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【読書感想】老いることを考える―『いつまでも若いと思うなよ』橋本治著を読んで

橋本治著 新潮新書 2015年出版

 図書館で本棚にあったから、タイトルと橋本治に惹かれて借りてみた。でも借りてみて、もっと年寄り向けなのかも、と思ったんだけど、この本は老人が書く老人論でもなく、橋本治が徐々に年取るということについて考えて書かれた本で、若いころは老人のことをどう思っていたか、といったことや60代になった自分の体の支障について書かれていて、私が今読んでも、これからの自分の生き方の参考になった。

 頭の中ばかりが若いままで、体がついていかなくなって、年寄りになるというのはちょうど60代ごろ特に感じることだろうと思った。私は40代になって、疲れが寝ただけでは取れなくなった。そして体の支障をたまに感じ、これが元に戻らなかったらどうしよう、と感じ始めた。

 橋本治はもう完治しないという病になったらしいが、頭の中がすごく楽観的で、読んでて、ヤマイばかりを心配することで頭がいっぱいになっている老人はぜひこのオプティミストな考え方を学んでほしいと思った。この本は全体的に橋本治の年の取り方っていいな、と、とても思えた本である。

 なるようになる、と思っているのか、死が怖いわけではない。幼いころに飼っていた黒猫の死のことが思い浮かぶ、というのは誰にでもあることだ。寝るときに、起きている状態から眠りに落ちる瞬間が分からないように、死も、そうやって迎えるのだろう、と考える橋本さん。私もそれが一番腑に落ちる死に方だ。たぶんきっとそう。あ、今死んだな、と意識できないのが死なんだろう。橋本さん、お亡くなりになってしまったけど、私が死んだらあの世で出会って聞いてみたい。


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