見出し画像

小鬼のはなし

小鬼は おふろ が だいすき で

こごえる さむい日 

たらいに はった お湯のなかに 

おこった かおで つかって かえった

画像1

小鬼は ちいさい祠(ほこら) に すんでいる

林の 道 に たっていて

夏は すずしい

冬は たくさん 雪が ふっても

祠の まわり は つもらない

ふしぎな ところ

画像2

画像3


キレのある 冷気のなかに おどる 小鬼を みかけた

くらい空に むかって うでを つきあげ 

足を おおきく ふみならし 

いつもの怒った顔を いっそう厳しく こわばらせて 体をゆらす

すると こんどは じめん に かお を よせ 

ちいさく かがんで

足は とめない 

まるで じめん が つぶやく 声を 

ききとろうとする 医者かのようすで 耳をよせ

しずかに おどる

画像4


冷えきった空から あられが おちてきた

 パラ パラ 

   パラ パラ パラ

じめん に あたる あられの 音が

いちめんに なり ひろがっていく

               ひろがっていく 

        

画像5

小鬼は ふれよ ふれよ と

いっそう はげしく 踊っていたのに

いつのまにか あられは 雪に 

きづけば 小鬼 も もう いない

さっきまで 足をふみ うでを まわしていた ばしょに

音もなく 雪は おち 

みるみる つもってゆく

         つもってゆく


小鬼は きょうも

お湯 を はった たらい の なかで 

からだを あたためている

まっかな色の おこった かおで  

画像6


サポート嬉しいです。ほんとうにありがとう!