コラム(11日)、「何なんこれ」、ビースト車内で“怪心”の笑みを見せる岸田総理
日米首脳会談がはじまった。さまざまな話題がテレビ、新聞、ネットで報じられている。そんな中で個人的には上の写真に注目した。岸田総理が自分のX(旧ツイッター)に投稿したものだ。バイデン大統領も同じ写真を投稿している。大統領の専用車ビーストに同乗して晩餐会に向かう一場面である。大統領が自撮りしたようだ。満面に笑みを浮かべる両首脳。とりわけ岸田総理のこんな笑顔は国内ではほとんど見たことがない。「会心の笑み」だろう。裏金疑惑、党員処分、能登半島地震、支持率低下などなど。批判の嵐に覆われた国内を離れ、親分と慕う大統領と2人だけの密室である。心に宿る疑心暗鬼や警戒感を忘れ、思わずほとばしりでた笑顔。本当に嬉しいのだろう。これがこの人の本質かもしれない。ふっと、そんな気がした。人は「会心の笑み」というかもしれない。だが、個人的にはこの写真を見て総理の「怪心」、怪しい心に想いが飛んだ。
写真を見た瞬間に思い出したのは、火曜日(9日)に放送されたNHKの「クローズアップ現代」だ。「被災して家も仕事も失った時、どんな現実が待ち受けているのか」、被災者の悲惨な現実を追った内容である。輪島塗の箸職人である酢井(すい)辰也さんと妻・喜代美さん。自宅は一部損壊だが傾いて使えない。工場も被災して使用不能。家も仕事も失った。家の修繕には最低でも1000万円かかる。罹災証明を取ったが「一部損壊」認定、全壊だと最大で300万円の支援金が出るが一部損壊だとゼロ。工場の修復には4000万円かかる。「なりわい再建支援補助金」という制度がある。3000万円まで支援金が出る。だが、この制度を利用するためにはまず4000万円を自分で用意する必要がある。被災者である。そんな大金、どうやって調達するのだ。この瞬間、奥さんの喜代美さんが小さな声でつぶやく、「何なんこれ」。この一言で総理の笑みも「会心」から「怪心」に変わった。総理の常套句は「被災者に寄り添う」、「何なんそれ」。心にもないことを平気で言うひとだ。
韓国の総選挙で与党「国民の力」が惨敗した。尹錫悦大統領の無神経なひと言が敗北を招く。遊説中に同大統領はスーパーを訪問、長ネギの価格が日本円にして100円で売られているのを見て、「妥当な価格だ」とひと言。これに国民が反発した。「大統領は実態を知らない」。韓国の有権者は物価高で苦しんでいる。長ネギの相場は日常的にはこの2.5倍から3倍はしている。実態を無視した演出。有権者が反発するのは当然だろう。岸田総理も言葉と心が乖離している。総理は3つのことにしか関心がないと指摘した記事をどこかで見た。自分と地元と次期総理の座、この3つだ。この3つを心の奥底に秘めながら、「火の玉となって」「矢面に立って」「国民の信頼回復に向けて」と浮ついたことを平気で言う。だが心は地盤である広島1区の情勢、長男・翔太郎氏への世襲、次期総理への意欲、そこにしかない。「会心の笑み」は心根の怪しい人の笑顔だ。