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コラム(17日)、マクロンの野望、ルペンの打算、プーチンの不安、そしてウクライナはどうなる?

フランスの極右政党・国民連合(R N)を率いるマリーヌ・ルペン氏の勢いが止まらない。欧州議会選挙で与党のR E(再生)に圧勝、マクロン大統領は国民議会を解散するという「無謀な賭け」(G7関係者)に打って出た。その後の世論調査によるとR Nは、7月7日の決選投票を経て第1党の地位を確保すると予想されている。ドイツ、英国を差し置いて欧州の盟主たらんと企てるマクロン氏の「野望」は、どう取り繕っても風前の灯だ。そんな中でルペン氏は仏フィガロの紙とのインタビューで、「マクロン大統領を追い出すつもりはない」と断言した。もう一つの焦点は左翼連合の動向。緑の党、社会党、共産党、不屈のフランスの4党は577選挙区で候補者を一本化する方針で合意した。これでR Eは左右両勢力の後陣を排する第3党への転落が確実。そんな中でのルペン氏のマクロン氏に対する協力宣言。背後に何が・・・。
 
個人的にマクロン氏は口先だけの人だと思っていた。ルペン氏は「マクロン氏こそカオスだ」(16日付、ロイター)という。「社会的な混乱、安全保障問題での混乱、移民問題での混乱、そして今は制度的な混乱だ」(同)と混沌とした現状に対する批判を展開する。その舌の根も乾かぬうちに今度はマクロン氏への「協力意向の表明」だ。個人的にはその理由は、同氏が抱く「野望」ではないかと勝手に推測している。今年に入ってウクライナの戦況がロシアに傾くにつれてマクロン氏は、プーチンへの対抗意識をむきだしにしてきた。2月に「軍隊をウクライナに派遣することを排除すべきでない」と発言。その後も「西側提供武器のロシア領内での使用は軍事施設に限る」、「フランスの核をE Uの核として機能させる」など、これまでタブーだった禁句を次々と繰り出してきた。これも単なる口先介入かと思いきや、軍人の訓練教官派遣が決まり、核戦略にドイツのシュルツ首相が賛意を表明。ミラージュ戦闘機の譲渡まで表明した。プーチンは恐怖を感じたのだろう、ここにきて停戦発言が目立っている。
 
一方のルペン氏。第1党への大勝利が現実味をおびるに従って、保守穏健層中心に経済の先行き不安、マーケットの暴落懸念などマイナスのイメージが膨らんできた。これに対して「私は制度を尊重している」と懸念払拭に努める。左翼連合中心の政権ができればE U離脱を打ち出しかねない。極左よりも極右の方がマクロン氏も組みやすいと読んでいるのだろう。ある種の“打算”だが、推測するにマクロン氏の本音はそこではない。「恐怖の均衡論」とみる。核抑止力の本質は「恐怖」だ。プーチンが頻繁に使う核の脅しは、バイデン大統領はじめ西側の指導者に「恐怖」の効果をもたらしている。だからロシア領には攻め入れない。そこを逆手に取ったマクロン氏の攻勢。N A T Oのストルテンベルク事務総長はじめ西側の指導者の多くが同調し始めている。弾薬不足でウクライナが窮地に陥る一方で、プーチンに「恐怖」を植え付けようとする戦略が功を奏し始めているのだ。マクロン氏の「野望」に有権者はどのような判断を下すのだろうか。

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