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マジパン思い出話第三回 夏、開花

 5月13日の渋谷マルイを皮切りに、マジカル・パンチラインは積極的にリリースイベントをスタートさせます。しかし、実はこの時期のマジパンは「少々苦しかった」というのが実情でした。
 ポニーキャニオン本社イベントスペースを満員にするスタートでしたが、このころから集客に苦労するようになりました。ある意味当然のことで、どんなグループでも「結成ご祝儀」がありますから、それを基準にすると減った印象になります。また、当時はツーショットチェキがなく、握手会のみ。それも、ファンの足を遠ざけたのかもしれません。ただ、当時もしチェキがあれば、圧倒的なさとれな列とそれ以外、になってしまったことでしょう。新メンバーのメンタルのためにも、新メンバーにファンをつけるためにも、全員握手のみというのは仕方がないレギュレーションだったと思います。
 それともうひとつ、どこまで「魔法設定」を守るか、という点に苦しんでいた印象もあります。設定を作りこんだほうが個性として目立てる反面、元アイドリング!!!ファンやライトなドルオタは入りにくくなってしまいます。プロジェクト始動からスピード感を持って展開してきたこともあって、魔法設定もやや生煮えで、メンバー自身も戸惑っているようでした。
 6月29日には、初のMVが公開されます。ちゃんとお金がかかったしっかりしたMVで、魔法感もあり、各メンバーの可愛さもよく出ていたと思います。が、界隈の外ではそこまで話題になることもなく。
 そんなこんなでこの時期のマジパンは、熱心なさとれなオタと一部の優しいアイドリング!!!残党だけが通っているという、なかなか苦しい状況であったかと思います。

 それが転換し始めたきっかけが、7月に行われた「アイドル横丁夏まつり」であるのはまちがいありません。
 マジパンにとって初の大型フェス出演で、多くのドルオタが、今までTwitterの画像でしか見ていなかった実物を目の当たりにしたのです。懸案だったパフォーマンスも、このころにはまあ見れるかなというぐらいには改善していました。自分もネット配信でライブの様子を見ていましたが、ビジュアルのよさと初々しさと伸び代がいっぱいに詰まった、いいライブでした。
 初々しい、というだけならば、結成直後のアイドルはすべて当てはまります。しかしそこに強烈なエッセンスになっていたのが、さとれなの存在でした。十七歳にして酸いも甘いも知り尽くしたような圧倒的な華と、他の四人のまだまったくすれていないひたむきな純真さ。そのギャップが、より初々しさを際立たせる。その点が、当時のマジパンの一番の魅力だったのではないでしょうか。
 というわけで、アイドル横丁を経て、ようやく「アイドリング!!!流れではないマジカル・パンチラインのファン」を獲得したのでした。

※ネットの海を探って、なんと当時の横丁でのライブ映像、発見しました! 前記事のMARQUEEのイベントの映像がどれだけ探しても見つからないので、これがまずまちがいなく現存する最古のマジパンのライブ映像でしょう。

 このころの強烈な初々しさが伝わる映像をもう一本。まだMVすら出ず、自己紹介がようやく定まったころの、ひまわリーナの二人のみ出演のポニキャン!アイドル倶楽部の映像です。


 7月には、初の名古屋・大阪でのリリイベもありました。といっても年少組は東京居残りで、佐藤さん、沖口さんコンビによるトークのみ。
「せっかく関西に来てくれるし、行ってみるか」
 自分にとっての初のマジパン現場は、梅田のHMVグランフロント大阪でした。狭い店内に3~40人ほどのお客さんが集まりました。佐藤さんと沖口さんがこなれたトークを展開し、お客さんから代表で二名ほどタロットで占っていました。沖口さんはこのときが初対面。画像で見るよりずっと美少女で、目があったとき手を振ってもらい、恋に落ちそうになりました……。
 特典会は、2000円のミニアルバムで全員握手のみ(ポスターサインもあったかも)。メンバーが二人ということもあって、一人30秒ほどたっぷり話せました。佐藤さんには「リーダー頑張ってるね、マジパン応援してるよ」と話し、沖口さんには、当時沖口さんが披露していた「親指がよく曲がる」という特技に対して、自分のほうがもっと曲がるで、なんてトークをした思い出(後に、これをきっかけに認知を獲得していきます)。
 普通にCDを買うより、握手やイベントがついてきてお得だなあ、という典型的なドルオタ初心者の感想を心に浮かべつつ、帰途についたことを覚えています。

 その後もタイトなリリースイベントを重ね少しずつファンを増やし、いよいよリリース日を迎えます。リリース前日には、ポニーキャニオン本社イベントスペースにて、リリース記念トークイベントが開催されました。ニコ生で配信されたその映像が、こちら。

 罰ゲームでの初々しいひまわリーナの萌えセリフ、浅野さんの「働いてたでしょ」と総ツッコミを受けたメイドカフェの店員演技も素晴らしいのですが、見どころはなんといっても、最後の沖口さんの涙。ずっとアイドルになりたくて、アイドリング!!!のオーディションに落ちて、ラストチャンスのマジパンのオーディションに合格して、一人で上京して。彼女のアイドルにかける思いが伝わるシーンです。

 リリース日には、池袋サンシャインシティー噴水広場にてリリースイベントが行われました。以降もこの場所でイベントをするときは必ずいいイベントになるという、聖地のひとつです。
 そのときの、貴重な映像がこちら。

 挨拶にてメンバー全員が号泣。ですが、個人的にもっともぐっと来たのが、佐藤さんが涙をこらえながら必死にしゃべるシーンでした。
 アイドリング!!!時代、佐藤さんは泣き虫キャラで、先輩の卒業などでもすぐに泣いている子でした。しかしここでは、泣きそうになるのを必死にこらえ、きちんとコメントしようとしている。ああ、リーダーとして責任感を持って頑張っているんだな、と。彼女のことを十四歳から見ていますから、末っ子の成長を見るような心境でした。
 アイドリング!!!全員卒業から一年足らず、オーディションをし、メンバーが決まり、曲をもらってレッスンをしてライブをして握手会でファンと交流して。佐藤さんにとっても、新メンバー四人にとっても、ジェットコースターのようなめまぐるしい時間だったでしょう。
 ようやく迎えたリリース日という節目、たくさんのファンにその姿を見守ってもらえた。ある意味、彼女たちにとっては、安堵の涙だったのかもしれません。

 夏を迎えその魅力が開花し、いよいよ走り始めたマジカル・パンチライン。次はTIF、なのですが、長くなってしまったのでそれについてはまた次記事にて。


※なにはともあれマジパン初現場を踏んだので、この時点のドルオタ度10%

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