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ラーメン屋に潜り込んでレシピを盗む。②

バイト初日

晴れてラフォーレ原宿内のヴィーガンラーメン屋さんでアルバイトできることになった。
ここまでの流れはこちらを→ラーメン屋に潜り込んでレシピを盗む。①

ちょっぴり緊張しながらラフォーレの関係者入口から出勤。
大きな商業施設に勤めたのは、大学卒業後にデパートで働いていたあの日以来か。
守衛さんのところで、名前や所属店舗などを書き込んで店へと向かった。
(後にIDカードを借りてからはこの作業はナシになる。)

ラフォーレについて

店に着くと、店長さんがお出迎えしてくださり、まずはラフォーレの一通りのことを教えてくれた。
休憩室、ロッカー、地下の倉庫など。
従業員用エレベーターが2箇所あったり、そもそもラフォーレのフロアは0.5階きざみでややこしい。
一体何階で降りたら自分の店舗のフロアにつながるのか、方向音痴で空間把握能力の低い私は、いちいち考えながら移動していた。

店内の業務

その次は店の仕事をイチから教えてもらった。
全てのタブレット端末機や麺を茹でるための装置、通称スチコン(スチームコンベクションオーブン)や食器洗浄機などの電源オン。
店内や店周りの掃除。
いよいよ仕込み。
ホワイトボードにアルバイトさん同士の伝達事項が書かれていた。
何を仕込まなければいけない、在庫の少ないもので店長に注文をお願いするもの、地下の倉庫から取ってこなくてはいけないもの・・など。
それを見て、まずはスープの仕込みを始める。

店舗で販売中のメニューについても教わった。
その作り方は全てレシピファイルに書いてあった。
カウンター10席ほどの小さな店だが、ラーメン7種類ほど、飲み物もかわいらしいけれど作るのがややこしいものが何種類かあった。
販売形態は、店内飲食、テイクアウト、ウーバーなどのデリバリーだった。

そんなに忙しくはない

当時はまだコロナ禍で、まだまだ外国人観光客も戻ってきておらず、テイクアウトやデリバリーの注文と店内飲食が半々だった。
街のラーメン屋のように、店内が満席になることもなければ、店外に列ができるほど並んでしまうこともなく、はっきり言って忙しくはなかった。

レジだけは、自分の店で使っているものと同じだったので、教わらなくてもわかるレベルで、初日からお客さんの精算をどんどん任されていた。

気が引き締まる

42年生きてきて図太くなっていながらも、小心者な部分もあり、野菜の切り方ひとつをアイドルのような先輩や店長に見てもらいながら、おっかなびっくり包丁とまな板に向かっていた。
そう、自分の娘たちに食べさせる料理ではないのだ。私が作ったものをお客様が写真にとってインスタに載せるかもしれない。
気が引き締まる。
都内にヴィーガンレストランはまだ少ないから、自分で食べて美味しかったものをグーグルマップやヴィーガンサイトに投稿して、コメントをするヴィーガンは多い。普通の店より選択肢が少ないので、そうやって情報共有して、オススメし合っているのだ。

店長

店長のすごかったことは、包丁技術である。彼のたまねぎのみじん切りはプロの料理人レベルであった。
きっと飲食の経験が長いんだろうなぁと思っていたら、母親がシングルマザーだったので、小学生のときから料理をしていた、と肩を並べて野菜を切りながら話してくれた。

アイドル

基本的にこの店は、アルバイトがひとりかふたりで回していた。
店長は午後から出勤することも多く、私は一緒に入ることは少なかった。
顔立ちやスタイルがアイドルのようなアルバイトさんが2人いたのだが、本当に両方ともアイドル志望だったようだ。
その可愛い外見とは裏腹に、二人共この店での職歴が長く、責任持って業務に取り組んでいた。

ラーメン作り

ラーメンはスピードが勝負である。
客の注文を受け、麺を茹で始める、スープをどんぶりに作る、麺と具を綺麗に盛り付ける。

文字に書くととても簡単そうだが、違う種類のラーメンをいっぺんに2つ3つ作ったり、
ラーメン以外にややこしいドリンクも作らなきゃだったり、
店内注文と同時にウーバーの端末からも注文が入ったり、
暇な店だったとは言え、注文が集中する時間もあった。

アイドル先輩

時に同時多発する注文を流れるようにさばいていたのが、このアイドル志望2人である。
私より20歳は年下の2人の邪魔にならないように、追いつけるように、必死に頑張った。
そんな時私の体育会系な部分が出てくる。
ここでは年齢ではなく、職務歴が長いほうが先輩だ。
先輩の一挙手一投足を見ながら、いかに早くラーメンを提供するか、無駄な動きなく仕込みを終わらせるか、真剣に、謙虚な姿勢で学び続けた。

ただひとつだけ私が先輩達より勝っていたのは、人生の経験値と愛想と英会話力だろうか。
外国人客が質問してきたらフレンドリーに返せたし、少し横暴な物言いのおばさん客には毅然と対応できた。

そんな感じで少しずつバイト業務に慣れてきた日、ついに私がワンオペをする時間が訪れた。
チャンス、である。

続く・・・





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