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【読書感想】素敵な本の紹介ー都甲幸治著『「街小説」読みくらべ』を読んで

都甲幸治 立東舎 2020年出版

 都甲さんの本紹介、いつも楽しみにしててこの本もはりきって読んだ。

 書評とエッセイが混ざったような変わった形の本紹介の本だった。普通の書評と違っていて、都甲さんの顔が見える文章だった気がする。

 過去の場所にまつわる思い出と共にその土地にゆかりのある本を紹介する形式で、どこか懐かしいような、読んだことない本なのに、本の内容を読んでるだけで、読書したような気分になれる本だった。

 LAに留学していたときにベトナム出身のヴィエト先生という方に会って、「複数の国家や言語のあいだにいる人たちに興味を持つようになった。そして日本ではなく、アジアという枠組みで自分を捉えるように変わっていった。」p. 47というのを読んだとき、都甲さんの今のお仕事に繋がっているように感じて、こういう経験って大事だな、と思った。

 早稲田大学教員になってからの大学の印象の話も、早稲田出身の私としては興味深く拝読した。採用面接の他の教授の質問が興味深く、大学教授になるのにこんなこと聞かれるのか、と思った。「お酒は行ける口?」とか。学生に伝えたいことを一言で言うと?という質問には「文学は人生をかけるに足る、ですかね」と都甲さんが答えると、オーッという声が上がったらしい。ほほえましい。そのあとの「なんか早稲田っぽいね」という意見は、はてなだったが、このエッセイ読んでたら、他の大学見てると、早稲田ってこう見えるのか、と理解できた。私も、違う大学の学部から早稲田の院に来た身だが、とにかく学問好きな人が多いな、という印象をはじめは持った。都甲さんは東大からみた早稲田だったから、また違って見えているようで、その自分との違いも面白かった。都甲さん曰く、勉強に忙しかった高校生活を送っていた生徒が集まってる東大では村上春樹のような作家がでない、とのこと。

 あとがきに、この本はウェブの連載から始まったのだが、ウェブだと文章の書き方が違う、と言っていたが、それってまさに私がnoteで最近文章書くようになって、感じていたことである。でも、この本は非常に本としても読みやすかった。どういうコツがあるんだろ。

 とにかく私は都甲さんの本の紹介の仕方が好きである。


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