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2月8日 〒マークの日

 〒があった。
 友人の住む部屋の壁に、〒マークが書いてあった。
 赤いペンキで、でっかく。
「なあ、なにこれ」
「郵便のマーク」
「じゃなくて、なんでこんなもの書いちゃったんだよ。賃貸だろ、大丈夫なのか?」
「僕がやったんじゃないよ。知らない内に書いてあったの」
 ある朝目が覚めると壁に〒があったのだ、と友人は主張する。そんな事あるか? 寝ぼけたとか酔ってたとかで自分で書いたんじゃないだろうか。全く心当たりはないと友人は言い張るけれど。
「消そうとしても消えないし、郵便屋も来るようになって、面倒なんだけどさ」
「郵便屋?」
 聞き返す俺の耳に届いたのは、ノックの音。だがそれは、ドアの方からではない。窓か? 見れば、仮面をつけた謎の男が窓の外にいる。でも、ここ、三階だけど。
 あれが郵便屋だよ、毎日手紙を要求するんだ、と、心底疲れた声で友人は言った。

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