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クマのふうた

 今日から二学期が始まった。聞いた話によると転校生がこのクラスに来るらしい。正直ぼくはとっても楽しみ!可愛い子が来ると良いなあ、とにやけ顔。笑

 みんな席につけ~!あ、先生がやってきた。みんなの目線はいっせいに先生の後ろに向けられた、どんな子が来るんだろう、、みんな考えることは同じみたい。

  だけど次の瞬間、僕達は度肝を抜かれるくらいびっくりすることになる、、、
「ふつつか者ですが今日からよろしくお願いしますっ!」とていねいにおじぎをしたのは、、な、なんと、、
            

          ・・・・・クマだったのだ!
   

 ぼくたちは驚きすぎて目が点になっちゃうくらいビックリした。すると先生はじゃあ自己紹介してとそのクマに話した。
 「隣山の星が丘山から来ました、くま野ふうたです。特技はお菓子作りです!よろしくお願いします!」とりゅうちょうに話した。
 いやいやいやいやいや・・・!? んっ?んんん? えーっっと、まず隣山?隣町とかじゃなくて?、、ん?なのにふうた?ひとの名前?んんんんん?というかその前になんで熊がしゃべってるんだ?
 ぼくの頭の中は、はてなでいっぱいになった。いやたぶんぼくたちみんなそうだと思う、みんな口がぽかーんとしてる。
 そんなぼくたちをよそに先生は、ふうた(なぞのクマ)に空いてる席に座るように言った。いくつか空席がある中でふうたが選んだのはぼくの隣。こっちに向かってくる姿は野生のクマそのもの。きっとクマに突進される時ってこんな感じなんだろうなんて思った。「今日から隣よろしくね!」ふうたは満点の笑顔を向けた。とりあえずぼくはおじぎをした。

 授業がつまらない時、ぼくは窓の外を眺めてた。今まで誰もいなかった窓側に誰かいるって変な感じ。茶色のふさふさした毛、鋭いツメ、大きな体・・、もしかして着ぐるみかもって一瞬思ったけど、どう見ても本物のクマなんだよなぁ。
 「なんでクマがいんだよっ!森に帰れ帰れ!」休み時間になるといじめっ子三人組がふうたに意地悪をしにきた。ふうたは何も言わない。するといじめっ子のリーダーかんたが、ふうたのことを席から突き飛ばした。ふうたは何も言わない、怒らない。ぼくは自分がいじめられるのが怖くて見てみぬフリをしてしまった。

 帰り道いつものように一人で歩いていると大きなクマの背中が・・ふうただ。でもなんだかバツが悪くて話しかけなかった。

 その後もふうたは意地悪をされつづけた。しんだハチを机の上に置かれたり、毛をむしられたり。でもやっぱりふうたは何も言わない。ぼくは知らんぷりをし続けた。
 学校から帰った後、ぼくはお母さんとひどいケンカをして、夜に泣きながら家を飛び出した。雨が降っていた。一心不乱に走っていたぼくは雨にすべってひざをすりむいた。いたいいたい、、血が止まらない。涙も止まらない。
「大丈夫?ぼくにつかまって」誰かが声をかけてくれた。聞き覚えのある声と大きな体、ふうただった。ふうたはぼくを体に背負うと自分の家まで運んでくれ、消毒とばんそうこを張ってくれた。その後温かい飲み物を入れに一階に降りていった。ふうたの部屋に一人になったぼくはあたりを見わたした。戦隊もののフィギアにポスターがたくさんあった、なんだふうたも好きなのか。ふうたと好きなものが同じってなんだかこしょばゆかった。よく見ると写真立てが置いてある。ふうたと一緒にほほえむ夫婦。ふうたのお母さんとお父さんかな?
 怪我だいじょうぶ?とふうたが戻ってきた。手には温かいお茶が。
「この写真に写ってるのふうたのお父さんとお母さん?」僕は聞いてみた。
「ううん、くま野さんご夫婦だよ。ぼくの両親はもう死んじゃってるからね。」予想外の答えに驚いた。ふうたは少し悲しそうにしながら話を続けた。
 「ぼくが小さかったころ、星が丘山で大火事が起こってお父さんとお母さんは死んじゃったんだ。ひとりぼっちで今にも死んじゃいそうなぼくをくま野さんご夫婦が引き取って育ててくれたんだ。ひとの言葉も教えてくれて、学校にも通わせてくれた。お菓子作りを教えてくれたりもね。愛情いっぱい育ててくれて僕にとっては本当の家族さ。少しでも恩返しがしたくて二人が仕事で遅いときは、買い物に行ってご飯を作ることにしてるんだ」
 その話を聞いたときぼくは自分がとってもちっぽけに思えてはずかしくなった。ごめん・・・とだけ小さく言い、自分の家に帰った。

 
 次の日からぼくはふうたによく話しかけるようになった。周りから変な目で見られたけどあまり気にしない。そのうちふうたと登下校も一緒になって、放課後も遊ぶようになった。ふうたのことを知っていくたび、どんどん好きになった。ふうたは面白くて、明るくて、何より心優しい。ぼくはクラスのみんなにもふうたの良いところを知ってもらいたくなった。
 ある日ふうたがカップケーキを作ってくれた、本当においしかった。ぼくはこれだっ!と思った。そこからぼくたちの仲良くなろう作戦が始まった。
 放課後ふうたの家でぼくたちはクラス全員分のカップケーキを作った。次の日学校で配ったら大人気!女子たちはこぞってふうたに作り方おしえて!と集まった。ぼくは心の中でガッツポーズした。
 
 でもふうたが人気者になるのが面白くないのか、かんたはふうたにさらにいじわるするようになった、止めに入ったぼくにも。なんでこんなことするんだろう。ぼくはかんたに対しやり返してたいと思うよになった。

 ぼくはかんたをびこうした。しばらく歩いた後、かんたはけいと屋さんに入っていった。あの意地悪なかんたが、、と以外に思った。そしてこれは使えるぞとしめしめした。
 次の日、昨日の出来事をふうたに話し、かんたをいじってやろうと言った。良い考えだと思ったのに、ふうたは「たっくん、やめようよ。そんなことしたらかんた君がかわいそうだよ。」と。ふうたのために考えてあげたのに、ぼくはいらいらした。そしてクラスのみんがいる前で大きな声で昨日の出来事を話した。クラスはざわざわしてみんな笑った。かんたは黙り込んで泣いてしまった。その時、、ふうたが初めて怒った。初めて見るふうたの怒った顔は本当に怖くて、みんな静かになった。
 ふうたはかんたに近づいて、ともだちがごめんね。大丈夫?と声をかけた。すると少しだけ泣き止んだかんたが
「おれのお母さん病気なんだ。だからおれが手芸でなんか作って朝一で売って少しでもお金にしようと思ったんだ、でもうまくいかなくていらいらしてふうたに意地悪しちゃったんだ。ごめんなさい・・」と言った。
 ふうたは優しい顔で「それなら家においでよ。ぼくの家族、手芸上手なんだよ。一緒におしえてもらおう」とかんたにハンカチを渡した。
 
 ぼくはまた自分がはずかしくなった。かんたのしてたことは悪いことだけど、かんたにはかんたのじじょうがあったんだなと思った。

 ぼくはかんたとふうたにあやまった。どうやらかんたにも、ふうたの良さが分かったみたいだ。さいきんはふたりで手芸の話をたくさんしてる。

 ふうたはぼくにいろんなことをおしえてくれる。その中で特に感じたのは、ひとは見かけによらないってこと。確かに見た目で判断しなくちゃいけない時もあるけれど、それだけで決めつけちゃったらいけないよね。まずは相手の中身をちゃんと知らなくちゃ。そうしてたら出会えるかもしれないね、本当の友達に。そうそう、ぼくとふうたみたいなねっ!
 

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