見出し画像

今冬の電力危機について

昨月、実は日本に電力危機が訪れていました。

「電気代が上がった?」などと感じておられた方も、一部おられたのではないでしょうか。

原因は「寒波の冷え込み&コロナによる巣籠りで電力需要が増加したこと」と「LNG(液化天然ガス:火力発電用の燃料)の不足」の2つによるものでした。

1.電力供給は需給バランスが命

2018年の9月に北海道で大停電が起きたことをご存知の方、いらっしゃいますでしょうか。この時の原因は、北海道最大の発電所である「苫東厚真火力発電所」が地震の影響で停止したためでした。

電力の供給というのは、「発電する量」と「使用する量」のバランスをとる必要があります。

電力会社は「使用する量」を常時モニターしていて、これが増えてくると「発電する量」も増やしていきます。逆に減ったら減らす。シーソーのバランスをとるようなものです。

このバランスが一定の許容量を超えて崩れたらどうなるかというと、足りなくなった分だけ使えなくなるのではなく、管内全域が一気に停電することになります。(発電しすぎても同じことが起こります。)

北海道の時は、最大の発電所が停止してしまい、その減少分を他の発電所がすぐにカバーすることができなかったため、シーソーが崩れてしまったのでした。

2.今冬の電力危機の原因

今回は「電力需要が増加」しているのに「LNG不足で発電量を増やせない」ということで、日本各地で大停電の危機が訪れていました。

しかしコロナによる緊急事態宣言が出ている中、政府としては「電力の危機です。皆さん節電してください」とはとても言えなかったようです。

LNGが不足した原因としては、「想定外の寒波」に加え、「世界各地のLNG生産施設のトラブル」や「パナマ運河の渋滞(コロナの影響)」などがありました。

節電要請を出すわけにはいかない。しかし大停電を起こすわけにもいかない。

そこで政府の号令の下、世界中から入手可能なLNGをかき集めることになりました。周辺国と取り合いになる中、通常の数十倍程度のお金を出して確保したようです。

そうして何とか電力危機は乗り切ったものの、「数十倍に膨れ上がったLNG調達費をどうするのか?」という問題が残りました。

3.電気代が上がる?

さて「電力自由化」という言葉、皆さんもお聞きになったことがあると思います。

かつては、地域ごとに決められた電気事業者(東京電力とか関西電力とか)としか契約することができませんでした。

しかし2016年4月から電力の小売が自由化され、多数の「新電力」と呼ばれる電気小売会社が参入してきました。

「Looopでんき」、「楽天でんき」、「ENEOSでんき」、「東京ガス」等々・・・。

これらの新電力会社は様々な料金プランやキャンペーンを用意したため、私たちは自分の生活スタイルに合ったプランを、幅広い選択肢の中から選ぶことができるようになりました。

問題はこの料金プランで、「市場連動」タイプの料金体系の場合は、高騰した燃料調達費の影響を受けることになります。これから高騰分が料金に組み込まれる方もおられるのではないかと思います。

今回のような緊急事態は、さすがに新電力会社も消費者も想定していなかったのではないでしょうか。

4.今回の電力危機から感じたこと

今回、LNGが周辺国で取り合いになったと聞いて、昨年のマスク不足の時のことを思い出しました。

LNGにしてもマスクにしても、普段それほど気にすることもなかった物の値段が、どんどん高騰していきました。

それは危機に面して、私たちの「助かりたい」「不便は嫌だ」「今の生活を維持したい」といった思いが集まった結果でもあります。

そこには「家族を守るため」、「国民の生活を守るため」といった思いもあったかもしれません。しかしその思いを裏返せば「他の人はどうなっても良いのか?」という問いも残ることになります。


これからの時代、また何かが足りなくなる時が必ず来ます。

当たり前の生活は、案外脆く、いつ失われてしまってもおかしくありません。水や食糧であっても、やはり今後、同じようなことが起こり得ます。

「何かが足りなくなった時、私たち地球人はどう振る舞うのか」

そのような根源的な問いが、私たちの前に横たわっているように感じます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?