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挑壁者が働く時の壁と覚悟

私の就職活動での体験

2006年から2007年にかけて、私は就職活動をしていました。首から上しか動かない身体である私、苦手なことは沢山ある。困難を極めることは、覚悟していました。ただ…日本には、障がい者雇用促進法という法律があり、一定以上の規模の企業や法人は、法定雇用率(現在は2.2%、45.5人に1人という計算))以上の障がい者雇用を行わなければいけません。だから「どこかは、雇用してくれるだろう。」と軽く思っていました。
しかし、結果は…
求人誌やハローワークのページを見て、企業に電話やメールをしてみるも全滅!1社も面接すらしてもらえませんでした。電車や車で通勤する夢は止まってしまいました。働く為の準備と覚悟はできていましたが…

私には首から下に大きな身体的障害があります。しかし、働く準備の為に、どのような覚悟をしてきたのかを書きます。
(私が続きをしていたらこんな感じだったのかな…ことでんさんのポスターより↓↓)

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働く為に必要な覚悟 ~出勤準備~

通常の外出準備に時間がかかります。私の場合、2人に手伝ってもらって30分。1人はヘルパーさん、もう1人は妻。おそらく手伝ってくれる人が、ヘルパーさん1人の場合を考えると、最低1時間、緊急の出来事(寝坊、失禁、体調の急変)があると+30分必要になります。挑壁者でも、1人で外出準備をできる人はもちろんいます。
手伝って貰う必要がある人は、その介助者と時間と段取りを合わせる必要があります。働く為には、制服(ある場合は)に着替えて、整容をして、持っていくものを揃える。このルーティーンを分単位で作りこみ、これ通りに動いていかないと遅刻をしてしまいます!この流れを作る覚悟を守る覚悟を持たなければいけません。

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働く為に必要な覚悟 ~出勤・退勤~

会社までの通勤手段は、何を使うか。どのようにするか。自転車や電車、自家用車、バイク、徒歩。これぐらいがオーソドックスなものだと思います。送迎車やセグウェイ、タクシー、スケボーこんな人もいるかもしれません。さて私は、…自宅を事務所にしているので、通勤はありませんが、あったとしたが、自家用車になっていると思います。
車椅子を使用していない挑壁者は、自転車やバス、自家用車車や電車と選択肢が広がりますが、狭い場所が苦手だったり、通勤経路はが複雑で覚える事が難しい場合は、事前の練習が必要となって来ます。2020年現在、通勤ではヘルパーの付き添いをお願いできない制度なので、慎重に選択して、覚悟が必要になります。

車椅子の場合は、自家用車や電車やバスがありますが、自家用車では会社の駐車場で車椅子が乗り降りできるスペースの確保できるか、バスや電車であれば、そもそもバリアフリー対応になっているか。無人駅から電車に乗る場合は、事前に時間を鉄道会社に告げておく必要もあります。どの手段を使うか覚悟が必要です。
(私の自家用車↓)

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働く為に必要な覚悟 ~仕事開始の準備~

始業時に必要な物。例えばデスクワークの人の場合、パソコンやマウス、携帯電話、 USB 、軽い飲み物(?)等でしょうか。私も基本的にデスクワークなので、前述したような物をテーブルに揃えています。しかし私は、パソコンの電源を入れることや、マウスのセッティング、携帯電話の位置(イヤホン装着)、飲み物…全ての準備において、1人に手伝って貰う必要があります。これが仕事ではなければ、ヘルパーさんにお願いができますが、仕事中はヘルパーさんに同行して貰うことは制度上できません。上述しましたが、ヘルパーさんに通勤や仕事時間中に同行して貰うことは、現在の制度上認められていない為、自分で何とかする必要があります。在宅ワークの場合だけ、仕事中じゃない時間に準備をして貰うことができると思います。
通勤場所で仕事の準備をする場合は、覚悟を決めて、思い切って会社の人に手伝って欲しい部分だけ協力をお願いするのがよいと思います。身体の状態によって、届く範囲等が決まっているでしょう。パソコンの角度や機器を置いて貰う場所を数センチ単位で、的確に伝えるコミュニケーション能力をつける覚悟が要ります。

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働く為に必要な覚悟 ~休憩中のトイレや食事~

仕事中のトイレ。とても重要なポイントです。企業によっても多目的トイレを設備しているところがあるかもしれません。しかしかなり少ないでしょう。あったとしても、それぞれの状態に必ずお使いやすいわけではありません。雇用する側の企業も、急な設備投資は難しいと思います。
そこで、挑壁者(雇用される側)で、必ず対策をする必要があります。私が多目的トイレのない場所で長時間いる場合は、必ず留置カテーテルを挿入しておきます。尿道にカテーテルを挿入して、膀胱から管を通じて、足等に固定している尿バックへ、尿を出します。1人で外出する時の常套手段で、尿バックに大量に溜まってしまった場合は、誰か知り合いにお願いしてペットボトル等に落としてトイレに捨ててもらいます。大きな尿バックであれば、日中だけぐらいなら、出先でお願いする必要はありません。

カテーテルタイプ以外にも、コンドームタイプのものもあります。働くことを前提とし、自分の排泄方法について、有効な道具の使用を事前から練習したり、準備しておく覚悟が必要です。会社の人に全面的にお願いしようとか、無理な道具を無理やり使っていると、働き続けることに支障が出てしまいます。

食事についても、食事介助全てを、企業の仲間にお願いするのは、その人も昼休みが必要だと思うので、難しいと思います。食事に必要な道具の準備等に手伝って貰う必要がある場合は、的確にお願いできるようにコミュニケーショントレーニングがいると思います。


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働く為に必要な覚悟 ~帰宅後の身体のケア~

家に返ってから、身体のケアをする時間が必要です。食事や入浴、就寝準備等。私の場合、食事には1人に手伝ってもらって30分。入浴は2人に手伝ってもらって60分。あと、トイレ(大便)は2人に手伝ってもらって90分。就寝準備は1人に手伝ってもらって10分。それと、リハビリに60分。全部で250分(4時間10分)毎日18時以降のルーティーンです。私はあまりお手伝いが必要な身体ですが、1日働いて疲れた身体をケアしておかないと、長く働き続けることは到底無理です。褥瘡を作ってしまったり、内臓を痛めてしまったり、身体の拘縮が起こってしまったり。
挑壁者が働く日は、働く事を中心に考えなければ、身体自体が駄目になってしまいます。働く日は、プライベートな趣味等を大きく削減する覚悟が必要になって来ます。

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働く為に必要な覚悟ありますか?

挑壁者の皆さんには、障がいがあっても、働くことを諦めずに挑戦して欲しいと強く思っています。働くからこそ、私の身体は強く元気になりました。働く事を中心に、生活して来たからこそ、私の身体は回復してきました。働く事を中心に、生活して来たからこそ、世界が広がりました。

今は ICT の活用で、遠方の会議室に行けたり、セミナーを受けられたり、出会えたり…働けないと思い込んでいませんか。働くことを考えた14年前に、私も覚悟をしました。まず、働いてみようと覚悟して見ましょう。そうすると思考や目線が変わり、行動するべきことが見えてくると思います。

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挑壁者と雇用しようと考えている企業様へ

最後に、障がい者雇用(私としては挑壁者雇用と呼びたい)を考えている方々へメッセージがあります。企業のハードが完全にバリアフリーになっていなくても方法はあると思います。障がい者就職面接会や障がい者雇用求人から挑戦してくる人達は、今回私が書いた覚悟はできていると思います。トイレの方法や、働く為の解決策や提案があると思います。自分からわざわざ言い出しにくいという人もいます。どんどん遠慮なく、コミュニケーションして下さい!

そして、質問には、「何ができないのですか?」から入るのではなく、「何ができるのですか、あなたの得意なことは?」を聞いて下さい。そこに、企業側が雇用したいと思えるポイントがあれば、そこから何かできないかを聞いて下さい。そしてどのようにしたら、そのできない事を一緒に乗り越えられるかコミュニケーションして下さい。

素晴らしい能力がある挑壁者は沢山いるでしょう!

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