見出し画像

勝負に必要な他愛もないことーー羽生善治著『決断力』を読んで

 羽生善治著 角川新書 2005年出版

 棋士の羽生さんが書いたこの本が話題になっていたので、だいぶ後になってから図書館で借りて読んだ。将棋のことはよくわからないが、羽生さんという人は相当すごい人だ、ということを耳に挟んだことがあったので、どうすごいんだろうとおもって読んでみた。

 勝つときは、だいたいが相手のミスによるもの、という言葉がすごく印象的だった。それは、自分が着実にプレーしてれば、負けることはない、ということなんだろうが、それは、相手のミスとかいうよりも、自分の確実な能力が問題なのだろう、と思った。奇想な発想で勝つとか、創造的な一手で勝つとか、そういうことではないんだな、と思った。

 スポーツもそうだけど、勝ち負けの話になると、結局相手になにした、ということよりも、自分が普段どおりのプレーができるか、という話になるように思った。これだけ練習を積んできたんだから本番ではうまくいく、という自信だったり、それは経験をつむということだったりする。相手がいるから、勝負ということが発生するが、結局勝負とは、いかに生き残るかという話なので、自分が平静を保って、ありのままに力をはっきできるか、ということが大事なんじゃないかな、と思った。

 欧米だと、決断力と言うといかに自己にとって有利で、自分を主張するか、自分の意見を通すか、みたいな話だったりするけど、羽生さんが言っている決断力って、いわゆる欧米的な考えではなくて、なにかをチョイスしていくということではなく、なすがままに自分があるがままに生きていけばいいんだよ、って感じがした。

 こういうことを、こんなふうに文章化できる勝負師はなかなかいないように思った。

 一読してよかったと思った本でした。


この記事が参加している募集

#読書感想文

189,937件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?