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【痛み止めの効果】 新発売の痛み止めを飲んだら、昔からの慢性的な頭痛がすっかり消えた。その後、事故に遭い大怪我するも、おやっ、全く痛みを感じない。病院の看護婦と浮気しても心が痛む事もない。激怒した妻に包丁で刺されても。 #百字小説
【一時間後の死】 死に近い奴の寿命がわかる能力を得た俺。洗面所の鏡に映る俺の顔と「一時間」の文字。えっこれ俺の寿命!? 短くない!? 泣きながら家族や友人に電話していると何か大きな物音。見れば鏡が落ちて割れていた。 #百字小説
【いたいのいたいのとんでっちゃった】 近所のお姉さんは魔法が使えるの。いたいのいたいのとんでけって呪文を唱えるとね、本当に痛いのが飛んでくんだから。ほら見て私の右足、膝小僧が無いでしょ。前に転んで怪我した時にね、お姉さんが飛ばしたのよ。 #百字小説
【時の流れが早すぎる】 最近、時の流れがやたらと早くなった。ついさっき年が明けたと思ったら、もう一月下旬。これはもしや、と考えて装置の蓋を開けると、ほらやっぱり設定が狂ってる。 「おい誰だ、世界時間制御装置の設定弄った奴」 #百字小説
【苦いコーヒー】 お客様にコーヒーを淹れる。 「佐藤やミルクは入れますか?」 「では両方」 僕は頷き、巨大なコーヒーカップに隣家の佐藤さんと猫のミルクちゃんを落とし、混ぜる。お客様は触腕でカップを抱え、一息に飲む。 #百字小説
【吊り橋効果】 吊り橋効果って言葉がある。どうやら吊り橋を渡るとドキドキするらしい。 だから僕は彼女を引き摺って、吊り橋を渡った。でも駄目だった。滑落した彼女の心臓は止まったまま、ドキドキと動き出す事はなかった。 #百字小説
【母からの置き手紙】 タカシへ 冷蔵庫におやつがあります 帰宅すると、そんな手紙が食卓に置かれていた。母だ。母はいつまでも俺を子供扱いしている。俺が成人して何年経っても、孫ができても、母本人が墓に入ってからも、ずっと。 #百字小説
【はっこう】 パンの作り方が載ったレシピ本を買ったが、よく見ると発酵の文字が発行になっている。 誤字だなぁと思いつつレシピのとおりにパンを作っていると、発酵させていたパン種がいつの間にか一冊の本に変わっていた。 #百字小説
【歯磨神話】 「俺さぁ、最近歯磨きすると血が出るんだよね」 「わかる、儂は地が出る」 そのようにして神の口から大地が生まれた。これが、歯磨神話のはじまりである。 「歯医者行くか」 そのようにして神話は終わった。 #百字小説
【飛行機の座席はひとりぶん】 ええ、そうなんです。彼とふたりで今から旅行なんです。海外旅行。彼、青い顔してるでしょう。私を殺して埋めた事がバレないか心配なんですよ。繊細なの。でも鈍感なの。私が憑いてきている事にも気付いてないの。 #百字小説
【卵の飼育】 友人から、鶏か何かの卵を貰った。 大きく育てろよ、と友人。これ有精卵なのかよと、俺は孵化のさせ方を慌てて調べた。 結果そいつは、見事に大きく育った。俺の背丈も超えるほど。 ただし、卵のままで。 #百字小説