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【読書感想】『中国現代アート』を読んで

牧陽一著 講談社選書メチエ 2007年出版

 TwitterでALLREVIEWの書評に取り上げられていて、中国の現代アート事情、私、知識薄いな、と思って、勉強になると思い読んでみた。

 読了後、いろいろ思うことがあったので、ここに記してみたいと思う。

 「中国の近・現代アートは「中華伝統」文化と西側の異質な文化との衝突、さらに、誕生する新たな「革命伝統」(=毛沢東様式)との拮抗という流れを経験してきた。」p. 18

 と一言で説明してたけど、中国はとても闘っている感がある作品とほんと無意味に化すというか、メッセージ性がない作品が同時に存在しているように思った。

 北京東村のアーティストたちによるパフォーマンス「無名の山を1メートル高くする。1995年5月22日」という作品が取り上げられていたんだが、 どこかで観たことあるな、と思ったら、2018年に近美でやったアジア関係の展示でこのヴィデオ作品が展示されていたのだと思う。どこかデジャヴ感があって、日本の「ゼロ次元」と似てるな、と思った。日本で1960-70年代の話だから日本の影響があったのかな、と思ったんだが、この本を読み進めていくうえで著者が同じこと書いてて、外国のアートシーンの情報は入ってきてないから、偶然の一致だろうと書いてあったけど、たぶん、その年代でゼロ次元みたいなヴィデオ作品が多く残っているのは、ヴィデオカメラの普及があったことが関係してると思うから、中国でも、90年代に、カメラが手に入った時、まず、何写そうか、といったときにこういう映像になったのかもしれん、と私は思った。

 他にも生きている動物使っている作品とかもあって、中国ではいつ頃に西欧や外国からのアートの情報が入ってきたのか気になった。情報統制されていたから、日本の現代美術のように、海外でこんなことやっている、という情報が入ってきたのはごく最近のようだが、共時性というかアートという枠内でこんなことをしてみようと思うのは、世界中で一緒なのかもしれないと思った。

 でも、死体を買い取って作品にするのは、ちょっと受け入れがたかった。筆者は「アートかモラル違反か」「アートの異化効果」といっていたが、どこまでタブーとされているものに挑戦するか、というものになっていると、なんでもあり、で、中国の現代アートは死とかセックスとかそういうものを持ってきて、アート作品とする傾向が多いのかな、と、この本読んでて思った。どこの国でもそうかもしれないけど、それがもろに「死体」を物体として使うところとかは、中国の現代アートってどこまで人々に受け入れられるんだろう、と思った。

 「描く女性、描かれる女性ーー「鉄の娘」からイノセントへ」というタイトルを設けられていて女性について述べられている章もあったが、なんだか物足りなかった。「女性の男性化」というのも分かるんだが、中国独自の女性たちの動きもあるわけであって、そこらへんがもうちょっと知りたくなった。女性に「優しくて、機転が利いてて、母性愛があって、柔らかくて、弱くて」といったフェミニンな肖像があてはめられるのはどこもかしこもそうだが、それとは別に、その国ごとに女性が歩んできた道があるわけで、私は、日本の女性とは違う中国の女性の力強さのようなものも感じていて、そういう表現している作家さんとかいないのかな、と思った。

 作品紹介は偏っているような気もしたが、著者の念入りな調査を感じる一冊であった。中国の「これから」が気になる。


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