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風越学園“中退”の先で見つけた、自分の生き方

風越学園では、退職するスタッフに卒業証書が贈られる。
ぼくは途中から休職して、自己都合退職ということもあり、卒業証書は受け取っていない。

3月までに与えられた業務をやり遂げることができず、子どもたち、保護者、そしてスタッフのみなさんに心配と迷惑をかけてしまった。
特に、当時一緒にチームを組んでいた3・4年生のスタッフ(あっきー、たけさん、ふっしぁん、みぃ、ゆきちゃん)には、どれだけ支えてもらったか、言い尽くせないほど感謝している。


ぼくは風越学園を「中退」した。

それでも、ありがたいことに、感謝状と「いつでもスタッフ」と書かれたカードをいただいた。温かい気持ちに包まれたが、それでも学校を離れた自分の心には迷いが残っていた。

風越学園が嫌になったわけではないし、誰かと喧嘩をしたわけでもない。
ただ、「学校で働く大人」としての自分に、どうしても解決できない矛盾を感じてしまった。

1月から休職し、「少しでも心配をかける時間を短くしたい」という一心で退職届を出した。そして3月、子どもたち全員の前に別れの挨拶に行くことはできなかった。「さようなら、また会いましょう」なんて言葉を、たとえ嘘でも言うことはできなかった。

スタッフのみなさんには、せめて頭を下げることだけはしなければと、震える気持ちを抑えながら会いに行った。
気持ちの整理がつかないままの参加で、みなさんの顔もほとんど見ることができなかった。
悲しすぎて涙も出なかったが、「また来ようと思っている」という言葉だけは伝えることができた。

野外での活動がもたらした変化

そんな中、KAIさん(甲斐崎 博史さん)が4月に声をかけてくれた。
「アドベンチャーカリキュラムのブッシュクラフトコース、もしよろしければお手伝い願いたいのですがどうでしょうか?」と。

居場所を失ったように感じていたぼくにとって、
それは救いそのものだった。

ブッシュクラフトの下見 風越学園の森


ぼくは自然豊かなキャンプ場などで何泊も寝泊まりをすることになった。
それまでは、ほとんど誰にも会わずに過ごしていたた。

感情が波立つ日々が続き、人と会うことすら避けていたが、自然と過ごす中で少しずつ心が変わっていくのを感じた。

KAIさんを中心に、子どもたちと野外で生活するたびに、自分の中に力が戻ってくるのがわかった。

よく「子どもたちから元気をもらう」と言うが、ぼくの場合、何よりも自然からとてつもない力をもらっていると感じた。

野外で10泊を超えた頃、
ふと「どうして風越学園に戻る選択肢を考えなかったんだろう?」と思い始めた。

自分一人で悶々と囚われていた価値観はいつの間にか外れていて、自然の中で無邪気に、まっすぐに過ごす子どもたちとの時間を楽しんでいた。

朝、太陽光をしっかりと浴びるだけで、力が湧いてくる


子どもたちから教わる、本当の幸せと風越学園の魅力

去年の風越の卒業生が3・4年生のキャンプに遊びに来てくれたこともあった。高校1年生とは思えないくらい大人びているというか、同じ目線で話ができる感覚があった。自分の心で感じていることを、素直に、丁寧に伝えようとする姿がとても素敵だと感じた。

横にいる3・4年生も、体は小さくても言うことはまっすぐ。大人に媚びへつらうこともなく、生意気にも聞こえる物言いに、圧倒されることも多いが、ストレートに言える環境で過ごせているのは、まぎれもなく幸せなことだと思った。とくに感動するのは、そうした一見自分勝手にも思える発言を、だれも否定せずに聞くことが、3・4年生の間で自然にできていることだ。(もちろん、それ以前の幼稚園や家庭から続いてきた育ちがあるのだと思う)

中で一人悩んでいたときは、ぐるぐると考えが巡り、幸せの定義がわからなくなっていた。しかし、一度離れ、少し距離を置いて見つめ直してみると、本当に素敵な学校だと改めて感じた。

そんな率直な気持ちを、理事長のしんさん(本城 慎之介さん)や校長のごりさん(岩瀬 直樹さん)に、改めて伝えることができた。

中退した情けないぼくを、お二人をはじめ、スタッフや子どもたちは変わらず温かく迎えてくれた。しかも、以前と同じ立場ではなく、自分らしく過ごせるような入り方を考える余地まで与えてくれている。本当に、ありがたいと思っている。

外で過ごす風越の子どもたち


瞑想と自然からの気づき

自然の中での暮らしと同時に、新しい瞑想も生活に取り入れていた。Japan Bushcraft School 代表の川口拓さんが紹介していた「感覚瞑想」だ。目を閉じずに五感を豊かに広げる瞑想で、自然を思い切り感じるこの瞑想は、ぼくにとってとても楽しく、初めて瞑想が習慣として定着した。

自然の中で感じる感覚に意識を向ければ向けるほど、体も心も元気になっていくのがわかった。

新たな自分の道を始める決意

こうして自然に癒され、自分を取り戻していく過程で、
「自分も自然の力を借りて誰かを癒す活動をしたい」
という想いが生まれた。

そして「もとのき」を立ち上げる決意を固めることができた。

「自然を感じ、自然にとけこむように過ごすと、人は健康になる」。

自分にとっての、このシンプルな真実を、大切に伝えていきたいと思っている。

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