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2月2日 交番設置記念日

 道の向こうから、お巡りさんが自転車に乗って走ってきた。
 私達が端の方に寄って道を譲る仕草をすると、彼はぺこりと笑顔で頭を下げてからそのまま走り去っていく。
「パトロールしてるんだよ」
「誰もいないのに?」
「アタシ達がいるじゃないか」
「それはそうだけど」
 ここの廃村には幽霊が出る、と聞いて、オカルトサークルに所属する私と友人は、旅行がてら幽霊見物にやってきたのだ。果たして幽霊はすぐに見つかった。
 今、私達の目の前を走り去っていった、半透明のお巡りさん。
 もう誰も住んでいない廃村を、毎日パトロールしているのだと聞く。
「亡くなったのも、パトロールの時だったらしいよ。いつも顔を見せてくれる時間に来ないからって村人が心配して探したら、交番の前で倒れてたって」
 心臓の病だったらしい。死んでも仕事をし続けるなんて随分と真面目な……いや、真面目というか、多分、彼は好きで働き続けているのだろう。だって、あの笑顔。

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