私には難しくて時間がかかりました。
なぜなのか。
私バスケタルは、全てのかごをほぼ2.0mmの細い籐で編んでいます。それは実は、これくらいの大きさのバッグなどを編んだりするにはあまり向いてない、あまり使われない細さなのです。

でも8年前、かご編みをやると決めて間もない頃、自分のスタイルも何も決まっていない中でほぼ初めて完成したバッグはなんとこれ ↓ でした。

当然とても下手ですが下手なりに意外と形になっています。持ち手もしっかりしているし不細工だけど実用には耐えていました。3mmの籐を使っていたからです。今思えば。
確か出品もしたんですよね。当時ZOZOTOWN に ZOZOMARKET というフリマ的なものがあって。売れませんでしたけど。

この形はほんとに普通のかごの形であり、自分のデザインであるわけもなく、ジェーンバーキンさんが素敵に持っていたかごバッグへの憧れから作りました。まだブームになる前です。彼女がかごバッグを持っている写真は探せば見ることができたけれど、日本のSNSに溢れているということはまだなかったし、似たものがショップに出回っているということもなかった頃です。その頃のブログ。

ちなみにこの1年後くらいにブームが巻き起こって、街中でもネット上でもお店でもかなりバーキンさんを意識したかごバッグスタイルを見かけるようになりました。それを受けて私はネット上で見つけられる彼女の写真(with basket のもの)を探し尽くし、勝手に分類し、勝手に人生を考察するようなことをちょっと書いたりしました。

まあそれはともかく。
私はこの形のバッグを作り続けていくことはしませんでした。
自分のデザインと誇れるものでもなかったし、この形を最高にうまく作れる熟練工にすぐなれるわけでもないし、これをもとに商品を展開していくようなことが考えつかなかった。
その後、バッグでも置きかごでも2mmの籐なら自分にとって扱いやすいと気が付いてからバスケタルが徐々にスタートできた、ような感じです。当時のほんとに少ない知識と技術で、それでもこれが自分のデザインだという顔をしてお店に並べられるかごバッグを作る、その解はこれしかなかった、「四角い手提げ」です。(今もあるよ。↓ )

四角い手提げ

その後、バスケタルが作ってきた手提げ類はほぼこの四角い手提げのバリエーションというか、延長線上です。模様を変え、前から見た形を変え、底面の形を変え、・・・
今あるもの、代表的なものだけでもこんなに増えてしまいました。これらには2mmの籐とそれをいかせるように決めてきたディテールがしっくりきています。

そこから今回のバッグに向かう補助線が具体的に引かれ始めたのはこれを作った時点であったなと今振り返っています。「大きめの四角いバスケット」(w35 d28 h16.5)です。

大きめの四角いバスケット

これ以前に作っていた置きかご類 ( ↓ こんなの)も、だいたいバッグと同じようなサイズ感とディテールだったので、一気に大きくなったバスケットには新しいディテールの工夫が必要でした。

CDの入る四角いバスケット
大きめの四角いバスケット

工夫:縁編みの最初の内返しで巻き込む芯を1本から2本にしています。そのあといつもは1段入れている細かい2本縄編みを2段入れ、最後にいつものように内返しを2回しています。
この変更が前回投稿したこの円形バスケットにも繋がりました。バスケットとしての大きさはそれほど四角い手提げと変わらないのに間口が広く空いていることで生まれてしまう頼りなさを、解消です。

そしてこれができたのだからということで、遠い記憶になりかけていたけど確かに頭の片隅に消えずにあった、ジェーンバーキン風バスケットもできるんじゃないだろうか、いや作ってみたい、というふうに思考が続き、試作となりました。

バスケットバッグ「J」(鎧編み)

バスケタルのかごは全て型を使って編んでいます。下部の斜めの部分は植木鉢を入れるようなプラスチックのお皿、上部のまっすぐの部分は今まで2種類作ってきた丸かごと同じ筒の流用です。

編み方は鎧編みという、これも初めての編み方を採用しました。
2本取り×3で三つ編みをしていくという、かなり厚めに出来上がる模様です。下の素編みの部分と比べると縦芯が全く見えてないのがわかると思います。これがまた頼りなさを全く感じさせないことに寄与します。可愛くもあり。

コンテナバスケット

また、バッグなので置きかごとは違い、しっかりした持ち手を付ける必要があります。これは今年完成したコンテナバスケットの持ち手が応用できました。大きく広い間口のバッグには、これです。

以上、何度か編み直し作り直しはしましたがものすごい苦労をしたというわけでもなく仕上がりました。今までいろいろやってきたことが積み重なって形になった。機が熟したという言葉を使ってもいいんじゃないかと思います。

ずいぶん長く書いてしまいましたが最後に。
今年の夏、彼女の訃報が届いたことも製作のきっかけになりました。憧れとともに敬意を表したいと思います。

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