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渋谷▶︎お神輿▶︎東京ローカル

通勤通学で渋谷によく行く人やローカルな人以外には馴染みがないと思うが、渋谷にも五穀豊穣や無病息災を祈願して行われる「金王八幡宮例大祭」という祭りがある。

本祭の日はスクランブル交差点から道玄坂のマークシティ入口辺りまでが歩行者天国になり、渋谷109の前には十数基ものお神輿が勢揃いするので、いつもとは一風変わった渋谷が垣間見える。

渋谷どころか東京にさえ住んでいないが、2017年に友人Tくんのご好意でTくんの地元の「神泉円山親栄会」のお神輿を担がせてもらった。

お神輿の巡行ルートは神泉町にある小屋を出発して「Spotify O-EAST」や「club aisa」の前を抜けて「渋谷109」の前に向かい、円山町辺りもグルグルと移動した気がする。

「通行止めのお知らせからお弁当の手配」まで、祭りは何かと準備が多い。本祭の3日前にお手伝いに行くと、その日の作業は提灯の取り付けだった。

夏の宵がおりる頃、淡い提灯の明かりに日本人なら誰しも気分が高揚したことはあると思う。そんな祭りに欠かせない提灯だが、いかんせん取り付ける場所が実に高い。誇張し過ぎたザコシのジャンプでも絶対に届かないぐらい実に高い。

▲ハリウッドザコシショウ

しかも、交差点をまたぐ提灯は「佐川のトラックや立ち漕ぎするアンドレ・ザ・ジャイアント」等にぶつかるとマズイので、さらに高い場所に設置する。そして、名前の通り渋谷は「谷」だから坂が多く、提灯を繋げるケーブルも想像以上に上下する。

「安全帯どころかフルハーネスがいるんちゃうか?」と設置場所を見上げていると、上に昇って作業をするのはこの道40年の鳶職の親方だった。作業が始まるや否や親方はすごい速さで提灯をつけていく。仕事も早いが気も短い。生粋の江戸っ子だ。

親方の脚立を支えながら、私は柳田國男が提唱した「ハレとケ」や、暴力シーンが多かった映画「凶気の桜」に祭りのシーンがあってもよかったなと考えていた。

作業がひと段落し、みんなで入ったのは裏渋谷通りにあるお蕎麦屋さん。蕎麦を食べながら年配の方に祭りのことや、この辺りのことを色々聞いてみる。90年代の「ギャルブーム」も最近よく耳にする「100年に一度の再開発」も関係のない、地に足のついた生活がそこにはある。

浅草や神田にはあっても渋谷にはなさそうな、「こち亀」的な東京ローカルが目の前にあった。渋谷の歴史を作ってきたのは東急でも西武でもなく、この人たちなんだろう。

人も坂も多くて歩きにくいイメージが強い渋谷ですが、道玄坂も松屋を越えた辺りからはそれほど人がいません。一息つきたくなったら上がりきった角にあるFabCafeで休憩して下さい(でっかいKくんがいるかも)。

歩きやすい気候になってきたので、近々、渋谷に行かれる方はぜひ足を伸ばしてみて下さい。

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