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お風呂場に髪の毛

「ねぇ、あなた、ちょっといい?」
「どうした?」
「お風呂場にね、髪の毛が落ちてたんだけど」
「髪の毛?」
「長ぁい黒髪。誰の?」
「…………」
「誰の?」
「……知らないな。お前の方の髪じゃないのか」
「とぼけないでよ! あの子でしょ、見たわよ私、若くて可愛い女の子」
「……いや、でも、お前かも」
「私はね、短髪の男しか狙ってないのよ、ここ数ヶ月くらいは。長い髪ならあなたの方のターゲットでしょ。認めなさい」
「…………ごめん」
「解体した後は完璧に掃除する、髪の毛一本残さない、って決めたでしょ」
「掃除したんだけど」
「残ってたじゃない髪の毛! 掃除が雑なのよ、あなた」
「ごめん」
「しっかりしてよね。細かいところまで気を配らないと、ちょっとした事で犯罪ってバレるんだから。捕まったらもう終わりなのよ。私達これまで何人手にかけたと」
「わかってるわかってる反省した、これから気をつけるよ」
「もう。次は髪も血も絶対残さないでよね」
「残さないよ。……さぁて、俺はそろそろ寝るかな。明日も早いから。おやすみ」
「はいはいおやすみ。まったく、すぐ逃げるんだから」

「おいお前も残してるじゃないか! 寝室! ベッドの下にピアス落ちてたぞ!」
「えっ!? ……あ、やだ、それ違うわよ。ただの浮気相手の落とし物よ」
「なーんだ。良かった」

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