読書感想文 2冊目 恒川光太郎「夜市」
もし、どんな物や才能を買えるとしたら、僕は小説家になれる道具や薬が欲しい。あくまでも自分の所持金で買える範囲であればの話だが。
これを読んでくださっている読者様は、何でも買える市場に足を踏み入れてしまったら何を買いたいですか?
今作の「夜市」は第12回日本ホラー小説大賞受賞された、恒川光太郎さんの処女作です。
しかも、その時(2005年下半期)の直木賞候補に選ばれるという、鮮烈なデビューを飾っています。
しかし、このときの直木賞は東野圭吾さんの「容疑者Xの献身」が受賞して
候補には伊坂幸太郎さんの「死神の精度」と恩田陸さんの「蒲公英草紙」などが上がってました。
そんな有名な作家がたくさんいる中で、候補に挙がるのは本当に凄いと思います。
ホラー大賞を受賞しましたが、怖さはそれほどなく妖怪などが出る幻想的な物語で、もしその手のものが苦手な人にもお勧めできる小説だと思います。
「夜市」と「風の古道」の2編収録された短編小説なのと、文章も難しい言葉を使わずに読みやすくまとまっているのでその点でも読書初心者に勧めたい小説だと思っています。
「夜市」は今作の主人公の友人である「裕司」から今夜開かれる夜市に誘われて行くことになったのですが、なぜそんな場所に行くのか。なぜなら、裕司が幼少の頃に夜市から逃げ出すために弟を売って、野球の才能を買ったからです。
その弟を買い戻すために裕司は友人を誘って、夜市に向かいました。
こんな感じのあらすじです。
例えば僕が夜市に行って100万円で「小説家の才能が目覚める薬」を買ったとします。
そして小説を書いて新人賞に応募すればきっと僕は新人受賞することができると思います。しかし結果はそれまでで、才能があっても努力を怠れば有名な文学賞である「芥川賞」や「直木賞」にはきっと届かないでしょう。
野球の才能を手に入れた裕司も、最初の頃はだんだんと上手くなっていくことに楽しみを覚えてましたが、だからといって何かユーモアがあるわけではなく、頭が良い訳では無い。野球以外で注目がされないことと、全国大会まで出場したが自分以上の才能ある選手を目のあたりにし、弟を売ってまで買った野球の才能に罪悪感を抱える描写があります。
これが具体的に「大谷選手のような野球の才能を開花させる薬」だとどうだろうか。
きっと二刀流としてメジャーでも活躍できる選手になれても、大谷翔平のような高い人間性になれるわけではないでしょう。
なぜなら買ったのは大谷翔平のように外国で輝ける才能だけであり、大谷翔平の人生ではないからです。
つまり元から無かった才能が開花したところで、その後も楽しむことが出来なければ続けることができないんだと思います。
その先に行き着く先は、虚無か自殺かどちらかかもしれません。
そういえば、この小説の中に「癌」と言うルビなしの漢字が出てきます。
そこで僕は自力で調べて初めてこの漢字が「ガン」ということを知りました。
最近では時代の発展に伴って、普段はカタカナで書かれていた言葉も漢字に変換されていたり、難読漢字や語彙力の本も出てきましたが、当時は僕がまだ中学生か高校の頃にであった漢字なので、この漢字に出会って分かった時はとても達成感に満たされてましたね(笑)
「風の古道」は作者がまだ子どもで東京で過ごしていたときの実体験から生まれた話らしいです。
主人公は12歳の子どもという設定だが、にしては大人っぽい文章で書かれているため、最後(というより途中から)にこれは主人公の体験記のような作品と分かります。
言い方は悪いですが、結局は限られた人物だけが歩ける道に主人公が迷いこんでしまった話。
ラストの方は登場した人物、それぞれの道に進んで終わり。みたいな感じなので何かむず痒く感じました。
以上で読書感想でした。
途中から自分の思想が出てしまいましたが、気にしないでください。空想にふけるのが好きなだけなので笑
ここまで読んでいただいた方も、途中まで読んでいただいた方もありがとうがざいました🙋
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?