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コラム(3日)、「増税メガネ」に新たに「恩着せメガネ」、岸田内閣の“悪循環”

先週の金曜日(31日)に発表された注目の米4月個人消費支出(PCE)価格指数の伸び率は前年同期比2.7%上昇、前月比横ばいだった。一方、個人消費支出の伸びが鈍化し、市場ではソフトランディング期待が再び高まった。インフレの沈静化に向けた「確信が必要」と強調するパウエルFRB議長にとっては「複雑なシグナル」となったようだ。とはいえ、市場関係者の間では再び利下げ期待が盛り上がり始めている。諸々の経済統計は行ったり来たりの展開だが、時期的な目処や「確信」に至る時期はともかくとして、大きな流れとしてはインフレが沈静化し政策金利の引き下げに向かっているように見える。これを受けて気になるのは日本経済の先行きだ。第一生命経済研究所の永濱利廣主席エコノミストは、「第1四半期のG D Pを見ると好調なのはインバウンドぐらい。物価上昇に消費が追いついていない」と指摘する。

第1四半期のG D Pは前年同期比2.0%減、前期比0.5%減で2四半期ぶりのマイナス成長になった。一部自動車メーカーの認証違反などから輸出の中心である自動車の生産が停滞したことなどが原因だが、それ以上大きいのは需給ギャップの拡大だ。今春闘では5%以上というベアが実現しており、賃金は上がっているように見える。だがそれは名目ベース。実質ベースだと依然としてマイナスだ。長濱氏によると「仮に実質ベースで賃金がプラスになったとしても、可処分所得は引き続き伸び悩む」と推測する。原因は賃上げの原資として大企業は「時間外労働の削減や一部ボーナスの削減を当てている」と見ており、「名目の賃上げ率が伸びても家計の可処分所得は伸びない」と強調する。家計所得が伸びないために、結果的に消費を抑えざるを得なくなる。これが日本経済に取り憑いている「需給ギャップ」だ。

加えて円安が続いている。円安で政府の税収は急増し大企業の利益も増えるが、家計は輸入インフレに直撃されて赤字が続く。評判の悪い定額減税が実施されるが需給ギャップ解消には力不足。税収は増えるが政策運営の基本は「増税メガネ」だ。それを意識してか総理はここにきて減税キャンペーンを始めた。この人、経済の実態がまったくわかっていない。世間は鋭い。「増税メガネ」に加えて、新たに「恩着せメガネ」というニックネームが加わった。米国経済がソフトランディングに向かうに連れて、円安は一転して円高に振れるだろう。円高の規模にもよるが、円安で好転しなかった家計の可処分所得が伸びる見通しは残念ながらほとんどない。「恩着せメガネ」で減税をP Rしても、医療保険料をはじめとした社会保障の負担は増える一方。国民負担率を軽減する強力な政策が発動されない限り、「デフレ脱却宣言」など夢のまた夢。政府がデフレ政策を推進していることにまず、気づくべきだ。

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