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マッチングアプリで出会った海外在住の人と知り合って8ヶ月で結婚して移住した話

28歳で結婚したい。


漠然とそう思っていた。実家が複雑で苗字が何度か変わったり実父は亡くなっていたりして、家族を持つことに強い憧れがあった。ほっとできる自分のホーム、いなくならない(少なくとも当分のうちは)自分の家族がほしかった。

早くに家を出て自立していたし、複雑な家庭ではあったが何となく憎みきれない明るいキャラクターの家族たちだったので、実母や兄弟とは今も交流はある。

ただどちらかというと家族=「すぐにふらっとどこかに行ってしまうけど気づいたらいつの間にか戻ってきていて一緒にご飯を食べることもある友達」みたいな距離感なので、もっとこう日々の生活を共にすることができるパートナーや帰るべき居場所を欲していた。

なぜ28歳かというと、子どもの頃に好きだったドラマの主人公がその歳で結婚したからという大して意味のない理由だったのだが、一旦思い込んだら頑固な質なので、最初は「私も28歳くらいで結婚できたらな〜」くらいだったのが、いつのまにか「絶対に28歳で結婚する」に変わっていた。

あと1年しかないのに彼氏はいない。世間はコロナ初期


どこもかしこも緊急事態宣言で飲食店ばかりか百貨店も休業していた。そして私は転勤で新天地に一人きり。彼氏もいない。知り合いもゼロ。会社への出社もなくなり休日は本当にやることがない。

オンライン飲み会で愚痴った友達何人かに「マッチングアプリ」を勧められた。実際に出会って結婚した友達も何人かいた。出社延期で時間はいつもよりあったし、何せ自分の勝手に設けたリミットまであと1年なかったので、件の友達に写真や自己紹介文へのアドバイスをもらいつつおそらく最大手の婚活アプリを程なく始めた。多分こうした状況下でなかったらアプリをやること自体もう少し渋ったかもしれない。どうせ(コロナ禍で)すぐに会うことはできないからゆっくり人となりを知れるだろう、という気持ちが大きく後押ししてくれた。

マッチングアプリか、結婚相談所か


みんな同じようなことを考えていたのだろう。始めてすぐに様々な人から「いいね」が来た。この「いいね」を返すと「マッチング」といってDMがやりとりできるようになるのだか、(自分を棚に上げて言うが)なんというかアクの強い人が多かった。

マッチング後2〜3通目で「結婚するなら子どもは何人?」「いくらぐらい貯金してるの?」「自分のお母さんは○○なんだけど、君はどう?」など、かなり立ち入った質問をされて面食らった。そんなに条件がはっきりしていてそれに合致した人を探したいなら周りの人に探してもらうか、結婚相談所の方が向いてるのでは?と思ったりした。(口には出さなかったが)

ちなみに私自身同じタイミングで結婚相談所へも話を聞いたが、身長、職業、年齢、兄弟の有無などもっと具体的な好みがないとマッチングしないのでと言われ、「喧嘩したときに話し合いができてふらっといなくならない安心感のある人」、というなんとも数値化しがたい条件しかない私のままでは難しいと思われたため、入会は保留にしていた。例えば身長が自分(150cm台)以下でも職業がどうでも、人柄や雰囲気が好みの人がいるならそれを逃したくないと思っていて、条件を絞れなかった。

アプリならそういう「合う合わない」みたいなことを会話しながらお互いに判断できるのかな〜と想像していたのだが、なかなか難しい。「結婚したい」と思ってるにチェックを入れている人などは、上述のように割と細かく条件を聞いてきて、「この条件に当てはまる人かどうかこちらがジャッジする」という品定めされているような雰囲気が苦手だった。そして何も聞いていないのに「僕はまだ結婚相談所に行く程ではないかなと思ってアプリをやっています」と言ってくる人も多く、何度かもやもやした。いや、そんだけ条件定まってるならその条件に当てはまる人だけ最初に抽出してくれる相談所もいいと思いますけど、と言いたかった(言えなかったけど)

まあ実際にそうした条件が合わないと結婚は難しいのだろうけど、何だか違和感が拭えず。後は明らかにマルチ商法的な勧誘(飛行機でファーストクラスに乗って旅ができる人生歩みたくない?僕の知ってるすごい人を紹介するよ!みたいなやつ。君はすごい人ではないんかい、とツッコミたかった。)や、緊急事態宣言まっさかりなのにとりあえず会いましょう、公園でお酒飲みましょうみたいな私的にはフランク過ぎる人も多かった。

そうした返し方が分からないDMの返事に悩んでいるうちに、数時間が経っている。私は何をしているんだろう?これっぽっちも恋愛っぽさも安心感もない婚活状況にメンタルが削られていく。3日目にしてやっぱり私にはレベルが高かったんだ、やめようと思った。そんなとき、「僕は今○○という国に住んでいます」というメッセージ付いいね(いいねを送るときにメッセージを添えられる機能があった)が目に入った。え、海外?どういうこと?日本人?と興味本位でいいねを返したことで、1年後別の国に住み始めることになるとは思ってもみなかった。

オンライン婚活のメリット


彼は日本人だったが、海外から日本に来るには当時諸々リスクがあった。例えば飛行機が発着しなくなるリスク、日本出国後に機内でコロナになり入国もできず日本にも帰れなくなるリスクなど。そのため、やりとりを始めた私たちがいつ会えるのかはしばらく不透明だった。

元来私はせっかちでまず会ってみないと人となりは分からないという考えだったので、普段なら海外との遠距離かつ日本への帰国予定不明な人の恋人候補には立候補しなかっただろうと思う。しかし当時は同じ都市に住んでいても会うのは憚られる状況だったので、まぁどこに住んでる人でも変わらないと気にならなかった。

時差があるためある程度の長文を1日数通、各々空いたタイミングで送り合うというのも、毎日何十通も「休日は何をしているんですか?」「好きな食べ物は?」という当たり障りのないやりとりをしていた私には返って心地よく感じた。

特に好印象だったのが、仕事を楽しんでがんばっている様子や、私の仕事への思いについて聞いた上で、共感できる部分を彼なりの言葉に言い換えて伝えてくれたこと。

プライベートでまで仕事の話をすることを好きではない人もいると思うが、知らない土地に一人きりで何とか頑張っていた私にとって、大きな関心事は仕事についてで、それを嫌がらずにリスペクトしてくれることがありがたかった。

数回メッセージでやり取りした後、オンラインで顔を合わせて話すことになった。実際に声を聞いてみても彼への好印象は変わらず、自然で楽しく、長いときは4時間以上話すこともままあった。

実際に会う場合は、食事をしたり映画を見たりしているときにずっと話し続けることはないし、周りの景色や料理など共通の話題も見つかりやすいので、とりあえず目に入ったものについて話しておけばいい部分があるだろう。

しかし、夫々別の場所にいて話をするオンラインデートでは、共通の体験なしにひたすら1対1で向き合って話をすることになる。これはオンラインで婚活する場合のよさでも難しさでもあると思うのだが、双方のコミュニケーション能力が桁違いに高い場合を除いて、人としての相性がよくないと難しい。だからこそ、私は会ったことのない彼に「将来パートナーになることを見据えて、付き合ってほしい」と画面越しに言われたとき、迷わず「はい」とこたえられたのだと思う。

結婚か、別れるかと決めてから会った


毎日朝晩30分〜1時間程の電話、週末は3〜4時間ビデオ通話というオンラインでの付き合いを続けて半年以上経ち、彼の仕事の休暇や諸々の条件が合い日本に一時帰国が決まった。

いつコロナが終息して普通に国間を行き来できるか分からない中で、結論を出さずただこのままの付き合いを続けていてもあまり意味がないとお互い考えていたので、一時帰国で私の家でしばらく一緒に生活してみて、よければ帰国前に入籍し、だめなら別れようと会う前に二人で決めた。

そして彼の方が稼いでいただけでなく、ようやく目標だった永住権取得目前であったので、もし結婚したら私は仕事を辞めてビザが通り次第現地へ行くことになった。彼からそう提案があったとき、この辺は母の血なのかあまり悩まなかった。どうせ日本にいてもコロナで気軽に友達にも会えないし、好きな人と毎日一緒にいられたらどこでも楽しいような気がしたから。(後でとんでもなく苦労も喧嘩もしたが、この辺は勢いがないと何も進まないのでこれでよかったと思う)

オンラインでは何度も話したけど、実際に会ったらどんな感じなんだろう?とドキドキしたし、手も繋いだことのない恋人といきなり一緒に生活を始めるというのは現実感がなく、1ヶ月前からそわそわしていた。

しかし、(後から彼にも聞いたのだが)初対面の印象はお互いにあまりよくなかった。彼は人見知りでかなり心を閉ざしている風だったし、私は彼に会うために激務をこなしていたので疲れ果てて死相が出ていたらしい。

それでもオンラインで何時間も話したことが嘘だったわけではなく、1週間2週間と経つと、自然で心地よい雰囲気が戻ってきた。(すごく仲良くなったと思っていたのに、実際に会ったら半年以上のコミュニケーションがなかったみたいにお互い人見知りしていたので、会ってより仲良くなったというより、オンラインでの関係性に戻ったという風に感じた)

それで結婚しようか、となったはいいものの、破天荒ぎみのうちの親には「そうなのね、あなたの人生だから任せるけど外国は遠いからさみしいわ」と言われただけだったが、相手は普通のちゃんとした家のご子息であったので、「マッチングアプリで出会ったポッと出の女と実際に会って2ヶ月弱で結婚します」というと、当たり前だが非常に心配された。

特に結婚したら私が仕事を辞めて海外へ行くことになるので、そんな大事なことはもう少し時間をかけて決めたらどうかという真っ当なお話だった。でも、私たちはすぐに結婚したかった。

特に私としては、今までも散々会えずに我慢して今後も次いつ会えるかわからない日を過ごすのが嫌だったし、離れていても毎日話倒し、色んなリスクもありお金もかかり決して近くない場所から会いにきてくれたことで、「喧嘩したときに話し合いができてふらっといなくならない安心感のある人」だと確信があった。

どうしてもこのまま離れたくなかった私は、その気持ちを手紙にして、彼のご両親に「大切に育てた息子さんは絶対に幸せにしますので、どうか結婚を認めて下さい」と泣きながら懇願(普通逆だよねと後からつっこまれたが笑)。

そして、ついにお二人に認めていただけたときはとても嬉しかった。彼は最初からこうなると思ってたよとすかしていたので、もっと熱量はないのか?と後から喧嘩になったのもよい思い出である。

結婚=ゴールではないと言うけれど


海外在住の人とやりとりしていると話したときに、「時間の無駄」「騙されてる」と言われることもあったし、もし私が友人に同じことを言われたら大丈夫かなぁと心配したかもしれない。

でも対話を重ね、その中で感じた自分の気持ちや相手の心遣いを信じて進むことができてよかったなと思う。しかし悪い人が多くいることも事実だと感じたので、どういう人と関わりたいか、どういう人が信じられるかという確固たる指針は自分の中に必要だと思う。

こうして振り返り、結婚する前も色々あったことを思い出したが、実感としては結婚してからの方が、濃い時間(よく言えば。喧嘩をしては乗り越える日々)を過ごしている。やはり育った環境も能力も考え方も違う人間と一緒に生きていく、さらにその家族や友人や仕事も自分の人生に影響するというのは初めてのことで、私にはとても難しいことだ。

結婚したら自動的に「居心地のいい場所」ができるわけではないようである。

それでも家族で試行錯誤しながら、地道に築いていくのが家庭であり居場所であり、だからこそ尊いのかもしれないなぁと、また喧嘩した際にはこの投稿を見返して思うことにしよう。


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