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マジパン思い出話第十一回 差し込んだ光と新しい道

 9月下旬の大きな転機の話の前に、10月の京都遠征の思い出を語っておきましょう。京都タワーのあるビルの屋上で行われたアイドルイベントで、関西のアイドルを中心に多くのグループが出演しました。とはいえ、知名度でいえばマジパンが頭ひとつ抜けているぐらいだったでしょうか。
 実はこの日は、今でもはっきり記憶に残っているほど充実のライブだったのです。前物販だったのですが、まずそこから凄かった。とにかく列が長く、生写真があっという間に売れていきます。特にこの日は小山列が凄くて(小山さんの列が長くなったのは、このころからです)、いっこうに途切れる気配がありません。結局、特典会が終わったのはなんと、マジパンの出番の10分前でした(タイテが遅れていたので、実際は20分前になりましたが)
 マジパンのライブは、トリ前でした。鉄板のセトリ、圧倒的なビジュアルとメジャー感。「これがマジカル・パンチラインだ!」と言わんばかりの、圧巻のステージだったのです。

 メンバーは積極的に煽りを入れ、初見が多いはずの京都という地で、オタクも大いにライブを盛り上げます。ラストの「謎から謎めくMystry」では、対バンライブでこれほどまで多くの人たちがやってくれたことがあるだろうか、と思うほどの謎謎トレイン。ライブ後、オタクたちは口々に「楽しかった!」「最高!」と言いあっていました。このあと、地元のアイドルがトリを勤めたのですが、それが少し可哀想になったほどです。
 佐藤さん卒業のころ「マジパンのパフォーマンスレベルは上がった」と書きましたが、それはあくまで、CD音源に近いレベルのパフォーマンスができるようになった、という意味でした。しかしこのころから、煽りやアレンジを入れ「音源以上のライブならではのパフォーマンス」を見せるようになっていたのです。
 夏ごろのマジパンの苦境は伝え聞いており、正直、この日も少し心配していたのですが、そんな感情などどこかへ吹き飛ばしてしまうようなライブで、メンバーも実にいきいきとしていました。
 しかし、今から思えばそれもそのはず。このとき、マジカル・パンチラインの航海の暗く長い嵐に、ようやく光が差し込んだところだったのです。

 というわけで、こちらの動画を見ていただきましょう。

 突然事務所に集められたメンバー。用意されたカメラ。重苦しい口調で話し始めるKマネ。メンバー全員が、覚悟を決めた表情をします。そしてついに、Kマネが告げる運命の言葉。
「解散」そのとき四人の心に、なにが浮かんだか。「は、しません」
 Kマネの名演技に拍手を送りましょう(笑)緊張からの弛緩。メンバーそれぞれの表情が印象的です。特に、清水さんはそのワードの前からもう泣いていました。よくも悪くも「マイペース」だった彼女が、これほど思いつめていたのかと。彼女のアイドルとしての成長と変化を感じた瞬間でした。そしてもう一人、沖口さん。メンバー一の泣き虫で、これまでならこういう場面では真っ先に泣いていたはずです。しかし、涙をこらえ、清水さんの背を撫でている。ああ、彼女がリーダーになったんだな、と実感しました。
 今から思い返しても、苦しい期間でした。しかし、それは確実にメンバーの成長を促しました。あれを機によりお互いの関係が深まった、とメンバー自身も語っています。あのころの苦難があったからこそ、今の「マジカル・パンチライン」にたどり着くことができた、と言えるのではないでしょうか。

 10月21日、久々にAKIBAカルチャーズ劇場にて単独公演が行われました。このとき、来月からの同会場での定期公演と、三公演連続で新曲を披露することが発表されたのです! その前向きなお知らせに、ファンはどれほど安堵したか。11月には、清水さんの生誕イベントが、今ではお馴染みとなった南青山futureSEVENで行われました。その告知の後ろのほうに、ドリーミュージックの名前が。ひょっとして新しい所属が決まったのか?とネット界隈はざわつきます。
 ちょうどこのころ仕事の都合で東京へ行く用事があり、その週末にあった@JAMの対バンイベントに行きました。

 そのとき浅野さんに「新曲はどんな感じ?」と尋ねました。返ってきた答えは「今までのマジパンとはちがう感じ。楽しみにしてて」
 率直に言って、新レーベル、新曲という動きは、前向きでうれしい反面、不安もありました。マジカル・パンチラインというアイドルグループの楽曲はかなり個性的で、それゆえブレイクできなかったところがある反面、その個性的なところを愛している面も大きかったからです。佐藤さん卒業以降、魔法要素は明らかに減退していました。新たに発表されたグッズのロゴも、魔法感のあるものから、可愛くてポップなものに変更されました。新曲が果たして今までのマジパンを引き継いでくれるものなのか、(いいほうにせよ悪いほうにせよ)裏切るものなのか。
 そうして迎えた11月18日の定期公演、待望の新曲として披露されたのが「ONE」です。癖のあるアレンジ、魔法要素のある特徴的な歌詞、物語性のある複雑な振り付け。そういったものが「一切ない」普通の楽曲でした。
 正直に言いましょう。口に出しませんでしたが「少しがっかりした」というのがそのときの本音でした。少なくともそこにあるのは、愛着あるマジカル・パンチラインの世界ではありません。曲の良し悪しは別として、よそのグループが歌っていてもおかしくない曲です。その後発表された「Melty Kiss」「ハルイロ」ともに、いい曲ではありますが、やはり魔法要素は皆無でした。癖のある楽曲に乗り切れないものを感じていたファンにとっては、歓迎すべき変化だったでしょう。しかし、癖のある楽曲を愛していたファンにとっては、少し寂しい変化でした。マジカル・パンチラインの個性はどこへ行ってしまったのか。
 ただ、今から思えばそれも仕方がない話だったのかな、と思います。レコード会社決定が9月、新曲発表が11月です。マジパンの個性を生かし、それに合わせた楽曲を制作する余裕などあろうはずがありません。新生マジカル・パンチラインとして変化と成長(Change and Evolution=定期公演のサブタイトルでもあります)を見せるために、手っ取り早く普遍的な楽曲を用意するのは当然の選択でしょう。結果として、「ONE」は普遍的な感情を伝えるエモーショナルな曲として育ち、「Melty Kiss」はマジパン初の恋愛ソング、可愛さを前面に出した曲として、メンバーとファンに愛されることになります。この後、ちゃんとマジパンの個性を活かした楽曲が制作されていくのですが、それはまた次回以降に。
 定期公演では同時に、来年2月20日に移籍第一弾シングルがリリースされることが発表されます。

「曲をもらって、CDをリリースして、というのは当たり前ではない、とても貴重なことなんだ」というメンバーの言葉が印象に残っています。

 12月26日には、やはりfutureSEVENで浅野さんの生誕イベントが開催されました。もはや当然のように、それに合わせて上京します。

 ソロでたっぷり四曲、しかも一曲はピアノ生演奏付きという贅沢なイベントでした。メンバーがそれぞれ歴代の浅野さんの衣装を着てくれたのがエモい。ラストの「Melty Kiss」は、このとき初めて生で聴きましたが、アイドルらしい曲で、コールもメンバー自身が驚くほど盛り上がっていました。
 このとき二つプレゼントを用意したのですが、そのうちのひとつがこの少し前に365話をもって完結を迎えていた「AntS天文夜話」でした。

 正直、100話までは余裕があったのですが、150話あたりで「えっ、まだ半分も行っていない?」と愕然とします。200話を越えたあたりでは息も絶え絶え。365話はもはや意地と根性でした。もうすぐ終わるよ、という話を京都での特典会でした際、浅野さんがふとこう漏らしたのです。「あれ、まとめれば本になるかもね」と。
 本人は何気ない一言だったでしょう。しかしこちらはそれで「よぉし、やってやる!」という気持ちになりました。文章だけでしたら、コピー&ペーストで済みます。しかし、中には写真や図付きでツイートしているものも多くありました。あとから見返すときそれらがなければなんのことか分かりません。このレイアウト作業が、地獄でした。最終的に、100ページ越え。本当に本のような分量になってしまったのです……。
 それに懲りて、もうこういうことは二度とやるまいと思ったのですが、結局今こうしてそれに負けない量の文章を綴っているわけですから、オタクとは本当に懲りない生き物ですね。

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 1月には、久々にリリースイベントで関西に来てくれました。沖口さん憧れの地でもあった阿倍野キューズモール。このとき沖口さんが堂々と口にした「大阪でワンマンやりたい!」宣言に、会場からは拍手が起こります。ちなみにこの日は、スマホのみで撮影可。

 このころのリリイベはツーショットがランチェキしかなく、推しが出るまで引くつもりだったのですが、見事に一推し、二推しを自引き。さらに、四人全員からのサインもいただきました。

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 2019年2月19日、マジカル・パンチラインは結成三周年を迎えます。そしてその翌日、「Melty Kiss」がリリースされました。オリコンウィークリー16位。前作より数字は少し落としましたが、佐藤さんの卒業やレコード会社の移籍などの苦難を思えば、十分な結果でしょう。このころの状況がよく分かるインタビューがあるので、リンクを張っておきます。


 そして、その週末の2月24日、マジカル・パンチラインにとって非常に大きな転機となる、三周年ワンマンライブ「3rd Anniversary One Man Live〜新しい靴で、大好きなキミのもとへ〜」を迎えるのです。


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